第三話 復讐ターゲット:ミルキーレッド
少女に対する暴力描写あり。流血や嘔吐描写あるので苦手な方はご注意下さい
そして次の日からメンバーは地獄を味わうことになった。
今回の炎上事件のせいで周りからは白い目で見られる様になりSNSも閉鎖している。
しかし一方の個人アカウントはというと…。
「はぁ…やっぱりこの子はやってるわよね?他のメンバーは閉鎖してるけど馬鹿なのかしら」
バイオレットこと紫苑は現在変身を解いてスマホを見ている。他のメンバーは閉鎖してる個人アカウント。だがそんな中心愛のアカウントだけしぶとく生き残っている。
コメントは荒れてるが彼女はそれでもあざといキャラを貫いていてある意味逞しく見える。
変身を解いた紫苑は黒いパーカーに黒のショートパンツとニーハイにブーツの黒コーデ。フードを目深に被ってマスクをしている。しかしその瞳は知恵を蓄えた様な紫の大きな瞳であり顔立ちが整っている事がわかる。
ちなみに本来の髪型はストレートの紫がかった黒髪をハーフアップにしている。
彼女が美しい容姿を隠しているのは心愛が勝手に自身の真の姿をネットで晒してしまい一時期ストーカー被害に遭ったせいである。
そしてスマホは彼女が戦いに身を投じていた頃…当時苺の家に居候してた時に契約したスマホである。
紫苑はこのスマホを弄るのは余り好きではない。だって
「う…」
紫苑は吐き気を催してすぐ最寄りのコンビニに入りトイレを貸してもらいそして吐いた。
脳裏に浮かぶのは中年のメガネの男性のいやらしい顔とそして…
「(気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!)」
ハァハァと息を整えた紫苑。そして落ち着くと洗面所で自身の鞄に入れていた紙コップを取り出してうがいを行う。
そしてやっとの事脱出した。そしてコンビニで適当にぶどうジュースを買い先程立っていた路地裏に戻る。すると
「…大丈夫ですか?姫様」
路地裏にいたのは紫苑の相棒である妖精の"バロン"。
彼は紫の子虎の様な姿に背中に蝶のような羽を生やしている。元々は紫苑の執事であり今現在でも紫苑の復讐の手伝いをしている。
元々紫苑が敵の幹部に攫われていてバロンがそれに気づき五人の他の魔法少女に応援を要請して救出して貰ったのだ。
その時はすこーしは調子に乗ってたがまだ可愛いものだったし人並みの優しさは全員持ち合わせていた。
「ええ大丈夫よ…ありがとう」
「いえ…ですが姫様?もしスマホを触るのが苦痛ならば私が代わりに操作を…」
「うふふ…貴方のこの可愛いモコモコの手じゃ反応しないもの…私は大丈夫よ。それに復讐に使う予定だもの」
ニコリと笑いながら紫苑はスマホの電源を落として鞄にしまう。未だバロンは不安そうである。
「大丈夫ならよいのですが…無理はなさらず…姫様最初はどなたから報復を?」
バロンは不安気に瞳を揺らして問う。
「…そうねぇ…ちょっと様子見てみようかしらね?その後決めましょ?」
そう言って紫苑はバロンを抱っこして歩き出した。
◇
一方…
「テメェ失敗してんじゃねーよ!」
「いだいいだい!いだい!しぇんぱい!許してぇ…」
五人の魔法少女の一人であるレッドこと花音は後輩と部室で二人っきりでこもりそして後輩を木製バットで殴打していた。
赤松花音…彼女は五人の通う中学校"都立桜中学校"の生徒でありソフトボール部に所属する2年生である。
そんな彼女はそのソフトボール部の不動のエースでありスポーツ万能の快活少女。
元々は面倒見もよくボーイッシュなその性格から後輩からも慕われていて、女子生徒からたまに告白まで受けていた。
しかし魔法少女として活動して更に人気が高まる彼女は人が変わった様に調子に乗り始めてサッパリした性格はネチネチし、後輩に暴言や暴行を平気で行う様になった。
部活の他のメンバーも気づいていたが、何せ相手は怪物を倒す魔法少女。注意しようにも出来ない。顧問も注意したいが何せ今の桜中学は魔法少女を出した学校として売り出している。
校長や教頭などの指示により口出しできないのである。
まぁ…今となっては逆効果だが…
それに加えて彼女は現在他の四人にハブられている。カメラの弁償や財布を奪う行為などから他のメンバーからは総スカン。それが更に彼女をイライラさせている。
そんな彼女はビシビシとエラーばかりする後輩を殴りつけるが途中でキャッキャっとはしゃぐ声が聞こえた。
そしてそこで手を止めて窓の外を見ると自身以外の魔法少女が他の生徒に白い目で見られるものの四人で固まり歩いてる姿を見た。
その姿を見た瞬間。更に花音はイラつきそして…
「ムカつく…マジでムカつく!」
バットを木製ではなく鉄バットに持ち替えて殴りかかる。が流石に命の危険を感じた後輩は何とかかわした。
「い…いやです!そんなので叩かれたら!」
「五月蝿い!ウチは救世主でこの部のエース!何でも許されるの!アンタは黙ってサンドバックになれよ!ウチの命より格下のアンタの命なんてなくなっても誰も悲しまねーよ!死ね!」
「い…いやぁ!」
後輩は尻餅をついた。そこへ問答無用で振り下ろす花音だが…
「辞めなさい!」
花音のバットは何者かの手により止められた。それは
「…バイオレット!」
バイオレットに変身した紫苑だ。生身のままではバットを止めるのは不可能。しかし危険と判断した紫苑はすかさず変身して駆けつけたのである。
「花音…練習熱心な貴方なら多分いると思ったのよ。それに他の四人が貴方を置いて帰ったの見たもの」
「ち…その手離せよ」
「離さないわ。そっちの子は今のうちに帰って!ここは私に任せて!」
「は…はい!ありがとうございます!」
後輩はぺこりと頭を下げてお礼を言いそのまま帰って行った。
「貴方…あの子に何してたの」
「は?あいつがエラーばっかりするから指導してただけですけど?」
「うそばっか。どう見てもバットで殴ってる様にしか見えないんだけど?」
バイオレットはバットを強く握りそして投げた。花音ごと壁に激突した。
「ぐ…」
「貴方言ってたわよね?そのバットもボールも自分の最高の武器だって…。貴方のそのユニフォームはどんなドレスよりも自分にとって価値のあるものだって!
