5-11
それぞれにとりとめもない話をしたり、テレビを見たり、ゲームをしたりして、どんどん夜は更けていった。
少し締まりがなくなってきた頃、汐里が大声でみんなを呼んだ。
「ではでは、約束のメインイベント!卒業アルバム見せ合いっこ会、やっちゃいましょう!」
汐里が高らかに宣言すると、涼介がまず手を挙げた。
「こういうのは最初が名乗りを上げにくいからねー。ここは俺の出番っしょ」
彼は自分の役どころを良く理解している。
涼介が高校の卒業アルバムを開く。
「んー、変わらんな」琴葉がバスっと斬る。「チャラさはこのころから変わらんのね。ってか高校で茶髪OKだったんだ」
「そうだったんよ。じゃあ」と言って涼介はもう一冊のアルバムを取り出した。「こっちは中学の時の」
「うーん、髪は黒いけど、ほとんど変わらない感じだね」莉奈が口を開く。「良く言えば垢抜けてる。大学デビューの私とは違うんだねえ」
「まあ、そこそこモテたかな」そう言いながら涼介は莉奈をチラチラ見る。
その後もアルバムの披露は続いた。汐里の「外見メガネっ娘、実はおちゃらけ風」というのは変わってなかったし、靖太郎の「オープンオタク」ぶり、瞬の「一直線真面目」風も中学の頃から面影があった。今と大きく違ったのは、琴葉だった。今よりもだいぶ幼くて、小学生高学年で止まったような印象を受けた。
「だから、見せたくなかった」そう言って少しつらそうな顔を見せる。
「何がダメなんです?」瞬が素朴な疑問を呈した。「確かにちょっと歳にしては幼い感じはしますけど、すごく純粋な感じがしていいと思います。それに、大学入ってから急に大人っぽくなったんだなってちょっと驚きました」
琴葉は俯いたまま、小刻みに震えているのが分かった。
琴葉は「ありがと。瞬君。嬉しい」と呟いた。
しんみりとした空気が流れる。
雰囲気を変えようと、汐里がまた司会者然として話し始めた。
「さーではでは、残りは月城君とあまね嬢ですよ」
まず直陽が高校のアルバムを開いた。
「想像通り、あんまり変化はないかな?」
汐里が評価する。「中学のは?」
言われるがままに直陽は中学のアルバムを開いた。
「おお、かわいい。面影あるけど、まだ幼いね――あれ?」汐里が表紙の学校名をもう一度見直す。
「児玉台北中学校⋯あ」
「そう、あれ」と言って直陽は窓の外にちらっと見えるグラウンドを指差した。
「ここ地元だったんかーい!――これは運命だな、中川氏!」
「さっきそれを直陽と話していたなりよ」
「やめてください。気持ち悪いので」直陽が言うと一同は笑いに包まれた。
最後はあまねだった。
初めに高校のアルバムを開く。
「おー、今のあまねちゃんもかわいいけど、これもいいね!」そう叫んだのは莉奈だった。高校生らしい潑剌とした雰囲気が印象的だった。
「じゃあ、次は中学のいいかな?」汐里が促す。
その段になってあまねが少し気が進まないという雰囲気を出し始めた。
「どうかしたの?」汐里が訊く。
「いや、その、まあ、いいんだけど⋯」煮えきらない言い方をしながら、渋々アルバムを開いた。
「おお、面影ある!このちょっと幼いかわいさもいいね」莉奈が感嘆する。
そこで汐里が何かに気付く。
「児玉台南中学校⋯」
「えー!」そこにいたほぼ全員が驚きの声を上げた。
「あまね嬢も地元だったんかーい!」汐里がほとんど悲鳴のような声を挙げる。「いやいやいや、これは本当に運命でしょう」
曖昧なはにかみで返す直陽。
「これは⋯!もしかしてもともと知り合いだった?!」汐里が直陽を指差す。
「いえ、俺もさっき聞いたんですよ」
「どっかで会ってたってことはない?」莉奈が訊く。
「同じ団地だけど、北と南で学校が分かれるから。たぶん会ってないと思う」と直陽が言うと、あまねも「多分私もない」と答えた。
「じゃあ、大学で出会えたのは本当に運命かもね」と莉奈が言う。
あまねも直陽も頬を赤らめて俯く。
「気持ち悪いとか言わんのかーい!」
汐里が叫ぶと、リビングはまた笑い声に包まれた。
**次回予告(5-12)**
「そろそろ蕎麦作ろうか」
「そういえば、年越しそばって、どのタイミングで食べるのが正解なりか?」




