5-14
神社は人でごった返していた。
賽銭箱に向かって列は二つあった。一行は適当に二手に分かれて並んだ。
少しすると、どこからともなくカウントダウンをする声が聞こえてきた。
つられてそこにいたみんなが声を合わせた。
「三・二・一⋯ゼロ―!」
知らない人たちばかりなのに、不思議な一体感があった。
みなお互いに新年の挨拶をしている。
「直陽くん、あけましておめでとう」
同じ列に並んでいたあまねが直陽に挨拶をした。
「うん、あまねさん、おめでとう。今年もよろしくね」
「うん、よろしく」
それだけ言うと、あまねは前を向いた。
どこか気恥ずかしい思いをしながらも直陽は嬉しかった。目の前のあまねを見つめながら。ずっと近くにいたいな、とそんなことを思う。
あまねは少し緊張しているように見えた。
左側の列の最前部にたどり着く。右側の列は少し進みが遅く、莉奈や靖太郎が少し後方にいるのが見えた。
直陽とあまねの二人は並んで立った。賽銭を入れて鈴を鳴らし、二礼二拍手を終えると手を合わせて目をつぶった。
二人は手短にお願い事を済ませると、一礼して列を離れた。
「何をお願いしたの?」
直陽が訊く。
「内緒⋯かな。言ったら叶わなくなるって言うし」
「もしかしたら、同じかも」
直陽のその言葉を聞き、あまねは少し寂しそうな顔をして目を伏せ、
「違う⋯かも。私は、私なりのお願いをしたから⋯」と小さく呟く。
そんなあまねを直陽は少しの間見つめていたが、ニコっと笑い、
「叶ったら教えてね」とだけ言った。「みんなのところに戻ろうか」
*
神社の入口付近には無料の甘酒をふるまっている場所があった。
「あ、涼介たちがいる」
直陽はあまねを促し、甘酒コーナーに一緒に向かった。
「これ、無料?」涼介が訊いてくる。
「そうだよ。毎年タダで飲めるんだ」
直陽はあまねに、
「あまねさんは甘酒要る?」
と訊くと、あまねは
「あ、いや、私はいいや」と言って、自販機の方に向かっていった。
みんなが集まってくる。甘酒をもらっているとあまねが戻ってきた。手にはホットミルクティーのペットボトルが握られていた。
「あれ?あまね、甘酒はもらわなかったの?」
汐里が声を掛けると、あまねは、
「ちょっと苦手で」
と答えた。
あまねはどこか気持ちが落ち着かない様子で空を見上げている。僅かに雪が降っていた。
「何か見える?」莉奈が声を掛ける。「いくら見ても雲しかないけど」
「あ、いや、何か見てたわけじゃないんだけど」
と言って、あまねはミルクティーを飲むもうとして、蓋を雪の中に落とした。莉奈が拾って渡すと、あまね少し慌てた様子で「ありがとう」と言った。
その後、おみくじを引いた。
直陽は吉。まあそんなもんだろうと思いながら、あまねを見る。ボーっとした様子で引いたおみくじを眺めている。
「あまねさん、どうだった?」
「え?あ、えーと、吉だった」
「俺もだったよ」そう言いながら、直陽はあまねのおみくじを覗いた。「俺は、そこだけじゃなくて、中身が大事だって思うんだよね」
直陽の目には「願い事:望めば叶う」という文字が飛び込んできた。「『望めば叶う』か」
「『望めば叶う』」あまねも繰り返す。少し何かを考える様子を見せた後、「そうか、じゃあ、望むことにする」と呟いた。
**次回予告(5-15)**
年明けの学校。直陽は知らない女子に話しかけられる。