なのに何で!?」
バイオレットは悲痛な面持ちで花音を見つめる。最初にあった花音はさっぱりしてして男前で練習熱心な子だった。
けれど少しずつ調子に乗りそして最後のボスを倒した瞬間から彼女はおかしくなり部活をサボることも増えたのである。
しかも大事なソフトボールの道具を凶器にして人やパートナー妖精を殴る行為は度が過ぎているし以前の彼女ならばあり得ない使い方である。
「は…はは…何?説教?ばっかじゃないの?昔と今は違うの!ウチはずっと部活漬けの毎日に飽き飽きしてたの!
少しぐらい遊ぶのの何がいけないの!?こんな汗臭い服なんかよりブランドの綺麗な服着たいし?ソフトボールの道具?私がどう使おうと勝手じゃないの」
全く悪びれずニヤニヤ笑う花音にぎりっと歯を噛み締めるバイオレット。
「…あっそ…じゃあもう一つ。私が何で貴方達に復讐しようとしてるか…分かるかしら」
「は?復讐って何?ウチらなーにもしてないよ」
その言葉にバイオレットの堪忍袋の尾が切れた。するとバイオレットは素早い動きで花音に近づき首の裏を手刀を打ち込みそして気絶させた。
「…そうね…貴方方は知らないでしょうね。貴方方のせいで…私の家族も未来も滅茶苦茶になったなんて…」
そう泣きそうな顔でバイオレットは花音を担ぎ魔法少女として能力で転移ゲートを発生させてそして何処かへ消えて行った。
◇
そして数時間後
「あれ?ウチ…」
気絶してた花音が目を覚ました。そして見えた景色に絶句していた。
「何これ…」
花音がいるのは部室でも家でもなくどこかの倉庫の様な場所。そして目の前にはピッチングマシンやその後ろに沢山のバットが置いてある。
花音は見知らぬ場所への恐怖から逃げ出そうと動こうとするが体が動かない。見ると椅子に縄で固定されていた。
「な…なんだよ!これ」
「あら?目が覚めた様ね」
混乱する花音の耳に聞き慣れた声が聞こえた。花音はその声の主を睨みつけた。
「…紫苑に…ケチャップ!?」
「凄い凄い。ちゃあんと呼び分けできるのね?まぁ今更どうでもいいけど…」
変身を解いた紫苑が元花音の相棒のケチャップを抱き抱えている。包帯などで傷の処置がなされていた。
「此処は何処なんだよ!ウチに何するつもりだよ!」
「見て分からない?復讐よ?」
「だから!復讐って何!?」
尚も分からない花音に紫苑はハァとため息を吐いた。
「貴方は自分のせいで人生を滅茶苦茶にした人がいたらどうするの?」
「?はぁ?何わけわかんないこと言ってんの?世界の救世主で部活のエースのうちがそんな事するわけなくね?」
「…」
悪びれない花音に紫苑は憎悪をふんだんに込め睨みつける。花音はビクリと震えて動揺した。
「止めを刺したのは貴方ではないのはわかってるけどね?貴方…私のお母様や民に何をしたのか分かってるの?しかもその結果…お母様は…」
「ああ?そんな事?ていうかウチらに世界救えって言ったのアンタらでしょ?恩を返すのは当たり前なのにそれにイラつくとか都合が良すぎて笑え…が!」
笑い出す花音の腹部に衝撃が走りその途端花音は口から嘔吐した。
紫苑の手にはいつの間にやら鉄バットが握られていた。
「それ以上喋らないで?イライラする」
「あぐ…ぐえ…」
「うわ…何て穢らわしいの?所でケチャップ?貴方はこの女に何されたの?」
花音を汚いものを見る目で見下す紫苑はケチャップに問う。するとケチャップは涙目で花音を睨みつけた。
「おれっちは…花音に無理やり変身させるのを強要されて失敗するとバットで殴ったりボールをぶつけられたップ。
最近は失敗しなくてもイライラすると八つ当たりで暴力を振るってくるし…それに酷い事も沢山言われたっプ…」
ケチャップは最後には大泣きしていた。最初は純粋に花音と一緒にキャッチボールしたりお喋りするのが大好きで、花音の事も大好きだった。けれど…いつからから彼女は…
「おれっちは花音が大好きだったップ。いつか元の花音に戻ってくれるって…思ってたップ…けどもう待つのも限界で…」
