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晴れた日には、恋をする  作者: 月舟 蒼
第二章 夏

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22/41

2-9

 直陽は全てのテストが終わり、部室へ向かった。

 部室の扉を開けると、写真部の二年生が勢ぞろいしていた。涼介、靖太郎、琴葉、莉奈。

「お、来たね」莉奈が最初に気付く。

「どうしたの?みんな揃って」直陽が不思議そうに訊く。

「何言ってんだよー」涼介が満面の笑みで答える。「な・つ・や・す・み!だろー!」

「ほら、コガリナがみんなに訊き回ってたじゃん。テストいつまでかって」靖太郎が続ける。

「というわけで、飲みに行きましょう!」

 こういうときも引っ張っていくのはコガリナなんだなと感心する。



 大学近くの大衆居酒屋に入った。直陽と靖太郎はほとんど飲めないので、お酒は付き合い程度。他の三人はそれなりに飲む。

「おい、ちゃんと飲んでるかー?」涼介が絡んでくる。

「今どきそんな絡み方するやついるんだな」直陽が呆れる。「というか一応俺まだ十九だからな」

「ところで⋯成瀬さんが全然発言してないなりよ」靖太郎がそう言うと皆の視線が琴葉に集まる。

「⋯みんな、知ってる、でしょ。私がそんなに、しゃべらないの」

「朝霧さんの前では饒舌だったなりよ」

「それは⋯あまねちゃんだから⋯」

「あ、そこ訊きたかったなりよ。なんでそんなに朝霧さんに入れ込むのか」

「だって!こんな私の話聞いてくれるし、月城君が小説コラボしてるって言ってたから、私もやりたいって言ったら、いいよって言ってくれたし!私の撮る写真をいつもいいね、って言ってくれるんだよ」

 そこまで言い終わって、一瞬その場に静寂が走る。

「琴葉、ちょっといいかな」

 と言って、莉奈が琴葉を連れて席を立つ。


「んー?なんでコガリナ、成瀬さん連れてったんだ?」

 完全に出来上がっている涼介が疑問を漏らす。

「何となく何を話すのか分かるなりよ」

 涼介がなおも分からないという顔をしながら直陽に顔を向ける。

「直陽は分かる?」

「⋯さあ」

「涼介⋯君は少し黙った方がいいなりよ」

 靖太郎が珍しく言葉の端にわずかな怒気をにじませる。

 カランと氷の溶ける音だけが周囲に鳴り響いた。



 少しすると莉奈と琴葉が戻ってきた。また琴葉はしゅんとしていた。


「いや、なんかごめん。気を使わせちゃったみたいで」直陽が口を開く。「今日はテストお疲れ様でした会だよね。とりあえず、飲み食いしよう!」

「そだね。琴葉、私もごめん」

 莉奈が言うと琴葉は僅かに莉奈を見る。その目は「許してくれるの?」と訴えかけているようだ。

「コガリナ氏、何頼むなりか?」

「じゃあ、カシオレ」

 直陽も琴葉に向き直り、

「成瀬さん、何か飲む?それとも食べる?」と訊く。


 その時だ。

 琴葉が何かをつぶやいた。

「え?なに?」直陽が訊き返す。

「⋯なんで⋯なの」

「え?」

 琴葉は突然テーブルを叩き、叫んだ。

「なんで月城君は!!」

 騒がしかった店内が途端に静まり返り、全ての視線が琴葉に集まった。

「なんで月城君は⋯そんな風になれたの⋯?⋯なんで、なんで私だけ⋯」

 消え入るような声が静かに響いた。


**次回予告(2-10)**


直陽は琴葉と二人だけで話すことに。そこで琴葉がずっと思ってきたことを告げる。

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