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晴れた日には、恋をする  作者: 月舟 蒼
第二章 夏

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18/38

2-5

 また昔の自分に戻ってしまった。あまねと出会い、何かが変わった気がしたのに。結局またそのあまねの気持ちが気になって仕方がない。ぐるぐると考え、出口が見えなくなる。


「悪いな、セイタ。付き合ってもらっちゃって」

「俺はいつでもオッケーなりよ」

 その日の夜、一緒に大学近くの大衆食堂にいた。本棚があって店主の趣味で集めたマンガが置いてあるような食堂だ。二人は基本的に飲めないので、話し込むとなると居酒屋よりこうした場所になることが多い。

「ところで、今さらだが、セイタってなんでコロ助なんだ?ってかコロ助って何だよ。言われて調べるまで分からなかったぞ」

「コロ助はその世界では超有名なキャラなりよ。オタクたる者、古典の名作には敬意を払うべきなりよ」

「⋯なあ、セイタ」

「ん?」

「人って何のために生きてるんだろうな」

「どうかしたの?あまねさんと何かあったなりか?」

「あったというか、ないというか⋯。それより、人って何のために生きてるんだ?いずれ死ぬのに」

 靖太郎は一瞬考え込んだが、記憶をたどるようにゆっくりと話し始めた。

「それについては俺も考えたことがあるなりよ。利己的遺伝子説ってのがあって、遺伝子自身がただ自分の遺伝子を子孫に残すためだけに、器として我々は生かされているんだっていう理論。それが関係しているのかもしれないって」

「なんか⋯嫌だなその理論」

「でもね、そんなことを何日も考えていてある時気付いたなりよ」

「うん」直陽が固唾をのんでその次の言葉を待つ。

「結局、人間の生きてる意味なんて分かるわけがない。どうしてもそういう話って宗教色が強くなっちゃうし――大事なのは、『何のために生きてるんだろう』じゃなくて、『どう生きたいか』ってことなんじゃないなりかね。『何のために生きてるんだろう』って考えてしまったときは、心が苦しんでいるサイン。そういうときは『どう生きたいか』を考えるべきときなりよ。でもそういう『気付き』と『振れ幅』があるから人生は面白いなりよ」

「⋯⋯セイタ、お前ってさ⋯」

「なんなりか?」

 直陽は目の前のハンバーグ定食の存在も忘れ、じっと靖太郎の目を見た。

「実はすごい奴なんじゃないか?ぐっと来た」

「そう?そう?もっと言って!嬉しいなり、嬉しいなり」


 ふざけ合いながら、直陽は考えていた。どう生きたいか。どうしたいのか。自分の気持ちはどうなのか。大事なのはそこだ。

**次回予告(2-6)**


「恋愛の近代文学と心理学」のテストの日、バスであまねと隣の席に座るが、あまねはよそよそしい態度を取る。

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