社畜八百万神はタピオカの美味い店も知らない
8時間業務終え帰宅ラッシュ
人が行き交うホーム
雨が降る、主張激しい雨が降る
線状降水帯発現ふざけるな!
電車は遅延バス停に群がる人人々
ざぶざぶ鳴る駅ナカのカフェに寄りコンビニ傘倒す
やまぬ雨、減るコーヒー
リミットは2時間どうせスマホをいじって終わり
速報ニュースを見ている時間は神思考
この世を憂う我浸る
(雨よ全て流したまえ
血も涙も、肌の色を背負った痛みさえ
傘だけでは守れない────それは『いのち』)
……女子高生来たりてキャイキャイ言う
タピオカの美味い店になんの価値がある?
世界は悲しみを背負っているのだぞ
友と笑い会える時間を慈しめ
ああコーヒーが不味い
損した790円
「……でさ、選挙誰いれる〜?」
話の続きは自動ドアがシャットアウト
現実空間へと戻った私は家目指す
土砂降りの駅前
タクシーを呼ぶ手を止める
ここは爺さんに譲ろう平和のために
大層なことを想えど実際
なんちょろない平社員
女子高生からすれば
タピオカの美味い店も知らずに
世界を語るなんてダサいかもしれない
……、
…………、
家に帰り
ひとりネットサーフィン
SNSでは勝ち組で
フォロワー5000超えている
雷が鳴る
通信速度が下がる
遠ざかる勝利の頁
(こんなで良いのか)よぎる不安
掻き消すように即席ラーメンを啜る
神は……私の神は崇高で
誰からも必要とされるはずだ
そう信じて、明日に向かって眠る
すぴーすぴーザーザー
すぴーすぴーザーザー
朝には照り照りのアスファルト
さぁ今日も社畜やりますか!
爺さんに貰った喉飴を
ポケットに入れっぱなしにして溶かしてしまう
うっかりな神だけど
きっとこんな八百万の神が
世界中にごまんといる
だから世界は、まわり続ける
終わらない、終わらせない
これは『私』の気持ちだ
タピオカの美味しいお店、何処だろう?