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第七話 命の価値の分かれ目

少々乱暴な描写があります。ご注意ください。

 そして次の日。

 「…あれは…」

 苺が学校に登校しようと歩いていると途中にある緑の家の前にパトカーが停まっていた。そしてそこから

 「私は娘を殺してなんかいない!娘だけは!断じて殺してなんかいないんだ!」


 と叫ぶ男がいた。苺は只事ではないと感じた。そして連日の魔法少女への異変。


 苺は恐怖で走り抜けていった。



 ◇



 そして学校に到着した苺は急いでこのことを雪音に報告した。すると雪音は顔を青くさせた。

 「ま…まさか緑さんの身になにか…」

 すると二人のいるクラスの担任がハァとため息を吐いて登場した。

 

 「席につけ!…一体どうなってるんだ…。いやな?実は今朝…四葉緑さんが亡くなった」


 その言葉にクラスの空気は冷たくなった。失踪や入院どころか亡くなった…死んだのだ。

 その言葉に流石のクラスメートも顔を青くして黙り込んでいたし、残った二人の魔法少女も怯えていた。


 「…連日の魔法少女が被害者の事件だ…桃井!西園寺!放課後一度職員室に来るように!」

 「「…はい…」」


 二人はこれに素直に頷いた。



 ◇



 放課後

 「本当に心当たりはないのか?」

 教師の問答に二人はガタガタ震えながら否定する。


 「ありません!何もありません!」

 「そ…そうですわ!第一私達は世界を救った救世主。感謝はされど…そんな…」

 そんな二人に教師はため息を吐いた。


 「…心当たりな…知ってるか?お前ら魔法少女…転校した村崎以外のお前達五人には沢山苦情が来ているんだ」

 その言葉に二人は目を見開いた。


 「テレビ局での一件もあるがお前達は気に入らない生徒を虐めたりしていたな。

 それに外ではお前達が公共の場で騒いでるのを注意した人を突き飛ばす。サインを貰おうと近寄った小さい女の子を無視してそれでもしつこいと平気で叩いて謝りもしなかったとかな」


 これまで五人は自分に歯向かう者を排除していた。子供も構った所で金にならないしうるさいからとぞんざいに扱って沢山の子供を泣かせた。


 そんな事をしていた五人は自分たちは救世主だから許されると勘違いしていた。二人はガタガタ震えるのみ。


 「そ…それじゃあ先生は私たちが悪いことしたからそれの報復を受けてるっていいたいんですか!」

 苺が担任を睨みつけて叫ぶが担任は慌てる。


 「ま…待て待て待て!俺はそこまで…」

 「最低ですわ…先生!冗談でもそんなことあり得ませんわよ!私達は救世主!それを仇で返す されてるなんて…しかもそれを私達が悪いみたいに!失礼にも程があります!

 お父様に頼んで貴方をクビにして差し上げますわ!行きますわよ苺さん!」

  

