8-2
映画を見終わり、近くのカフェに入る。まだ肌寒さは残っていたが、天気も良く気持ちが良かったので、外の席に座った。
「どうだった。何か得られるものはあった?」と直陽が訊く。
「小説を書こうとしてて、何をどう生かせるかなって視点で見ると、映画を素直に楽しめないというのは分かった」
「あはは、なるほど」
「でも⋯一種のテンプレみたいなのは分かったかも。出会い、接近、障害、迷い、決断、告白⋯。でもあと何か一つが欲しい」
それを聞いて、直陽は鞄の中からカメラを取り出した。
「ここは原点に立ち返ってみたらどうかな」
「あ!コラボ!いいね!」
そう言って、あまねは直陽の隣に椅子を移動させて、スマホを取り出した。
「最近撮ってない」
そう言って、スマホを構えて、
「直陽くん、ここ見て。一緒に撮ろ!」
と言って、写真を撮った。
そして、スマホを操作して直陽に送信した。
「今送った」
送られてきた写真を見る。
「そういえば」直陽は思い出したように言う。「チキンカツ記念の写真、久しぶりに見てみたら、俺すごく困惑した顔で写ってんの。本当は嬉しかったくせに」
「ごめんね。確かにあの時はちょっと強引だったかも」
「あれ?」直陽が何かに気付く。
そして、カメラを持って周りをウロチョロし始めた。
あまねもそれについていく。
「どうしたの?」
直陽は、カフェのオープンテラスの端のブロックの上を指差した。
そこには黒猫が一匹、気持ちよさそうに眠っていた。
直陽は、手に持っていたミラーレス一眼で写真を撮る。その気配に気付いたのか、その猫は目を覚まし、カメラに目を向けた。
「なんかこの猫ちゃん、かわいいんだけど、どこか貫禄も感じられるね。今にも話し出しそうな――あ」あまねは何かに気付いて「その写真もらっていいかな?」と訊いた。
「もちろん」
送られてきた写真を、あまねはじっと見る。
「話のスタートをどうするか決めかねていたの。それが今決まった」
そう言ってあまねは晴れ晴れとした顔をした。
「タイトルも決めた!」
あまねは空を見上げ、春らしい陽光を浴びながら、直陽にそのタイトルを告げた。
【終】




