第九話 最後の準備
性的表現を匂わせる部分あります。(少し男同士の部分もある)のでそういうのダメという方はご了承下さい
「では開始するわよ。早速お茶を淹れて?」
「…承知しました」
バイオレットの合図に雪音は早速お茶を淹れ始めた。記憶を辿りながら少しずつ。しかし
突如雪音のお尻を誰かに触られた。
「ひあ!」
「雪音嬢…中学生だというのに何てけしからん格好を…」
「す…好きでこんな格好をしてるわけでは!いた…」
「ご主人様にその口の聞き方は何?」
雪音の尻を触ったのはバイオレットの連れてきた男のうちの一人。そしてそんな男に怒り出す雪音だがバイオレットに髪を掴まれ痛みから涙を出している。
「おかしいではありませんか!どうして誰も止めないの!?暴力やセクハラを受けてるのに…何で!」
すると雪音の耳元でバイオレットが囁く。
「私が純粋な善人を連れてくると思う?」
「へ…」
「この人達はね?貴方みたいなきれーいな女の子の顔が苦痛で歪むの大好きな人ばかりよ♡
それに加えて…バロンにお願いしてこの人達の汚ーいお金の出所とか諸々調べてお願いしてるもの。ま!寧ろ貴方のこんな姿見れて喜んでるけどね?」
雪音はサッと顔を青くさせた。みると確かに雪音の歪んだ顔に更に興奮して恍惚の笑みを浮かべている者ばかりである。
「大体!お父様が黙ってるわけが!」
「何言ってるの?貴方捨てられたのよ?」
「は…?」
「だから絶縁されたの。貴方の所業のせいで会社の評判は地に落ちてるのよ?寧ろ邪魔でしかないじゃない」
「う…え?」
「まぁ貴方には同情してあげる。貴方のお父様も薄情ね。でも後継のお姉様がいるし貴方みたいな汚れを落とせるから万々歳かしら…」
雪音は絶望に染まる。更に
「あら?」
窓の外をみると苺の後ろ姿がある。逃げた様だ。
「苺が逃げたか…やっぱりあの子は最低のクズね」
バイオレットは更に顔を歪ませてぎりっと唇を噛む。
その顔は今までの四人を見る目よりも敵意に満ちていた。
「皆さん?そっちの少女は何しても構いませんよ。私はあの子を追いかけるので」
「え?ま…待って…」
雪音は縋るような目でバイオレットの腕を掴む。まだここにバイオレットがいるからいいがもし仮に彼女がいなくなったら…この男達が自分に何をするのか…。考えるだけで悍ましくて震えていた。
しかしバイオレットは無常にも彼女の手を振り払う。
「バカじゃない?」
「…あ…」
「仲間にもお父様からも見捨てられて会社の令嬢でもなく誰からも必要とされてない貴方の命に価値なんてあるの?
ていうか私に助けを求めないで。貴方が散々痛めつけた人達は貴方の権力に屈して助けも呼べなかったのよ?ねえ?一つ聞いていい?
何で貴方は生まれてきたの?」
その言葉に雪音は顔を真っ白にさせて手を離した。
バイオレットはすぐに苺を追いかけに向かう。
◇
「あ…」
その後ろ姿を雪音は呆然と見つめていた。体が動かない。言葉もあ…しか言えない。
そんな雪音に男達がハァハァと荒い息を吐きながら群がる。
雪音は今までのプライドも地位も崩れ去る音を確かに聞きながら黙ってその屈辱を受け入れていた。
◇
その頃苺は
「ハァハァ!やっと逃げれた!」
全速力で逃げていた。雪音への復讐タイムにて合図を送られたと同時に逃げた苺。雪音の事などさっぱり考えてなどいない。
実は苺は雪音に置いてかれた直後に何者かに誘拐されたのである。その犯人はバイオレットである。
バイオレットはいち早く彼女をログハウスに連れて行き閉じ込め出たら殺すと脅迫までしてきたのである。
何しろ相手には人を殺しかねない力がまだ残ってるのだ。
「ハァハァ…此処まで来れば…」
「大丈夫だと思ったの?」
しかし逃げた先にいたのは変身を解いた紫苑である。苺は急ブレーキをかけて踏みとどまる。
「な…何でよ!合図送った後に逃げればセーフじゃなかったの!?」
「セーフ?安全に帰すなんて誰が一言でも言ったの?これは貴方の人間性を試しただけよ?」
「そ…そんなの合格でしょ!?私達は世界の救世主なんだから!」
「世界の救世主様は仲間を平気で見捨てるし、仲間の親でも関係なく殺すし仲間の住んでる場所も破壊するし、婚約者をうばってもいいなんてね?
