第八話 復讐ターゲット:ミルキーブルー
少し気持ち悪い表現があります。性的表現が少しでも苦手な方はお控えください。
…しばらくして…車が停まり運転手はさっさと降りて雪音の腕をギリギリと掴み乱暴に降ろした。
「きゃ!何するの!痛いではないですか!ちょっと!」
運転手は雪音を降ろしてそのまままた車を発進させてしまった。
「な…何でこんな…」
「久しぶりね?雪音」
ぼーっとしている雪音に話しかける声。振り向くとそこにいたのは紫苑だった。
「紫苑!?ま…まさか貴方が仕組んだのですか!?」
「あら?私はただ協力をお願いしただけよ。けど貴方かなり嫌われてるわねぇ?可哀想だわ」
クスクスと笑う紫苑を雪音は睨みつける。
しかしそんな事も気にせず紫苑はある場所を指差す。そこにあるのは木でできたログハウスだ。
「行くわよ。着いてきなさい」
「わ…私に命令しないで!私は帰りますわ!…ぐ…」
雪音は逃げようと走るが首に何かが巻き付いて動けない。後ろを見るとバイオレットに変身した紫苑がギリギリと紫の光の鎖で押さえつけていたのだ。
「な…なにを…」
「それはこっちのセリフよ?何逃げようとしてるのかしら。というか此処らへんには熊や猪も出て危険よ?それなのに変身もできない貴方一人で帰るなんて無謀だわ」
それに対して雪音は更に何か言おうとするが喋ろうとすると鎖がキツく閉まり上手く言葉を出せない。
「静かにして…。それ以上やかましくするならこのまま首を締め上げてそのまま殺してもいいのよ。
自殺した彼の様に貴方も首を吊ってみる?」
バイオレットの言葉に雪音は押し黙りそして大人しくなった。
そしてバイオレットは雪音をまるで犬の散歩の様に首に鎖をつけたまま誘導する。雪音にとっては屈辱の時間であった。
◇
「さて着いたわ」
「…此処はどこですの?」
「それよりもこれに着替えて」
雪音の言葉を無視して服を押し付けるバイオレット。雪音は文句を言いたいが自分は変身できないのに相手は魔法少女状態。明らかに不利だ。
他のメンバーに比べて緑に次ぎ感情を押し殺す事は雪音にとって造作もない。
雪音は早速渡された服を着替えることにするが…
「試着室とか…ありませんの?」
「行かせてる隙に逃げられると悪いし…貴方が逃げないって信用できないもの。此処で着替えなさい」
その言葉に顔を真っ赤にする雪音。お嬢様の彼女にとって広い部屋で自分だけが着替えるガランとした空間は中々抵抗がある。
しかしバイオレットが鎖を握ったままなのをみて覚悟を決めた様である。
◇
「な…何ですの!このハレンチな服は!」
雪音が来ているのは所謂メイド服。しかしスカートはパンツがもう少しで見えるギリギリの短さ。そこにニーハイを合わせている事から絶対領域が形成された。
更に上半身は胸の谷間と肩がガッツリ出ている。しかも雪音の場合は同年代の子と比べて発育が良いため余計に目立つ。
頭にはフリフリのヘッドドレスに黒のウサ耳をついた物をつけている。
「まさか…貴方そういうご趣味をお持ちなの!?」
「はぁ…あのね?心愛みたいな事言わないで。例え私が女の子を好きでも貴方達五人は絶対に好きにならないから!」
と如何にも心外だと怒るバイオレットに更に不安な顔をする雪音。
ならば何故自分はこんな格好をさせられたのか…。
「今から貴方にはある体験をしてもらうわ。どうぞ。入ってきてください」
「え?」
バイオレットの合図で二人のいる部屋のドアが開く。
するとそこからゾロゾロと何やら男性の集団がやってきた。人数は五人ほど。大体が高そうな服をきたおじさん達である。
「まさか西園寺財閥のご令嬢があんな格好を…」
「ふふふ…しかし若い娘のいやらしい格好はたまりませんな。特に雪音嬢は中学生だというのにあの体…」
「奉仕させるのが楽しみですな」
おじさん達は雪音をいやらしい目で見てくる。その視線に不快感と不安を感じながらバイオレットを見つめる。しかしバイオレットは無視。それどころか
「では皆さん席にお座りください」
そう言ってバイオレットが手を上に上げるとボフンと煙が現れそこから紫の椅子やテーブル、そしてお茶を作るセットが現れた。
その現象におじさん達はおー…と感嘆の声を上げている。そしてバイオレットに勧められて全員席に座った。
「何なんですの…一体」
「この方々は貴方のファンの方々よ。しかも貴方のお父様が経営する西園寺財閥と繋がりのあるお金持ち」
「な…」
「声をかけたらすごいわね…皆んな貴方にご奉仕してもらうって聞いて興奮してたのよ?西園寺財閥のお嬢様は美しいと評判ですものね?」
そう言ってバイオレットの方もおじさん達同様に腰掛けた。
「今から貴方には私と此処にいるおじ様達にお茶を出してもらうわ。あんなに他のメイドや執事に文句を言えるんだからさぞかし絶品の物をそれはそれは早いスピードで…妨害されてもするりとかわせる技量をお持ちなのでしょう?
