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晴れた日には、恋をする  作者: 月舟 蒼
第三章 夏合宿

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32/41

3-7

 直陽のふたターン目は青柳楓菜あおやぎふうなになった。

「青柳さん、二年の月城です。よろしく」

「はい、お願いします」

 外の天気はだいぶ荒れてきたので、当然中を歩くことになる。

「青柳さんは、研修所と旅館、どっちで撮りたい?」

「どっちとかはないんですけど」

「うーん、じゃあ旅館側でいいかな」

 楓菜は声を出さずに頷く。

 研修所の方々から講師の話し声や、楽器の音が聞こえてくる。他の団体だろう。

 旅館側に向かって歩きながら、直陽が話しかける。

「青柳さんはなんで写真部に入ったの?」

「なんとなくですね。芸術的なことがしたくて」

「絵を描いたりとか、音楽とかは?」

「それもいいなと思ったんですけど」

 どこかで三味線の音が聞こえる。

 それ以上待っても言葉の続きはなかった。瞬が言ってた口数の少なさというのはこれのことか。

 そこまで話して、直陽は気付いた。この子、人の目を見ない。

 そして華やかさのある顔立ちではないが、どこかはかなさを漂わせていて、人の目を惹きつける。

 旅館のロビーにはソファーやテーブルがいくつか置かれている。ロビーへの入口の角には自販機がある。

「何か飲む?」

「お金、部屋に置いてきてしまったので」

「ああ、いいよ。気にしなくて。ここで新入生に飲み物をおごるのが伝統なんだ」

「⋯じゃあ、これを」

 二段目右(はし)のジャスミンティーを指さした。直陽はお金を入れてボタンを押すと、ガコン、と音がして取り出し口に落ちてきた。それを取り出して、楓菜に渡す。

「ありがとう、ございます」

 直陽もお金を入れて缶コーヒーを買った。

 ロビーに入る。どちらからというわけでもなくソファーに座る。

「じゃあまず、青柳さんから撮ってみて。俺は適当にしとくから」

 楓菜が何枚か撮る。

「どう思う?」直陽が訊く。

「⋯どうでしょうか」

 まずはこちらの意見をあえて言わず、相手の感性を吐き出させる。それが大事だと思ったが、なかなか出てこない。

「じゃあ、今度は俺が撮るね」直陽が言う。「特にカメラは意識しなくていいから」

 まずは俺の写真を見てもらうことにした。飲み物を飲む楓菜を何枚か撮る。

「今一番大切なものを思い浮かべてみて」

 ほんの一瞬だったが、楓菜の表情が変わった。直陽はそれを逃さない。

 写真を見せると、楓菜が僅かに驚く。

「どう?何か分かった?」

「なんか、心の奥を見られているようで⋯」

 それ以上の言葉は出てこなかった。

 確かに写真にはそれまでの楓菜にはない小さな変化が見られた。目の奥に潜む、焦り、悲哀、憧れ。見る人が見たら分かる。これは何を示すのだろう。

「そういうのを撮ればいいんですね」

 楓菜の目に少しの「やる気」みたいなものが灯るのが分かった。

「これが正解というわけではないけど」

「まずは同じことをやってみようと思います。先輩の今一番大切なものを思い浮かべでみてください。先輩もちゃんとやってくださいね」

 今一番大切なもの。会いたい人。話したい人。

 ――()()()ちゃんとやってくださいね。

 なるほど、そういうことなのだろうか。

**次回予告(3-8)**


一日目の飲み会。直陽は瞬から、恋の相談を受けることに。

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