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晴れた日には、恋をする  作者: 月舟 蒼
第一章 梅雨

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11/41

1-10

 結局、三人でお互いを撮ろうということになった。場所は、部室内、広場、教室、食堂棟、カフェテリア、校舎の吹き抜け前などなど。

 あえて構図などは決めず、カメラマンが自由に声を掛けて、撮りたい姿を撮る。写真部に一年以上在籍しているが、なぜ今までこうしたことをしてこなかったのかと思うほど自然だったし、実際興味深かった。

 涼介はとにかく声を掛ける。こういうポーズをして、といった声がけではない。いじったり、冗談を言ったり、言わせたり、とにかく会話をする。その合間に「おお、それいいね!」と言いながら、ノリ良くどんどん撮っていく。後から見ると、直陽も含めてみんな楽しそうに撮れているから不思議だ。

 靖太郎は、ポーズを指定する。「腰に手を当てて」とか、「カメラ目線にギリギリならないように少し目線を外して」などだ。出来上がった写真を見ると、「かっこ良さ」が引き出されている。涼介はいかにも今どきのイケメンという感じなのはいいとして、やや地味な直陽さえも、ちょっとしたモデルかもしれないと思えるような写真に仕上がる、レイヤーさんたち相手に日々腕を磨いてきたというのがよく分かる。

 直陽は⋯というと、やはりこの二人とも違う。

「直陽の写真は、涼介の『楽しさ重視』とも、僕の『かっこよさ重視』とも違うなりね。ふと油断した瞬間をすっぱ抜かれるような⋯ある意味、恐ろしいというか、恥ずかしいなりね」

「分かる〜!直陽は、エロいんだよなー」

「なんでだよ!」直陽が反射的に反論する。「語弊ありまくりだろ」

 まあまあ、と言いながら靖太郎が持論を展開しながらなだめる。

「涼介の言い方がアレだけどね。つまり、俺らは三次元+時間の四次元世界に住んでて、写真ってその時間の次元をなくして、一瞬を切り取るものなりよ」

「セイタ、無理にその語尾続けなくてもいいぞ」直陽がたまらず口を挟む。

「そこは譲れないなり!――そして、涼介は楽しいって雰囲気を作り出して、その一瞬を切り取るなりよ。ある意味、僕と涼介は似てると思うなりよ。撮りたい瞬間を静的に創り出すのが僕で、動的に創り出すのが涼介なりね」

 ほう、なかなか面白い考察だと、涼介も直陽も頷きながら聞いている。

「そして、直陽は、決して創ろうとしないなりよ。確かに『ちょっと遠くを見て』とか、『今何食べたい?』とか、ちょっとした誘導はこれあるけど、その自然な流れの中から、一瞬だけ見えた『素』の部分を逃さず切り取るなりよ」

 それを聞いて涼介が感嘆の声を上げる。

「さすが、セイタだね〜。その分析すごい的を射てると思うよ。動的・静的に創り出すのが俺とセイタで、自然と引っ張り出して捕まえるのが直陽なんだね」

 考えたこともなかったが、そういことなのかもしれない。自分のスタンスが見えてきた気がする。

「そう、これは誰が正しいとかいうことではないなりね。それぞれのスタンスを伸ばしていくと面白いと思うなりよ」

「セイタ、結構すごいんだな。ちょっと見直したよ」

「えっへん、なり」靖太郎はいつになく嬉しそうだ。


 部室に戻る。

 三人が部室に入ろうとすると、中から部員の話し声が聞こえてきた。

「あ、そうだ!」涼介が扉を勢いよく開けながら、中の部員に話しかけた。

「ねえ、コガリナ、成瀬さん、一緒に写真撮らない?」

 コガリナと呼ばれたのは、古河莉奈。涼介の女子版というか、いわゆるギャルだ。一方、成瀬さんと呼ばれたのは、その真逆というか、大人しい雰囲気の成瀬琴葉なるせことは

「別にいいけどー。どうしたの?楽しい話?」

 さすがはギャルだなと直陽は思う。理由を聞く前から楽しい話だと思っている。

「ここは、直陽から言ってもらった方がいいかな」

 確かに。もとはと言えば自分の個人的事情から始まった話だ。けじめというか、そういうことはしっかりしておいた方がいいだろう。直陽はそう思った。



 一通り事情を説明する。

「つまり」莉奈が口を開く。「月城君に彼女ができたの?」

「なんでそうなる?!」慌てて直陽が抗議する。

「分かってるよ〜!ちょっとからかってみただけ〜!」莉奈はニヤニヤしている。「ま、でもそういうことなら喜んで協力するよ」

「助かる、ありがとう。写真は多い方がいいし、男ばかりの写真では物語も生まれにくいだろうし」

 ここに来るまで、直陽にとっては挑戦の連続だった。いつも一緒にいる部員とはいえ、被写体になってくれとお願いすることは、直陽にとっては大きな壁だったのだ。ここまであまりに順調だったから、油断していたのかもしれない。あるいは慢心があったのかもしれない。

「だから、その、成瀬さんにもお願いしたいんだけど」琴葉に向き直り、そう告げる。

「え⋯⋯私?」

 琴葉はうつむきながら眉間にしわを寄せた。

 重苦しい空気が流れ、次の瞬間、琴葉は直陽をにらみつけた。

「私は月城君のカメラになんて映りたくない。なんで私が月城君のためにそこまでしないといけないの?私なんか撮らない方がいいよ」

 さっき靖太郎に褒められた気がした直陽は、一気に地獄の底に突き落とされた気がした。ああ、俺は調子に乗っていたのかもしれない。

「⋯ごめん。そうだよね」

 この人物写真の挑戦は、直陽の個人的な事情に過ぎない。誰かの迷惑になるのなら、こんなことするべきじゃなかったのかもしれない。その人に合った写真の撮り方というのがある。俺には踏み込むべき場所ではなかったのかもしれない。

「まあまあ、琴葉ちゃんも落ち着いて」

 莉奈が間を取り持つ。

「そういえば、コガリナ、ゼミの選択なんだけどさ〜」

 雰囲気を察した涼介が話題を変えた。それを皮切りに、みな別の話題を話し出し、重苦しい空気は流れていった。

 しかし琴葉と直陽はうつむいたまま、動けなかった。

**次回予告(1-11)**


琴葉の言葉に深く傷付いてしまう直陽。

そんな時、あまねが⋯。


**作者より**


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