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晴れた日には、恋をする  作者: 月舟 蒼
第六章 朝霧あまね
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6-3

 高校は児玉台から遠いこともあり、私の中学時代を知る人はいなかった。新しい人間関係を一から作るには好都合だった。

 ひと月ほどした時、異変に気が付いた。

 友人との会話が時々噛み合っていなかった。「この前こう言ってたよね?」と言うと、「私はそんなこと言ってない」ということが増えた。その原因はすぐに分かった。相手の話していること以上に、その人の言葉が聞こえていた。口は動いていないのに、話している声が聞こえるのだ。それが「心の声」なのだと気付いたのは、さらに一ヶ月ほと経った時だった。

 そこで木霊神社を思い出した。まさか、あの願いを聞き届けてくれたのだろうか。

 私はその力を最大限に使った。正直であること、少し変わった感性を持っていること、それを出してしまった時も、相手の気持ちが聞こえた。相手が嫌がっていれば、行動を抑制したし、嫌がっていなければ行動を修正する必要はなかった。次第に友達も増えた。

 しかし、またある時気付いた。それはいつでも発現する力ではないと。法則性は何なのだろうと考えた。

 それで気付いた。人の心の声は、決まって雨が降っている時に聞こえた。雨が地面や屋根、窓を打ちつけるわずかな音に乗って、私の耳へと届くのだ。

 雨の日は人を傷付けることがない。思い通りに発言し、思い通りに動くことができた。人の気持ちは心に流れ込んでくるし、悲しんでいる人がいれば、一緒に気持ちを分かち合うことができた。

 雨の日は、目の前の人と心が一つになることができた。何も疑うことはなく、不安もなかった。その人の心は私の心なのだから、「信じる」という行為さえ不要だったのだ。

 しかしその分、雨の降らない日の落差も大きかった。突然心の窓が閉ざされ、何も聞こえなくなる。能力を手にしてから「信じる」ことが必要なくなっていたせいで、「信じる」ことができなくなっていた。

 「信じる」とは心を委ねることだ。理由はなくとも、その人に傷付けられるリスクを負ってでも心を委ねることだ。それができなくなっていた。心を守る方法は一つだけ。必要以上に心を近付けないこと。心の距離をあけて、一線を引いて、それよりは近くに入り込まない。そうやって高校時代も、大学に入ってからもやり過ごしてきた。

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