プロローグ
君は運命って信じるかい?運命だよ、運命。
「運命の人に出会えた」って言えば運命は美しい。でも「初めからその人に起こることは決まっていた」と言われると、味気なくなる。
意志と運命。どっちが本当なんだろうな。俺はいつもそんなことを考えてるよ。
あ、言い忘れていた。俺は猫だ。黒猫。名前は、おそらく一生つけられることはないだろう。生まれたのもこの町じゃない。渡り歩いて生きている。
猫がそんなこと考えるわけないだろって?そんなの分からないじゃないか。猫はいつだって考えてる。可愛いフリして考えてないように見せてるだけさ。
なんで運命なんて考えるようになったかって?
俺は今団地の中に住んでる。行き交う人を見て生きている。だからかな。
それで思うんだよ。運命も意志も、どっちも存在する。意志の積み重ねが、運命を創るんだ。運命が意志を後押しするとも言えるかもな。
猫はいつも暇だから、そんなことを考えてるもんさ。
最近俺が観察してるのは、いつも違う方向から歩いてきて、赤い円盤の付いた奇妙な棒の前に立つ一組の男女だ。
俺が彼らを観察するのは⋯何故だろうな。それが俺の運命な気もするし、俺の意志のような気もする。
まあ、ちょっとの間、風変わりな猫の話を聞いていってくれよ。
とある男女の、季節一巡りの物語だ。
**次回予告(1-1)**
湿気の匂い、梅雨時のバス。「私は、朝霧あまね」唐突に始まった自己紹介。
少し内気な少年が、無邪気で、少し不思議な女の子と出会う。




