3-2
単線のローカル線に揺られること三時間。乗り継ぎは四回ほどあった。
大学生らしい一団を見かけた。あれもきっとうちの大学の学生だろう。
最後の乗り換えを終え、あとは一時間ほど電車に揺られれば着く。普段はそれほど乗客もいないらしく、二両編成なのにさっきの一団とうちのサークルの他には数人の旅行者程度しか乗っていない。
今写真部は2つのボックス席をそれぞれ男子と女子に別れて座っていた。特別男女で分かれていたわけではなく、話し相手を気分で変えながら移動していた。今はたまたまこうなっているに過ぎない。
「涼介とコガリナって、外見の雰囲気――主にファッション――は似てるのに、中身はまるで違うのが面白いなりね」
線路の両側に迫る木々を眺めながら、靖太郎が言う。
「そう言えば、涼介って⋯彼女、いるんだよね?」と突然直陽が直球をぶち込んだ。
涼介は「はあ」と大きな溜め息をつく。
「コガリナ、いいよなあ」
直陽と靖太郎は驚きで顔を見合わせた。
「え?まさかのまさかなりか?」
「ザ、か・た・お・も・い!」
と涼介がふざけて言う。
直陽と靖太郎はそれぞれ涼介の右肩と左肩に手を置き、
「涼介、そういうとこだと思うぞ」とほぼ同時に同じことを言った。
「コガリナって、彼氏いるのかな?」涼介が柄にもなく不安そうに呟く。
「いてもおかしくないけど、そういえば聞かないね。訊いてみたこともないけど」
直陽は視界の奥にいる莉奈をチラッと見た。莉奈は琴葉と何気ない会話をしていたが、直陽の視線に気付き、「ん?何か?」という表情をよこす。直陽は右手で手を振り、「何でもない」と示す。
それを見ていた涼介が、「おい!」と言う。
「お前、まさか」
と訝しげな目で直陽を見る。
「それはないなりよ」
靖太郎が缶コーヒーを一口飲みながら援護する。
「俺、恋する乙女やん」
涼介がボソッと呟いて、両手を胸に当てる仕草をする。それを見て直陽も靖太郎も笑った。
前や後ろのボックス席には先輩や後輩も座っている。写真部は比較的先輩・後輩の交流は少ないが、それでも二年生のやりとりは気になるようで、涼介に何やら話しかけている一年生も見える。まだ始まってもいないが、こういうやりとりがあるから、合宿は面白い。普段長い時間一緒にいる仲間たちであっても、非日常の空気感が心を深くする。
直陽は、車窓から空を見上げる。まだ青さがあったが、薄雲が幾重にも重なり、光はどこか鈍く揺れていた。
**次回予告(3-3)**
合宿所に到着し、集合写真を撮る一行。いよいよ、合宿が始まる。
**作者より**
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