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晴れた日には、恋をする  作者: 月舟 蒼
第六章 朝霧あまね
89/104

6-11

 翌日は「恋愛の近代文学と心理学」のテストの日。

 朝六時三十分のバスを待つ。雲一つない快晴で、たぶん今日は暑くなるだろう。

 昨日のこともあり、私は気持ちが後ろ向きになり、ダラダラと家にいた。家を出るには、何とか気持ちを振り絞らなければならなかった。バス停にはギリギリに着いた。

 直陽くんが軽く手を挙げる。どうな顔をしたらいいか分からなかった。直陽くんのことをしっかり見ることができず、軽く会釈しただけになった。

 私は直陽くんの隣に立ったが、何も言えなくなってしまう。

「あまねさん?」直陽くんが心配した様子で声を掛ける。

「⋯はい」

「今日のバス、あまねさんの隣に座ってもいいかな?」

「⋯うん、いいけど⋯」

 どうしていいか分からず、目をそらしてしまった。

 私は何をやってるんだ。言うべきことはたくさんあるはずなのに。動け!私!

 でもだめ。心が動かない。こんなことは、高校入ってから、つまり雨の日の力を手に入れてから一度もなかった。

 バスに乗って、隣同士に座る。

 何度か直陽くんが話そうとして私の方を向くが、私は動けない。見ることもできず、ずっと俯いていた。

 直陽くんは何かを考えている。この前私が言った偉そうな言葉を思い返しているのだろうか?あんなことを言っておきながら、不安にさせるなんて?!と。

 私は何を言ってるの?!

 直陽くんがそんな人じゃないことは分かってる。こんな邪推をしてしまう自分が心底嫌だった。そんなことを思うはずがないと分かっていながら疑う自分も、分かっているからこそ、それに甘えている自分も。

 ちゃんと向き合わないとダメだ。

 バスは信号で停まり、エンジン音が消える。車内に静寂が訪れる。

 私を見ていた直陽くんは、いたたまれない様子で目線を前にそらした。

「あのね⋯⋯私」

 私は消え入るような声で言葉を絞り出す。直陽くんはチラッと私を見たが、その視線に、また勇気が引っ込む。本当に私はどうしようもない。

「⋯ううん。何でもない」

 そう言うのがやっとだった。

 駅に着くと、私は「先行くね」とだけ告げて、席を立ってしまった。もう口と体が勝手に動いていた。

 苦しい。私は何をやっているの?

 今まで何ともなくうまくやってきたのに。雨の日の力と、それが使えない時の落差に慣れていたはずなのに。

 しかも一番大切にしたい人の前でこんな姿をさらすなんて。

 ()()()()()()()()()

 あれ?直陽くんは一番大切な人、なのかな。そう、なのかな?

 自分の気持ちにはっきりと気付いたのはこの時かもしれない。

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