2-8
写真部の部室に戻る。
涼介と靖太郎が黙々とゲームをしている。「よし!」「あ!」「行け」といった声が聞こえるが、それ以外にほとんど会話はない。
直陽は、浪人してからほとんどゲームをしなくなってしまったので、彼らがどんなゲームをしているのかも正直興味がない。
何となくぼーっとしたくてベランダに出る。
「おす」
そこにいたのは莉奈だった。柵に両腕を乗せてこちらに振り返っている。
「ベランダによくいるね。煙たがれているスモーカーお父さんみたいだ」
「なんかここが落ち着くわけよ」
「ギャルの見かけが泣きますよ」
「あれ?月城君って私がギャルだと思ってたの?」
「あれ、違うの?」
「ギャルは自分をギャルって言わないんだよ」
「そうなの?」
「たぶん」
「なんだそれ」
軽口を叩きながら直陽は莉奈から少し離れたところで、同じく柵にもたれ掛かる。視線の向こうには大学の体育館がある。特別何かが見えるわけでもなく⋯つまり見晴らしは良くない。見ていて楽しい景色ではない。
「何か見えるの?ここ」直陽が尋ねる。
「べつに何も見えないよ。あえて言うなら、自分が見える。なんつってな」
「で、なんか見えた?」
「いーや、これっぽっちも見えない。⋯そういう月城君は?」
「うん、まあ」
「あの子、あまねさんのこと?」
「うん、そんなとこ。⋯なんか、避けられている気がして」
「根拠はないんだけど、たぶん悪い子じゃないよ。何か事情があるのかも」
「⋯俺の把握していない事情⋯推測は推測、か」
「え?何?」
「あ、いや、なんでもない。ちょっと、分かりかけた気がする。ありがとう」
「おう。無理すんなよ」
手を挙げその場を離れる。
*
昼休みになる。
文芸部の扉をノックする。
返事がない。ノブに手を掛けてみると鍵が掛かっていた。
食堂棟に行ってみる。一階、二階、三階。
キャンパス内の広場を一周した。その後は校舎裏のベンチ、図書館、A校舎、B校舎、メディア棟。「おもかげ」を探して歩き回る。
再びB校舎に入り、廊下を歩いていたとき、流れていく学生たちの中に、女子学生と笑顔で話しているあまねがいた。
一瞬、目が合う。
「あ、あまねさん」と言って軽く手を挙げる。
「⋯うん」あまねの顔から笑顔が消え、俯き加減になる。
「知り合い?」隣の女子学生があまねに問いかける。
「うん⋯サークルの関係で」
「そうなんだー」
直陽は、
「じゃ、また」
と言って、その場を離れた。
今はこんなことしかできないけど、、これでいい。
**次回予告(2-9)**
写真部の前期打ち上げの飲み会。その席上でまたあの子が⋯。
**作者より**
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