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晴れた日には、恋をする  作者: 月舟 蒼
第五章 冬
77/104

5-16

「靖太郎は初めて?」

「何事も最初は初心者なりよ」

 三人は大学近くの定食屋に来ていた。

「いいこと、言ってるような。小泉構文トートロジーを言ってるだけのような」

「この俺に、彼女がいたことがあると思うなりか?」

 自虐に取れなくもないが、靖太郎が言うと矜持きょうじにも聞こえるから不思議だ。

「私は、あってもおかしくないと思ってたけど」と莉奈が言う。

「ちょっと分かる。ふざけているようで、セイタって軸がある。ブレないよな」

「買いかぶりなりよ」

「ちなみにどっちから?」直陽は察しが付きつつも訊くと、

「どっちだと思う?」と莉奈が質問で返した。

 直陽は二人を見比べながら、

「コガリナ」

 答えると、

「なんで分かったの?」

と莉奈は驚く。

「何となく、な」直陽は曖昧に答える。

「いらっしゃいませー」という店員の声とともに、うちの大学の学生と思われるカップルが一組入ってくる。付き合い始めの雰囲気で、どこかぎこちない。隣のテーブル席に腰掛けるのを、直陽は視界の端で捉える。

「それでね、実は私も、誰かと付き合うのは初めてなのよ」

「え?本当に?」

「なんで驚くの?靖太郎も信じてくれなかったんだよね。こう見えて私、清純派だから」

 直陽が反応に困っていると、

「ここは笑ってもいいなりよ」

 と靖太郎が助け舟を出す。

「靖太郎は私のこと、よく分かってる」

 直陽が、ふふっと笑うと、

「それより」莉奈が攻勢に出る。「月城君はどうなの?あまねちゃんとのこと」

「それは俺も気になってたなりよ」

「どうっていうか、見ての通りだけど」

 直陽もどう答えたものか分からず、簡単に答えた。

「この前の年越しのイベントで見た限りだと、いい感じに見えたけど。本当に付き合ってないの?」

「そもそも、『付き合う』って何だろう?」

 隣のカップルが少し気になってしまう。こういう話をしてもいいものだろうか。

「あるあるテーマなりね」

「『好きです、付き合いましょう』、『はい、そうしましょう』、っていう約束があれば付き合うってことなんじゃないの?」

「そういう口約束がなくても、実態として長く一緒にいて、友達超えの実態があれば、それは付き合ってると言えるんじゃないなりかね」

「その意味では」直陽はあまねのことを思い浮かべながら、慎重に言葉を選んで答える。「俺とあまねさんが付き合うとしたら、その両方があったとしても、まだ足りない気がする」

「分かる気がする」莉奈は生姜しょうが焼きの肉をつつきながら、何かを考えている様子だった。「あの子がまだ言っていない『事情』」

 直陽は小さく頷きながら、

「でもそれも、ちょっと分かりかけてきた」

 と言った。

「そうなの?」

「また話が進んだら、二人にも話すよ」

**次回予告(5-17)**

期末試験が終わり長期休業に入ったある日、あまねからLINEが入る。「今日、ちょっと会えないかな?」


第五章 『冬』編 完結

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