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晴れた日には、恋をする  作者: 月舟 蒼
第六章 朝霧あまね
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6-4

 転機が訪れたのは昨年の春、大学二年生になったばかりの頃だ。朝早いバスに乗った時だけいつもいる同年代の男の子がいた。彼の心の声が雨の日に聞こえてきた。孤独と自信と謙虚と割り切り、いろんな声が入り混じっていた。人と関わりたくないわけではなく、近付いていく勇気がないだけ。でも一方で一人で生きていく覚悟もにじむ。私は彼に興味を持った。それが直陽くんだった。

 学部のボランティアでスーツで出かけた時のこと。その日も雨が降っていた。バスには直陽くんも乗っていた。地下鉄への階段を下りる時、私は定期券を落としてしまった。私は気付かずにそのまま歩き続けた。その時、直陽くんの心の声が聞こえた。「拾ってあげないと」。さらには、定期券がなくなって慌てる私の姿を想像し心配する声も聞こえた。それらの声はほんの一瞬に流れ込んできた。直後に「落ちましたよ!」の声。ほとんど反射的に拾ったのだと思う。

 何気ない出来事だったけど、その時流れ込んできた彼の優しさが忘れられなかった。人と関わることを恐れている彼。一人で生きていくことも覚悟している彼。なのに、見ず知らずの人を心配し、何も考えずに、すぐに手を差し伸べる彼。

 ()()()()()()()()()()()⋯?

 

――「もううんざり!あなたのそういうとこ、本当に嫌い!あなたと一緒にいると、どんどん苦しくなるの」


 もう忘れていたはずなのに。心を読む力を手に入れ、人と距離を置き、うまくやっていたはずなのに。どうして今思い出しちゃうんだ。

 もう乗り越えたと思っていたのに。まだだったんだ。この時痛感した。

 それと同時に、彼の強さ、優しさがもっと知りたくなった。どうして彼はそんなに強く生きられるのだろう。

 幸い梅雨の時期だった。彼の心を読みながらその強さの秘密を探ろう。

 初めはそんな打算に満ちた考えから彼に近付いた。

 打算だった⋯はずなのに。強さの秘密を知りたかっただけなのに。

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