5-10
児玉台団地は今直陽とあまねが住む緋坂台団地と同じで、昔小高い丘だった場所を切り拓いて造成した住宅地だった。北と南の二区に分かれている。南北の中央にはちょっとした商業施設がある。スーパーとドラックストア、ファストフード店が立ち並んでいる区画だ。その近くのバス停で降りると、一行はスーパーに向かった。恒例の買い出しだった。
みんなで食べられるオードブル的なもの、お酒などの飲み物、お菓子をカゴにいれていく。共通で買うものは会費制になっている。
莉奈が「これは外せないよねえ」と言って、嬉しそうに蕎麦のコーナーを物色していた。売り場には「今年の締め年越しそばに、ちょっといい生麺なんてどう?」というポップが付けられていた。
「そば食べれない人いる?」
と莉奈は皆に声をかけた。幸い食べられない人はいなかった。やはりコガリナは気が利くなと誰もが思っただろう。
一通り買い揃えて、店を出た。
「セイタ、ちなみに、北?南?」
「北なりよ」
「おぅ、本当に実家の近くじゃないか。確かに単身用のアパートがたくさん建ってた」
「これは運命なりね」
「やめろよ、気持ち悪い」
二人は大声で笑う。
結局、靖太郎のアパートは、直陽の家からは、少し大きめの公園を挟んで向かい側だった。ぐるっと回らなければならないため、気軽に行ける距離ではなかったが、もちろん歩いていけない距離ではない。
「だいぶ近いなりね」
「今回は帰省しないって決めてるからな。あくまでもセイタの家に遊びに来たんだ。今回は寄らないよ」
「ま、入って入って」
そう言って、靖太郎は皆を促した。
単身アパートとはいえ、大都会のアパートとは違い、部屋は三つもあった。玄関を入ってすぐにキッチンがあり、そこが六畳の一つの部屋のようになっている。引き戸を開けるとさらにリビングとして使える六畳、さらに奥に寝室に使える六畳間があった。奥の二つは和室になっている。やや古めかしいアパートだったが、小綺麗にしている感じだった。
「もっとオタクっぽい家を想像していました」瞬が遠慮なくぶっ込んでくる。
「オタクを舐めてはいけないなりよ。もちろんコレクションは寝室にあるなりよ。――さあ、見るがいい!」そう言って靖太郎は寝室の引き戸を勢いよく開いた。
しかしそこにあったのはやはり小綺麗に片付いた部屋だった。ベッドと机、テーブルやテレビがある。
「あれは何ですか?」
瞬が机脇の布のかかった部分を指差す。
「よくぞ聞いてくれたなりね。あれこそが、我がコレクションなりよ」
そう言って、布を勢いよく取り去ると、そこには四段のラックが三つ置かれ、ところ狭しとフィギュアやグッズが並んでいた。
「俺はよく知らないっスけど、やっぱり好きなことを好きと言える先輩ってカッコいいっス」
「ありがとう。こっちの世界に来たければ、いつでも案内致すなりよ――さて」
そう言って靖太郎は寝室の扉を閉じ、リビングとキッチンの間の扉を開け放ち、
「ここ二つの空間を使えばかなり広く場所も取れると思うなりよ。寝るのはソファーとか雑魚寝になってしまうけど、何とかなると思うなりよ」
オードブルやお菓子、お酒などを用意し終えると、今日は家主、つまり靖太郎が乾杯の音頭を取ることになった、
「では、お手を拝借。今度こそ本当に、今年、お疲れさまなりー!かんぱーい」
**次回予告(5-11)**
汐里が大声でみんなを呼んで、「約束のメインイベント!卒業アルバム見せ合いっこ会、やっちゃいましょう!」と高らかに宣言した。




