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晴れた日には、恋をする  作者: 月舟 蒼
第五章 冬
75/104

5-14

 神社は人でごった返していた。

 賽銭箱さいせんばこに向かって列は二つあった。一行は適当に二手に分かれて並んだ。

 少しすると、どこからともなくカウントダウンをする声が聞こえてきた。

 つられてそこにいたみんなが声を合わせた。

「三・二・一⋯ゼロ―!」

 知らない人たちばかりなのに、不思議な一体感があった。

 みなお互いに新年の挨拶をしている。

「直陽くん、あけましておめでとう」

 同じ列に並んでいたあまねが直陽に挨拶をした。

「うん、あまねさん、おめでとう。今年もよろしくね」

「うん、よろしく」

 それだけ言うと、あまねは前を向いた。

 どこか気恥ずかしい思いをしながらも直陽は嬉しかった。目の前のあまねを見つめながら。ずっと近くにいたいな、とそんなことを思う。

 あまねは少し緊張しているように見えた。

 左側の列の最前部にたどり着く。右側の列は少し進みが遅く、莉奈や靖太郎が少し後方にいるのが見えた。

 直陽とあまねの二人は並んで立った。賽銭を入れて鈴を鳴らし、二礼二拍手を終えると手を合わせて目をつぶった。

 二人は手短にお願い事を済ませると、一礼して列を離れた。

「何をお願いしたの?」

 直陽が訊く。

内緒ナイショ⋯かな。言ったら叶わなくなるって言うし」

「もしかしたら、同じかも」

 直陽のその言葉を聞き、あまねは少し寂しそうな顔をして目を伏せ、

「違う⋯かも。私は、私なりのお願いをしたから⋯」と小さく呟く。

 そんなあまねを直陽は少しの間見つめていたが、ニコっと笑い、

「叶ったら教えてね」とだけ言った。「みんなのところに戻ろうか」



 神社の入口付近には無料の甘酒をふるまっている場所があった。

「あ、涼介たちがいる」

 直陽はあまねを促し、甘酒コーナーに一緒に向かった。

「これ、無料?」涼介が訊いてくる。

「そうだよ。毎年タダで飲めるんだ」

 直陽はあまねに、

「あまねさんは甘酒要る?」

 と訊くと、あまねは

「あ、いや、私はいいや」と言って、自販機の方に向かっていった。

 みんなが集まってくる。甘酒をもらっているとあまねが戻ってきた。手にはホットミルクティーのペットボトルが握られていた。

「あれ?あまね、甘酒はもらわなかったの?」

 汐里が声を掛けると、あまねは、

「ちょっと苦手で」

 と答えた。

 あまねはどこか気持ちが落ち着かない様子で空を見上げている。わずかに雪が降っていた。

「何か見える?」莉奈が声を掛ける。「いくら見ても雲しかないけど」

「あ、いや、何か見てたわけじゃないんだけど」

 と言って、あまねはミルクティーを飲むもうとして、ふたを雪の中に落とした。莉奈が拾って渡すと、あまね少し慌てた様子で「ありがとう」と言った。

 その後、おみくじを引いた。

 直陽は吉。まあそんなもんだろうと思いながら、あまねを見る。ボーっとした様子で引いたおみくじを眺めている。

「あまねさん、どうだった?」

「え?あ、えーと、吉だった」

「俺もだったよ」そう言いながら、直陽はあまねのおみくじを覗いた。「俺は、そこだけじゃなくて、中身が大事だって思うんだよね」

 直陽の目には「願い事:望めば叶う」という文字が飛び込んできた。「『望めば叶う』か」

「『望めば叶う』」あまねも繰り返す。少し何かを考える様子を見せた後、「そうか、じゃあ、望むことにする」と呟いた。

**次回予告(5-15)**


年明けの学校。直陽は知らない女子に話しかけられる。


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