7-2
二人は今にも降り出しそうな空を見上げ、とりあえず屋根のある校舎のスロープへと移動した。校舎の中にまで入らないのは、雨か雪が降ってきたら、どっちなのか確認するためだった。
スロープの冷たさを手のひらで確認しながら、直陽が口を開いた。
「実は、あまねさんに話していないことがもう一つある。思い出したこともなかったから、多分雨の日にも伝わっていないと思う」
あまねは黙って聞いていた。
「俺も中三の元日、木霊神社に行っていた」
ハッとしてあまねが訊く。
「俺もってことは⋯。児玉台にいたころの私を知ってる?」
「ずっと知らなかったよ。年越しイベントの時に、『児玉台にはあまりいい思い出がなくて』って言ってたよね。その時に見えてしまったんだ」
「え!?」
「親友に心無い言葉を掛けられて落ち込む君。藁にも縋る思いで神社で祈ったこと」
あまねは小さな溜め息をつき、わずかに微笑をたたえて言う。「なんだ⋯全部分かってたんだ」
「ごめん、過去を盗み見するようなことをして」
「ううん、いいの。私も直陽くんの心の声をたくさん聞いてきたんだから。むしろ、知ってもらえて嬉しい」
「⋯中三の元日の零時ごろ、あまねさんはもしかして、赤いコートを着ていた?」
「うん。なぜか覚えている。それも私の目から見えた情景?」
「それもある。けど、それだけじゃないんだ。たぶん俺はその場で、実際に君を見ている」そう言って直陽は小さく呟いた。「『クリスマスはもう終わったのに』」
その言葉を聞いた途端、あまねには六年前の情景がはっきりと蘇った。
「直陽君は、緑色のコートを着ていた?!」
「そう」
「確かに覚えている。なんで自分のコートの色をしっかり覚えていたのか分かった。視界の端に映り込んだ隣の人が緑のコートを着ていたからだ。そこで私は思ったんだ。『クリスマスカラーみたいだ』って」
「俺も思ったんだ。『クリスマスはもう終わったのに』って」
「じゃあ、あの時」
直陽は力強く言った。
「そう、あの時俺たちは、並んで一緒に祈っていた」