もしきちんとできれば特別に貴方には何もしない。
けど…失敗したらどうなるかしら…」
バイオレットはクスクスと笑っている。雪音はぎりっと唇を噛んで睨むが相手が悪すぎると判断したのか大人しくいうことを聞くことにした様だ。
◇
早速雪音はお茶を淹れる準備をした。
「…(あれ?確かこうやる筈…あれ?)」
元々の雪音はお茶も普通に入れられるし美味しく作れていた。しかし現在はほとんどサボり使用人に任せっぱなしで遊び呆けていた。
雪音は確かに社長令嬢ではあるものの普通の少女である。遊びを優先させたいのは分かるが度が過ぎたサボりにより教養の殆どが飛んでいき体が忘れてしまっていた。
すると雪音の使っているテーブルをバイオレットが蹴飛ばした。
「ひ!」
「アンタ遅いわよ?これならカタツムリの方が早いわ。いやそれではカタツムリに失礼ね」
開始してまだ1分ぐらいだ。雪音は文句を言おうと口を開こうとするが。
「何?文句があるの?けどあなたは使用人にたった10秒遅れただけで罵声を浴びせてたんでしょ?」
バイオレットの言葉は図星である。そのせいで茶器が割れたら使用人のせいにしていた。
それに加えて雪音の場合は時折ストレスが溜まると魔法少女に変身して脅迫まがいの事をしたりその人の体自体を傷つけたりもした。
「何なら証人もいるわよ。おいで」
バイオレットの言葉掛けに地面に青い光が発生した。するとそこには
「サファイア!」
「…気安く名前を呼ばないでくれたまえ。私は君が憎くてたまらない」
元ミルキーブルーの相棒の妖精であるサファイアである。サファイアはキッと雪音を睨みつける。
「私が体力が限界だと何度説明しても無意味な変身を強要し、失敗されば熱い紅茶をかけたり罵声を浴びせたり…そしてそれを君の為に働いてくれてる使用人にも同じことをして…
君は最低だな」
サファイアの言い分に雪音は目を険しくさせていた。元々のサファイアはお淑やかで知的な雪音を気に入っていてまるで執事の様に付き従っていた。しかし今はそんな思いさえも抱いてない。
「サファイア…貴方のパートナーにこれからお仕置きするけどいいかしら?」
「いいですよ。それともうパートナーではありません。…何よりこの女達は貴方様のお母様…女王様を殺しておきながら罪悪感の欠片もないのだから…」
その言葉に雪音はえ?と声を出した。
「ま…待って…嘘…私達は殺してなんか…」
「そうね。貴女方が知らないのも無理ないわ。お母様は貴方方の攻撃を受けて深傷を負いながらも最後の力で貴方方を夢の国から追放して出禁にしたもの。
けどその後お母様は力尽きて…そのまま…。
今の夢の国はお兄様が国王として率いてるの」
この言葉に雪音はガクッと膝をついた。
まさかの殺人。直接ではなく間接的に人を殺してしまったのだ。
「ねぇ?貴女苺に命の価値とか言ってたじゃない?なら唯の社長令嬢で人殺しの小娘と一国を支えていた女王様。
貴女の理論ならどっちの命が重いのか分かるわよね?」
「ま…待って下さい。何でそれを…」
何故自分と苺の会話を知っているのか…その言葉に雪音は何やらリモコンを操作し始めた。
すると壁に付けられている赤いカーテンがスルスルと開く。
そこには
「い…苺?」
窓の向こうにいるのは苺である。苺はただ呆然と椅子に座っていた。しかし雪音に気づくと立ち上がり窓をドンドンと叩き始めた。
「ちょっと雪音!助けてよ!」
と雪音の方が明らかにやばい状況なのに助けを呼ぶ。それに対して雪音は顔を引き攣らせた。
「因みに苺の部屋は鍵かけてないわよ?合図を出すまで出ていくのは禁止にしたから。破ったら魔法少女の力で殺すって約束でね」
バイオレットはクスクスと笑っている。雪音はそんなバイオレットにゾッとしていた。
「じゃあ続きお願い。そうねぇ…苺にはこのルール言ってないけど…もし貴方のいる部屋に苺が助けに来てくれたら開放してあげる」
「でも…苺さんは出てったら殺すって…」
「だから合図したらOKになるってことよ。それでやるの?やらないの?やらないなら一生このままよ。そうねぇ…このおじ様達の誰かの所有物になるかもね」
そう言うと後ろにいる男達はニヤニヤと舌なめずりして雪音の体を舐るような視線で見てくる。
このままいて何をされるか分からない。少しでも助かる可能性を考えて雪音は決心することにした。
登場人物
ミルキーピンキー
変身者は桃井 苺。勉強も運動も普通より少し苦手な女の子。六人の魔法少女で1番初めに魔法少女になった。それ故に無意識に彼女らのリーダーとなって引っ張っていた。しかし普通の自分に比べて周りの魔法少女達の容姿や才能に嫉妬していた。特に居候していて身近にいた紫苑に対しては顕著であり、彼女の方からも1番恨まれている。
モモ
元ミルキーピンキーの相棒妖精。性別は女。バロンとは両思い。元々は普通ながらも明るくて正義感の強かった苺が大好きであり、喧嘩もするが仲良しだった。しかし次第に豹変した苺によって毎日の様に虐待される様になり…。