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晴れた日には、恋をする  作者: 月舟 蒼
第七章 月城直陽
102/104

7-4

 B校舎の外のスロープ。

 あまねと直陽は少し離れて、向かい合わせに立っていた。

「ごめん、取り乱した」

 あまねは一通り泣いた後、我に返った。そして、

「そういえば、直陽くんは、どう?」

と言って、直陽の目を覗き込んだ。

 直陽もあまねの目を覗き込む。

「うん、俺も、何も見えない。ずっと目を覗き込んでるわけじゃないけど、最近は見えてなかったかも」

「じゃあ、二人とももう()()なんだね」

「そうなるね」

 あまねはそっと直陽の右手を摑み、

「中、入ろうか」

 と促した。

 直陽は思う。二人手を繋いで歩く。もう自然なことのようになっている。でもいつも繋いでいるわけでもない。結局俺たちはどういう関係なのだろう。

 校舎に入ったところにあるベンチに座った。手はまだ繋いでいる。

「私は」あまねが話し出す。「人の気持ちが分かるようになりたいと願い、雨の日の能力を得て、直陽くんに出会い、その気持ちを自分で知ろうと思うようになった」

「俺は」直陽が応える。「自分の気持ちを知ってもらいたいと願い、あまねさんに出会って、人の心が見えるようになり、自信を持って自分の気持ちを伝えることができるようになった」

 二人は顔を見合わせた。お互い、ふふっと笑う。

 あまねが話し出す。

「でも今は結局、二人とも『普通の人』に戻ったんだね。何の能力も持ってない」

「そう。なのに、最初の願いは、二人とも叶っている」

 その時、窓の方を見たあまねが「あ」と言った。「あれ」

 そう言って指差した先に綺麗な虹がかかっていた。

「もうすぐ、雨は止みそうだね」

 直陽が言うと、あまねは、

「うん、雨が止むことが、こんなに嬉しいことだなんて、知らなかった」

と言った。

 あまねは繋いだ手をちらっと見た。

「この雨があがったら、私、恋がしたい」

「誰と?」

「私の目を見れば、見えてくるかも」

 あまねは少しイジワルそうに笑う。

「じゃあ、俺も、雨が止んだら、恋をする」

「誰と?」

「耳をすませば心の声が聞こえるかも」

 直陽はそう言うと、じっとあまねを見つめた。

 あまねも直陽を見つめ返す。

「あまねさんは、俺の気持ち、もう知ってるよね」

「うん。直陽くんも、私の気持ち、知ってるはず」

 改めて直陽はあまねを見据えた。

「でもだからこそ、言葉にして伝えたい」

「私も」

 一瞬の沈黙の後、ハッと気付いたあまねが慌てて口を開く。

「待って!」

 驚いて直陽が「どうしたの?」と訊き返す。

「どっちかが先に言ってしまったら、この物語は完成しない」

「あまねさんらしいや」

「だからね、私からのお願い、というか提案」そう言って直陽を見つめる。「一緒に言おう」

 直陽は微笑み返し、「うん、そうしよう」と言った。

「私は直陽くんのことが――」

「俺はあまねさんのことが――」

 この一瞬に、直陽は、指揮者のいない音楽のようだと思った。心は読めないのに、互いに目を見るだけで、「その時」が分かるのだ。

 目と目を合わせ、二人は同時に今まで積み上げてきた思いを言葉にした。


「「――大好き」」

**次回予告(8-1)**

あまねと直陽は二人で映画を見に行くことに。その入口であまねは「あれはどういう意味だった?」と訊く。

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