 雪音の言葉に担任は顔を青くさせた。

 「ま…待ってくれ!俺には嫁も娘もいるんだ!此処でクビにされたら!」

 「もう決めたことですもの。精々私達を馬鹿にした罪を償いなさい?」

 「いやだ…やめてくれ!なんでもするから!」


 そう言って土下座する担任に雪音と苺はクスクス笑うのみ。

 そんな光景を窓から見る紫苑。


 「此処まで仲間達がやられても気づかないとか…頭おかしいわね…」

 紫苑は呆れながら学校の敷地から脱出した。


 そして次のターゲットを雪音に設定して早速動くことにした。



 ◇



 放課後

 「ね…ねぇ?雪音。怖いから私も乗せてもらっていいかな?」

 苺は迎えの車が来た雪音に声をかけた。だが…


 「嫌です」

 「!?どうして」

 「仮に次のターゲットが貴方の場合巻き込まれるのは私ではありませんか」

 「そ…そんな…でも緑みたいに殺されたら…」


 「知りませんわ。そんなこと。大体貴方が私を守るのはわかりますがその逆は絶対あり得ません」

 「はぁ!?な…何でそうなんの!」


 あまりに理不尽な雪音の言い分に苺は噛み付く。だが

 「考えても見なさい?西園寺グループの跡継ぎである私には会社の未来がのしかかっているのですよ?それに比べたら貴方は庶民の娘ではありませんか。

 そこで命の価値が明確に分かれますよね?貴方より私の命の方が重いのだから」

 「でも私も雪音も一緒に世界を救った…」

 「だから?だとしても私が西園寺の娘なのは変わりない。世界の救世主もそこに上乗せされた命の価値。

 何も変わりません」


 雪音はクスクスと笑っている。元々は才色兼備のご令嬢であり、学校のマドンナであった雪音。


 だがそんな人気者の彼女に更に救世主の付加価値が付いて人々は彼女を更にチヤホヤした。

 更に会社の後継も元々は姉だったが雪音の救世主としての付加価値とそれに伴い魔法少女グッズの販売などで経済を動かした。


 そんな功績や社員の希望で雪音が次期社長に決定したのである。

 しかも姉の婚約者だった男性も雪音の婚約者に変わった。


 婚約者は優しくてイケメンの高身長。雪音をお姫様の様に大事にしてくれる。どこかの黄色の魔法少女が望んでいた王子様そのものだ。


 そんな順風満帆な生活に雪音は徐々に歪んだ。最初は後継を下された姉を見下す様になりそしてそれは広がっていった。


 イライラすればメイドや執事にネチネチ嫌味を言いパワハラを行う。

 自身の元パートナーのサファイアに対しても日頃からネチネチと暴力をたまにし、大体はネチネチした言葉の刃を突き立てる精神的虐待を行っていた。


 「分かったら一人で帰りなさい。私はお先に帰りますのでごきげんよう…」

 「あ!待って!こら!置いてくんじゃねーよ!クソが!」


 雪音はさっさと黒塗りの送迎車に乗りこみ指示を出した。そして車はそのまま発進して苺を置いていった。



 ◇



 「ふぅ…全くしつこくて嫌になりますわ…ん?」

 雪音はぶつくさと美しい顔を歪めてスマホを弄りふと窓を見る。


 窓の外は自分の家までの通学路ではなく木の生い茂る雑木林。

 「ちょっと!貴方!屋敷はこっちじゃありませんよ!」

 「…お嬢様…。私は小さい頃から貴方の送迎を担当して参りました」

 「は?」


 突如語る運転手に雪音はポカーンとしている。運転手は一度車を停めた。そして

 「…私はもう貴女についていけません。昔の貴方は聡明でお優しくまるで太陽の様なお人。

 しかし貴女は変わってしまった…」

 「貴方…何を言いたいんですの?良いから!早く車を!」

 「私の事もクビにするおつもりですか」


 運転手の急な大声に雪音の体が跳ねた。後ろに乗る雪音に険しい顔を向ける初老の運転手は更に続ける。


 「貴方が先日…メイドを怒鳴っている場面を注意した使用人を旦那様に嘘をついて辞めさせましたよね!?何でも旦那様や奥様の私物を盗んだとか。

 しかし先日他の使用人が紛失物を貴方の部屋を掃除して見つけたのですがこれはどういう事なのですか?」

 「し…知りませんわよ!あの方が私に罪を擦りつけようとしたに決まって…」


 「貴方によって辞めさせられた使用人はクビになった挙句に今回の嘘を鵜呑みにした旦那様の手回しで他の仕事に就けず鬱になり…そしてとうとう自殺したのをご存知ですか?」


 自殺という言葉に雪音は目を大きく開いて汗を流しはじめた。

 「一生懸命あの方は貴方のために尽くしてきました。私含め多くの使用人が貴方に愛想を尽かす中、あの方だけは最後まで貴方が更生すると信じていた。それなのに…」


 運転手はギリギリとハンドルを握りしめて雪音を睨む。

 「あの方は私の娘の恋人…つい先日結婚の挨拶まで来てくれた…私の未来の息子になる筈だった…。それなのに!」

 「そ…そんなの知りませんでしたの!ま…まさか死ぬなんて思ってませんでしたし!」

 

 謝罪ではなくひたすら言い訳を言う雪音。そんな雪音にとうとう何もかも諦めた運転手は顔を無表情にして何も言わずに車を発進させた。


 「ちょ…どこへ!?」

 「…もう無理です。貴方が一言でも謝って下されば考えましたがここまで落ちぶれてしまうとは…。旦那様に諦められるのも頷けます」


 その言葉に先程よりも驚く雪音。

 「お父様が私を諦めたってどう言う事ですの!?」

 「自殺した使用人の話題よりもご自身の方が大事ですか…。まぁ良いでしょう。どうせ二度と会うことはないでしょうから。

 自殺した彼の濡れ衣を知り…そして今回のテレビ局の件から旦那様は貴方を後継者から外すとの仰せでした。

 上手く猫を被ってきた様ですがもうその化けの皮も剥がれたのです」


 雪音はガタガタ震えた。せっかくの成功者の道が一気に崩れたのである。何より…

 「二度と会うことはないって…」

 「それはこれから分かります。ははは!やっと貴方と会わなくて良いと思うと最高の気分ですよ!ざまぁみろ!」

 「キャ!」


 運転手はゲラゲラと笑い雪音を乗せてるにも関わらず雑木林を急スピードで駆け抜けていった。

登場人物

  ミルキーブルー

 変身者は西園寺 雪音。西園寺財閥の令嬢。学校での成績は緑に次いでトップクラスであり運動もトップの座に登っている。ピアノや茶道など多才であり、生徒会にも所属する完璧な淑女だった。だが魔法少女になってからその力を利用して遊び呆ける様になり更に会社の後継に選ばれて他者を見下す性格になってしまった。


  サファイア

 元ミルキーブルーの相棒妖精。性別は男。しっかり者で冷静だが何処から抜けている。完璧な淑女である雪音を気に入っていて彼女の執事の様に付き従い、従順だったが少しずつおかしくなった彼女に暴言や暴力を浴びせられて彼女を恐る様になる。

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