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後期の期末試験も終わり、また長期休業時期に入った。大学生ってのは本当に休みが多いなと直陽は思う。高校生までは長期というとせいぜい夏休みの一ヶ月程度だった。大学生になると夏休みは二ヶ月になるし、春休みも一ヶ月ある。あと数年で社会に出ることになるが、社会人はほとんど休めないと聞く。「長期の休み」という概念すら変わってくる。この落差が大きすぎて大丈夫だろうかと今から思う。
あまねとは頻繁に連絡を取っているし、時々一緒に出かけたりもする。世間的には「付き合っている」と思われることもあるかもしれないが、以前あまねの口からも出た通り、少なくともあまねは「付き合っている」わけではないようだ。直陽も同じ意見だった。
それは試験が終わり、春休みに入ったばかりの三月二日。あまねからのLINEで始まった。
あまね:今日、ちょっと会えないかな。
直陽:うん、いいよ。春休みに入ったし。どこか行きたいの?
あまね:そういうわけじゃないんだけど、ちょっとお話がしたい。
直陽:そっか。どこに行けばいい?
あまね:できればすぐに。バス停近くの公園でもいいよ。
直陽:ああごめん。今日は来年からのゼミの説明会があって、もう学校に来てるんだ。
あまね:分かった。じゃあ、私も学校行くね。
直陽:説明会は十時半には終わるから、その後なら。十時四十分くらいはどう?
あまね:分かった。近くなったらまた連絡するね。ありがとう。
直陽:うん。
何か、急ぎの用事だろうか。
今は八時半。もうすぐゼミの説明会が始まる。直陽は、キャンパス内で校舎に向かいながら空を見上げた。あいにくの曇り空だが、雪は降っていない。スマホを取り出し天気アプリを立ち上げる。あと数時間で雨雲がやってくる。この一帯はまた白く染まるのだろうか。それとも――。
余計なことを考えるのはよそう。何が起きても受け入れるしかない。
直陽はゼミの説明会会場のB校舎に向かった。
*
十時二十分。予定より少し早めだったが、説明会は終わった。
スマホを開いてみると、あまねからのメッセージが来ていた。B校舎裏手のベンチに来てほしいということだった。
校舎裏手の出入口を出て校舎外に張り出したスロープを降りる。空を見上げると、今にも降り出しそうな感じだ。空気も少し湿ってきている。数日前までの底冷えするような感じもいくらか和らいでいる。雪が降ってもみぞれ混じりか、冷たい雨になるだろう。
約束の十時四十分までにはまだ十分ほど時間があった。しかしスロープの上から、遠くから走ってくるあまねの姿が見えた。まだ時間はあるというのに。
直陽がベンチに到着するのと、あまねが走り込んでくるのはほぼ同時だった。
あまねは膝に手をついて下を向き、苦しそうにぜーぜーと息をしていた。
「どうしたの?まだ時間には余裕があったのに」
「ダメ⋯なの⋯今じゃないと。もうすぐ雨が降ってしまう。雪が雨に変わってしまう前に――」
そう言って息を整えると、あまねは改めて直陽を見た。直陽もあまねを見る。
「あのね、私――」
**次回予告(6-1)**
第六章 『朝霧あまね』
あまねの独白1
あまねの過去と秘密が語られる




