6-19
冬になって雪しか降らなくなった。当然雪は音はしない。私の雨の能力は封じられ、お膳立ては揃った⋯ハズだった。
なのに。
直陽くんとの時間が心地よくてただ身を委ねてしまった。次に雨が降るのは冬の終わり――春の始まり。それまでには、絶対に!
クリスマスと年末イベント、本当に楽しかった。仲間のみんなと過ごす時間は温かかった。直陽くんに「家族だ」って言われたのは特に嬉しかったな。
それにしても、直陽くんも地元が同じだったのには驚いた。雨の日の心の声に実家が出てきたことはなかったし、本当にこの時に知った。
年明け間近。みんなで木霊神社へ向かう途中。
「莉奈ちゃんってやっぱり、すごいな。憧れちゃう」
莉奈ちゃんの手際の良さ、気配りのできる姿にすっかり魅了されてしまい、自分の情けなさがいっそう募った。
直陽くんがそれを聞いて、
「さっきあまねさん、何か考えてたよね。とろろの時」
と訊いた。
「ああ、思い込みって怖いなって。とろろで痒くなるのは誰でも当然だと思ってた。そういう身近なところにも思い込みが潜んでるなんて、って」
と私が答える。
「さすがあまねさんだね」
「え?」私は呆気にとられる。
「普段の何気ないものに対しても考察して、何かしらの意味を見出す。そして、普遍的なテーマと繋げる。それを日常的にやっていて、あまねさんと一体化している。誰にでもできることじゃないよ。俺はいつも君に驚かされる。俺は君に憧れる」
直陽くんは強く優しいだけじゃなくて、私のことを見てくれている。そして褒めてくれる。
「直陽くん」
「なに?」
「どうして⋯どうして直陽くんは、いつも私を安心させるような言葉を掛けてくれるの?」
直陽くんは優しく微笑む。
「君のおかげで、人の目を見られるようになった。人の写真も撮れるようになった。人の目を見ると、写真で切り取るように、その人の気持ちが分かるような気がするんだ。だから――」
二人は立ち止まる。
「俺はあまねさんに大切なものをもらった。だから、俺もあまねさんが不安なとき、その不安を取り除きたい」
プラネタリウムの時の気持ちが蘇る。まただ。また⋯。
私は直陽くんの手を摑んで、強引に前に歩き始めた。
「今年が終わっちゃうよ。行こう」
でもその時気付いた。直陽くん、震えてる。
そうか、直陽くんも勇気を振り絞ってるんだ。
私は直陽くんの方へと振り返る。もう逃げない。直陽くんをまっすぐに見つめた。涙は相変わらず止まろうとはしてくれなかったけど、ちゃんと気持ちを伝えないときっと後悔する。
「直陽くん、ありがとう」手で軽く涙を拭って「直陽くん、私決めた。私も前に進む。いつまでも直陽くんに頼ってばかりじゃ、ダメだから」
と言った。神社でお願いすることは決まった。
私は直陽くんの手を強く握ったまま、神社の方へと歩いていった。




