5-12
テレビは何を見るかで汐里と涼介が一通り揉めたが、途中から話に花が咲き、それはどうでもよくなった。気がつけば、年末恒例の国民的音楽番組がBGMとしてかかっていた。
音楽には疎い直陽だったが、いくつかは知っていた。
その番組も終わりに近付いたころ、莉奈が、
「そろそろ蕎麦作ろうか」
と言った。
「そういえば、年越しそばって、どのタイミングで食べるのが正解なりか?」
「前の年と次の年をまたぐのが普通だと思ってた」
涼介がそう言いながらスマホで調べる。
「おう、間違ってたぜ」そう言って今調べた内容を読み上げる。「『大晦日中ならどの時間でもよい。年を越さないのが望ましい』そうだったのか」
「じゃあ、夕飯でも良かったんだ」莉奈が少し残念な顔をする。
「でも、ちょうとおなか空いてきたし、夜食にいいんじゃない?」
と汐里がフォローする。
何人かがキッチンに入ろうとしたが、莉奈が、
「みんなはあっちで待ってて」と言って一人で作ろうとする。「こういうの好きなんだ」
「じゃあ、運ぶとき手伝うね」とあまねが言った。
そういえば、スーパーで食材買う時、コガリナ、張り切ってたなと直陽は思い出した。
十分ほどしてリビングに蕎麦が運び込まれた。
「おお!」皆一様に驚いた。
かき揚げ、海老天、唐揚げ、とろろ、山菜⋯まるで有名そば・うどんチェーン店のようで、みんなワクワクした。
「さすがコガリナだな」涼介が素直に感嘆する。
「で、でもこれ食べ切れるかな。夜遅いし」琴葉が軽く水を差す。
「大丈夫なりよ。残ったら男性陣で食べ尽くすから」
靖太郎がそう言うと、莉奈は嬉しそうに微笑んだ。
直陽と瞬はかき揚げ、涼介と靖太郎は海老天と唐揚げ、あまねはとろろ、琴葉は山菜、汐里は山菜ととろろを選んだ。
「直陽くんはなんでそれにしたの?」
あまねが直陽に訊いてきた。
「カップ麺のイメージが強いかな。あまねさんは?」
「私、昔からとろろが好きなの。口周りに着くと痒くなるでしょ?小学生のころ、つかないようにうまく食べてるお母さんを見て、ああなりたいなって練習してたら好きになっちゃった」
「へえ、そんなエピソードが。てかあれって痒くなるの?」
「え?ならないの?」あまねは驚きを隠せない。
「あー、それ、私も昔気付いた」莉奈が口を開く。「私は痒くなる質なんだけど、個人差があるらしいよ」
「そうだったんだ」
そう言ってあまねは何かを考え込んでいる。
「さ、あと三十分で来年になっちゃうよ。急いで食べよう」
莉奈が促すと、皆「いただきます」と言って食べ始めた。
**次回予告(5-13)**
「莉奈ちゃんってやっぱり、すごいな。憧れちゃう」あまねはそう言いながら、少し寂しそうな顔をした。