しかも仲間が自分の父親に最低な事されてもOKなのね。知らなかったわ」
その言葉に苺はギクリと震えた。
「私達がまだ仲間もどきだった頃。私は貴方のお家に居候させて貰ったわよね?それで貴方の部屋で共に過ごして…私は貴方を一番の親友と疑ってなかったわ。けどね」
◇
紫苑は思い出していた。自分が桃井家に居候してた記憶。
最初好印象だった。苺自身の事も友人として好きだったしその両親も本当の娘のように紫苑に優しくしてくれた。
だがいつからか…苺の父親が徐々に紫苑を娘の友人ではなく一人の女として見始めたのは…。
最初は勘違いと思っていた。だが時折紫苑がお風呂に入っていると風呂の扉をいきなり開けて
"間違えた。ごめんな?"と申し訳なさそうに謝るなんて事が徐々に増え始めていた。
そしてことあるごとに紫苑に対してのボディタッチも増えていき始めた。その頃から紫苑は何とも言えない不快感を感じ始めた。
だから距離を置いていたが、ある時たまたま夜に紫苑がトイレに行って部屋に戻ろうとすると突然何者かに引っ張られてソファに押し倒された。
そこにいたのは苺の父親である。叫ぼうにも口を手で塞がれて叫べない。
"ハァハァ…紫苑ちゃん。すまないね…おじさん君があまりに綺麗でいい子だから…好きになってしまったんだ…"
そう言いながら紫苑のパジャマを破く苺父。紫苑はもがくが上手くいかない。そんな時にだ…。
ふと視線を苺父の後ろの方にやるとそこにいたのは水を飲みにきていた苺である。
苺はこちらを汗を垂らしながら眺めていた。そんな苺と目があってんーんーともがきながら助けをこうが…
◇
「貴方あの時無視したわよね?」
「そ…それは…」
「何?言いたいことあんならはっきり言ったら?それに確かその内容を私の元婚約者に私の方が誘ってたって嘘ついてたわよね?」
紫苑はキツく睨みつける。
あの時紫苑の帰りが遅いのを気にしてたバロンとモモがやってきてその惨事を見てすぐさま苺父に体当たりしたから難を逃れた。あの後は怖くて怖くて…そのまま夢の国に帰国したのを覚えている。
その後もあの家に戻りたくなくて実家に戻ったと告げた。だが桃井家に買い与えられたスマホには苺父からの気持ちの悪い告白が綴られて…
今は全てブロックしメッセージも全て削除したので何もないものの。矢張り見ると吐き気がしてくる。
だが今回の復讐であえて使おうと考えそのまま持ち続けている。携帯料金は苺母に実家に行くことを告げて口座を変えて貰ったので問題はない。
「だ…だって事を大きくしたらパパとママが離婚するかもだし…」
「私のお母様を殺しておいて?最低ね…」
「殺した!?ちょっと待ってよ!そんな事してない!」
「貴方達の攻撃を受けたのと貴方達を追い払うので全ての力を使ったのよ!
