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晴れた日には、恋をする  作者: 月舟 蒼
第二章 夏

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17/38

2-4

 直陽は自分は傷付きやすい人間だと自覚している。ちょっとした人の言葉や仕草を見ては傷付くことがある。


 浪人していた時のことだ。予備校で、ある講座に申し込もうと思って受付に申込書を持っていった。「英語長文読解β」という講座だった。「講座コード番号」がまだ決まっていないので、講座名さえ書けば受け付けしてもらえると先生は言っていた。

 その通りに書いて受付に提出したが、事務員は

「コード番号が書かれていないですね。これでは受付できません」

と強い口調で言ってきた。

「いや、それでいいと先生は言ってたんですが⋯」

と返すと、その事務員は眉間にシワを寄せ、不機嫌そうにして、

「そんなはずないんだけどな。分かりました。一応、受け取ります」

と言った。

 どう考えても直陽は悪くない。それを直陽自身も分かっている。分かっているが、その人のイライラ感が直陽の心に突き刺さり、傷付いてしまうのだ。これは理屈ではない。感覚の問題だった。


 直陽にはこういう繊細過ぎるところがある。こんな自分が本当に嫌だった。

 今回のことだってそうだ。俺は何を期待していたんだ。あまねは明るい子だし、誰にだって優しく接することができる人だ。共感する力も強くて、芯もしっかりしている。誰だって仲良くなりたいと思うだろう。

 俺は何を期待していたんだ。


 授業のあるA校舎に入る。二限の始まるころで、校舎内は学生で溢れていた。

 直陽は時々朝食を食べ損ねることもあり、そういうときは、この校舎の二階にある談話コーナーの自販機でパンと飲み物を買って食べる。

 その日も何も食べていなくて二限の始まりにそこに立ち寄った。

「あ⋯⋯」

 遠目にもあまねだと分かった。テーブル席に座る横顔が見えた。直陽の知らない男子とパンを食べながら談笑をしていた。

 談笑。笑顔、知らない男子。

 あまねが一瞬こちらを見た。目が合い、慌てて視線をそらすと、きびすを返して歩き出した。


 本当に、俺は何を期待していたんだ。


**次回予告(2-5)**


また立ち止まりそうになる直陽。そんな直陽に靖太郎はある言葉を投げかける。


**作者より**


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また、感じたことがあれば、短くても構いません。感想をいただけると嬉しいです。

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