3-14
今日もまた男子と女子に分かれて部屋飲みが始まった。ただ、同じメンバーでだんだん飽きてきたのか、それぞれ互いの部屋に遠征する者が出てきた。初めは莉奈と琴葉が男子部屋に来た。一人後輩を残すのもかわいそうだと、莉奈は青柳さんも連れてきた。
「副部長一人で残してきたの?それはそれでなんだかな」
涼介がまともなことを言う。
「それは大丈夫、一応誘ったけど、野暮用とかでどっか行っちゃった」
「⋯ああ、なるほど、分かったなりよ」
靖太郎の言葉に、琴葉と、いつの間にか隣に座っていた瞬がほぼ同時に「え?」と声を上げる。
「もしかして成瀬さん、気付いてなかった?」直陽が訊く。
瞬が、
「あ、先輩がいない」
と言った。ここにいない先輩といえば、村瀬だ。
「部長と副部長、付き合ってる、ってこと、もしかして」
琴葉がボソボソっと呟く。
「まあ、そんなとこなりね」
「誰も気にしてないけどね!」
莉奈のその言葉で一同が笑いに包まれる。
「あの二人は」莉奈が続ける。「一年の時に付き合い始めて、おしどり夫婦みたいな感じで、なんか完成されちゃってて、話題にも上らないんだよね」
「それはそれで幸せだね」
直陽が反射的に呟くと、それを聞いて莉奈が、
「どうしたどうした。しんみりしちゃって。あ!」
一気に皆の視線が莉奈に集まる。莉奈は直陽を見ている。それを見た一同が今度は直陽を見る。
「昼いたね」莉奈が言うと、
「いたね」「いたな」「いたなりね」皆が実は気付いてたけど、というように喋り出した。
「⋯ちょっとすいません!」
瞬が申し訳なさそうに、だが大きめの声で割って入る。「僕も話に入れてもらっていいですか?」
「言っていい?」莉奈が直陽に訊く。
「ここまで盛り上げちゃったんだから、もういいよ」
「すまん」と莉奈は申し訳なさそうにしながら、話し始める。「まあ、その、月城君の、想い人というか、もしかしたら想われ人というか」
「そういう人が、この合宿所に来てるんですね」
「まあ、そんなとこ」
莉奈が直陽に向き直り、
「話せたの?」
と訊いた。
「少しだけ」
直陽の消極的な答えに、一気にその場の空気は冷えていく。
「ま、直陽も言いたくなさそうだし、また今度にしよう」
と涼介が言って、その場を切り上げた。
**次回予告(3-15)**
莉奈が直陽に、前期打ち上げの飲みの後、あまねとの間に何があったのか訊いてきて⋯。
**作者より**
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