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「私はあの時、桃華ちゃんとの幸せが全て反転していた。誰にでも受け入れられていると信じ切っていた自分が恥ずかしくなった。だから、『人の心が分かるようになりたい』ってお願いしたんだ。直陽くんは何てお願いしたの?」
それを聞いて、直陽はふふっと自嘲気味に笑って言った。
「それがね、本当に対照的だった。俺のお願いは、『自分の気持ちを誰かに知ってほしい』だったんだ。あの頃の俺は、孤独が苦しくて誰かに分かってもらいたいけど、自分から伝えることができない。伝えれば拒絶されるかもしれないから。伝えることが怖いって思ってた」
「じゃあ」あまねに驚きと笑顔が漏れる。「私が『知りたい』で、直陽くんが『伝えたい』だった。ほんとに対照的――あ」
直陽とあまねは、顔にわずかに雨粒が触れるのを感じた。やがて、サーっという音に包まれ、あたりは水たまりに満たされた。ひさしはあるので、ひどく濡れることはない。スロープに手を乗せたまま、二人はじっと雨を見続けた。
「雨に、なったね」
直陽が口を開く。
「声が⋯聞こえない」あまねは直陽を見つめた。「聞こえないよ、直陽くん!」
そう言うと、これまでの六年間の思いが一気に噴出した。
次第に表情は崩れ、次から次へと大粒の涙があふれた。もう隠す必要はなかった。
あまねは、わーっと子供のように泣き、直陽に抱きついた。
「ちょ、ちょっと!」
突然のことで直陽はどうしていいか分からない。
しかしあまりにあまねの力が強いので、直陽は抵抗することをやめた。そして、
「今まで大変だったね。今のあまねさんなら、もう大丈夫」
と言った。あまねはいっそう泣きじゃくり、全ての感情を吐き出した。