「よしよし…ごめんなさいね?無理に話させて…」
「ふえ…姫さまぁ…」
泣き出すケチャップを優しく抱きしめる紫苑。そして紫苑はバロンに頼みケチャップを一度夢の国に戻らせた。
「聞いたかしら?これで貴方のした事よ?だから考えたの…貴方の復讐方法はケチャップにした事と同じ事にしようって。
私個人のやり方だと貴方を殺してしまうもの…でもそれではダメ。死んで逃げるなんて許さない。だからこの方法を取らせてもらうわ。
もう二度とソフトボールできなくなるかもだけど道具を凶器に使う様な人には関係ないわよね?」
「まって…辞めて!それだけは!ヘブ!」
紫苑は慌てふためく花音を無視してピッチングマシンを起動させた。すると飛び出したボールが花音の顔面に当たる。
花音の目の前に星が飛び散り歯が折れてしまった。
「あらぁ…私とした事が間違えて硬式のボール入れてしまったわ。でも貴方はこんな事を他の人にたっくさんしたものね?結果オーライだわ」
ピッチングマシンから次々放たれるボール。
それらが全て花音の顔面に直撃する。
「へぶ!ゴハ!…いひゃい!いひゃい!やめへ!」
「あら?歯が折れて何言ってるのか分からないわ」
そう言って紫苑は一度ピッチングマシンの電源を消す。
その光景にホッとする花音。これで終わりと思っていた。だが
「え?」
突如魔法少女に変身した紫苑改めてバイオレットが魔法を発動すると後ろに立てかけていた鉄バットが4本空中に浮かんだ。
「何ホッとしているのかしら?これで終わりではないわよ?」
そう言うと4本の鉄バットが花音の縛り付けられた四肢に向かって飛んでいく。
それを見た花音はサッと顔を青くさせた。
「やめへ!やめへ!」
「だから何言ってるのか分からないわよ。じゃあスタート」
そう言ってバイオレットが指を鳴らすとバットがそれぞれの腕と足をとんでもないスピードで殴打し始めた。
「あああああああ!」
あまりの苦痛に花音は叫び声を上げる。
「一日で情けないわね?一応言っとくけど助けは来ないわよ?それに昨日のテレビの影響で貴方方の人気はどん底で寧ろ嫌われ者。
そしたら便乗して貴方の暴力や暴言を言われた動画?沢山出回ってるのよ?
大方貴方が変身できないって知ったからやっと証拠を放出できると考えたのでしょうね。
だって変身貴方なら平気で相手を殺せるでしょ?」
「あばぁ!いだいいだい!」
鼻血や汗、涙に涎と顔からでる汁を撒き散らかした苦痛の顔で叫ぶ花音を前にバイオレットは美しい顔を無表情にしている。
◇
そして数時間後…
花音は白目を剥いてだらりと体から力を抜いた。その手足は沢山殴打されて皮が捲れ上がり肉や血が剥き出し。骨も折れていて、やっと繋がってる状態である。
顔も元々の可愛らしい顔の面影はなくボコボコに腫れ上がり血が滲んでいる。歯も全て折れていた。
「あらあら?随分変わったわね?でもその方が貴方にはお似合いよね」
冷ややかな目を向けるバイオレット。するとそこにバロンがボンッと煙を立てて現れた。
「…これは…中々ですね」
「あら?でも一日で済んだのだからいいでしょう?この苦しみやそれに対する不安をケチャップは抱えていたんだから私の方が優しいわ」
「…そうですか…姫様この後のご予定は」
「今日は疲れたから一度休もうかしらね」
そう言ってバイオレットは魔法を発動して転移ゲートを開き夢の国に帰った。
…花音は放置して…。
登場人物
ミルキーレッド
変身者は赤松花音。元々の性格は明るくて活発であり男前な性格。ピンキーに続く二人目の魔法少女。ソフトボールをこよなく愛していたが、チヤホヤされまくった末に他のメンバー同様に調子に乗りすぎて暴君とかした。暴力性が高くあまり深く考えない欠点がある。
バイオレットに復讐された。
ケチャップ
一人称はおれっちで語尾に「ップ」をつける元レッドのパートナー妖精で元々は花音と仲良くしていたが次第におかしくなった彼女に虐待される様になる。
性格は食いしん坊でムードメーカーだが今回の件で泣き虫かつよく過呼吸になる様になった。