しかも最後に攻撃したのも貴方だし追い払われるのを1番抵抗してたのも貴方よね?」
暗にトドメを指したのはお前だと告げる。しかし苺は認めない。
「違う…違う!」
「何が違うの?貴方確か始まりの魔法少女とかで魔法少女六人で一番の人気者だったものね。それに夢の国に行けなくなったら私の元婚約者であり貴方の彼氏様に会えなくなるものね」
「あう…」
次々と言われる図星の言葉に苺は黙り込んだ。しかし紫苑は止まらない。
紫苑は自身のスマホを取り出して苺に渡した。
「この動画見てみて?」
「え…」
その瞬間苺は衝撃を受けていた。
◇
『がぁぁぁあ!や…やべ!やべでぐれぇ!』
『ウルセェ!うちの姫さんにこういう事したかったんだろ!オラ!』
そこに写ってるのは裸で絶叫する苺の父とそんな父にとんでもないことをしている大男である。
◇
「は…?」
「貴方のお父さん。私にしたかった事を他の人にされているのよ。ふふふよかったわね」
「ひ…酷いよ…幾ら何でも!こんなの変だよ!」
「じゃあ貴方はあの時私が貴方のお父様にこういう事されても問題ないけど、自分の家族の場合のみ問題ありにしたいの?」
「さっきから揚げ足ばっかり取らないでよ!」
苺はガタガタ震えながら涙を流して紫苑を見るが紫苑はクスクス笑うのみ。それどころか…
「あと貴方のお母様に貴方のお父様がしでかしたことと貴方がしたことぜーんぶ報告したわ。お母様はまともだから助かるわぁ」
「ハァ!?何してんのよアンタ!ふざけんなこんなの知られたら私の家族めちゃくちゃじゃない!」
「人の家庭を踏み潰した貴方がそれいうの?」
苺はフーフーと息を荒くしながら紫苑を睨む。
「五月蠅い五月蝿い五月蝿い!貴方何様よ!最初っからアンタのこと気に入らなかったのよ!
私みたいな何にもない平凡な女の子が魔法少女になって始まりの魔法少女って言われて…こんなにみんなにチヤホヤされたことなんてなかった!
なのにアンタは!生まれた時からお姫様で美人で私にはないものをたくさん持ってるくせに!少しぐらい私にくれたっていいじゃん!少しぐらいアンタの幸せが削れたっていいじゃん!
しかも六人目のミステリアスキャラで私の人気を追い抜こうとするし!
正直ざまぁみろよ!アンタみたいな偉そうな女が屈辱的な目に遭ってるなんて最高でしかないわ!」
「…言いたいのはそれだけ?」
しかし苺の咆哮等寝耳に水の紫苑は何やらスマホを操作し始めた。
「ねぇ!?何無視してスマホいじってんの!?」
「ふぅ…ねぇ?貴方達の人気が最初よりガクンと落ちたのは知ってるわよね。
けどどうしてもそれだけじゃ足りないの。心愛も雪音もそう…。変な人とはいえまだまだファンが残ってる」
紫苑の言いたいことが分からない苺は首を傾げる。
「もしも…世界の誰もが貴方達…特に貴方の敵になったら…面白いじゃない?」
その言葉に苺はえ…と声を上げた。紫苑はそんな苺を無視してスマホで電話を掛けた。
「もしもし?あらあらごめんなさいね?お楽しみなのに。雪音は?あらそう。マグロで意外とつまらない?
へぇ?ならここに雪音よりは容姿もスタイルも劣るけどイキの良い女の子がいるわよ?どう?」
その言葉に苺は何故か背筋が冷たくなった。
「ま…まって…何言ってんの?」
「あー!そうそう。この子の方が貴方達と是非そう言う事したいって申し出よ。煮るなり焼くなり好きにして良いわ」
そう言ってピッとスマホを切る。
すると紫苑はちゃっちゃとバイオレットに変身して雪音を連れてきた時と同様の鎖を出して苺を拘束する。
「んな…!何を!」
「安心して?ちょっと気持ちよーくしてもらうだけだから♡」
そう言うとバイオレットは苺を放置して少し遠いところへ離れていく。
苺の耳には男達の声と足音が聞こえてきて。
その様子をバイオレットはニヤリと意地悪な笑みを浮かべて眺めていた。
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