プロローグ
今作は暴力描写が多いので苦手な方はお控えください。
それと少し可愛いマスコットへの虐待描写もあるのでご注意を…勿論最後は保護しますが…
それはとある日の日本の人気番組で起きた出来事である。時間はゴールデンタイムの視聴者が多い時間帯。毎週日曜日に放送される情報番組であり、今のトレンドの紹介や豆知識などなど多種多様な情報を掘り下げていく。
番組では有名人を招いては芸能人同士で楽しいトークやミニゲームを行う。お笑い芸人のキレッキレのボケやツッコミもより番組を面白くするスパイスである。
番組が始まった最初はまだ普通の番組であった。
『さぁ!日曜日のこの時間は!"掘り下げSHOWTIME"のお時間です!司会はいつもの如く私宮田が行っていきますので最後まで楽しんで下さいね』
番組MCがそう宣言すると番組の出演者がわーと声を出して拍手する。此処まではまずまず皆んなが一度は見たことある様な光景である。
問題はここからだ。
『本日はとんでもないスペシャルゲストが来てくださいました!皆さん?誰だと思いますか?』
MCの質問に出演者達は積極的に発言する。中には面白い回答で番組で爆笑の渦に巻き込んだりと中々明るい雰囲気でのスタートだ。
しかし出演者達の答えは全て外れていた。
『残念!時間切れで御座います!では正解を発表します!ゲストは…この方々です!』
MCがそう宣言すると突如会場に5色の光が出現した。出演者達や番組スタッフはそんな光景に目を奪われていた。
5色の光の降り立つ場所にはいつの間にやらファンシーな格好をした五人の少女が立っていた。そして少女達はビシッとポーズをとり…
『みんなの笑顔は私たちが守る!魔法少女!マジカルミルキー!…皆んな♡大好きだよ♡』
そう言って決め台詞を言うと出演者や観客達は歓声や驚愕の声をあげて拍手した。
『本日のゲストは!今話題の世界の救世主であるマジカルミルキーの皆さんです!』
MCが声高々に宣言すると会場がヒートアップした。
有名な芸能人でも政治家でもスポーツ選手でもない…現実では到底ありえないはずの魔法少女という存在。この世界に住む人々は皆んなそう思っていたのだ。
彼女達が現れるまでは…
◇
それは遡ること一年程前の事だ。突如人間が怪物と化して人々に襲いかかるという謎の現象が起きたのである。
怪物となった人間は姿を変形させ、理性を失い攻撃性が増すのである。人々はこの謎の現象に驚きを隠せないでいた。
しかしそんな怪物出現と同時に突如そんな事態を終息させようと立ち上がった者がいた。
それが彼女達"マジカルミルキー"である。
マジカルミルキー…。彼女達は超人的な身体能力と謎のビームを発射したりして戦う魔法少女である。最初の事件ではまだ一人しかいなかった魔法少女。最初はマジカルミルキーのセンターにいる桃色担当"マジカルピンキー"だけであった。
しかしそこから少しずつ着実に魔法少女は増えていった。
青担当の"ミルキーブルー"。
赤担当の"ミルキーレッド"。
黄担当の"ミルキーイエロー"。
緑担当の"ミルキーグリーン"。
そして実はもう一人…紫担当の"ミルキーバイオレット"がいた。
バイオレット以外の五人の魔法少女達は今回の怪物について重い口を開いてくれたのである。
実は今回の怪物達は人間の負の感情を爆発させてその人間に関わりの深い物と合体させられて体が変形したらしいのである。
そしてそれをしたのは"エビル"という集団である。エビル達は生物に宿る生命エネルギーと負のエネルギーを集める為に今回の騒動を引き起こしたのだという。
今回はそんな彼女達の戦いの詳細や敵グループについての詳細を番組で放送しようというのが目的である。
彼女達の功績もそうだが、そのファンシーな格好は女児に人気であり経済効果に多大な影響をもたらしている。故に彼女達は世間の人気者であり、番組などでは引っ張りだこである。
しかもバイオレット以外の五人は何を思ったのか自身の素顔まで公開して学校でも人気者。
彼女達はやはりまだ中学生ぐらいの少女であった…。
◇
因みに今回番組に出演したのはバイオレット以外の五人のみである。
五人は用意された豪華な其々のテーマカラーの椅子に座りこんだ。そしてMCの質問に次々と答えていく。
『成程…成程!いやぁ!しかし皆さんねぇ中々可愛らしい服装をしてますね』
『えへへ♡少し派手かなぁと思うんですけどね。少し恥ずかしいけどこれも正義のためなので♡』
えへへと笑いながら代表して答えるピンキー。本名"桃井 苺"。
マジカルミルキーの一番最初のメンバーである。
『私元々勉強も運動も普通の中学生だったんです。だからまさか世界を救うなんて思っても見ませんでした♡』
『ほへぇ…。いやぁしかし立派ですよ!まだお若いのにあんな怪物に挑んで…』
『ふふ♡だって正義の為です…』
そう口にしようとすると突如ピンキーの変身が解かれた。
『へ?』
ピンキー改め苺は自身の格好を見た。
私服姿になり顔もすっぴん。そして髪の毛も変身状態ではスーパーロングなピンクなツインテであったが、今は短い赤毛のピッグテール。
服装も先程のフリルとリボンいっぱいの服ではなく、ブランド物の到底中学生には買えない服を着ていた。
周りはどよめき始めた。
『ピンキーさん?番組はまだ…』
MCも焦った何せ今回のテレビは生放送なのである。とんでもない放送事故だ。
『いや…私は何も…ってえ!皆んなどうしたの!?』
苺が周りを見渡すと他の四人もそれぞれ私服に元の髪型に戻っていた。魔法少女達は大いに焦っていた。
『一体…何が…』
『一旦!CM挟みます!』
スタッフは急いでCMを流した。
◇
CMが流れてる間。プロデューサーが五人に詰め寄った。
「一体どうなってるの?君達は変身した姿で登場する約束でしょ?」
カンカンに怒るプロデューサー。すると
「うるせーんだよ…クソジジイ」
ちっと舌打ちした苺。周りのメンバーもうわぁとかキモっとか言ってプロデューサーに悪意を振り撒く。
そんな様子にスタッフは顔を強張らせた。
「あのさ?私達は世界を救った救世主なんですけど?私らいなかったらあんたらどうなってた?死んでかもしれないんだよ?
そんな私達に説教とか…ふざけてんの?おっさん?」
苺はプロデューサーを睨みつけて中指を立てている。スタッフ達。そして共演者は怯えていた。
「そうですわ。それ以上文句を仰るならお父様に頼んで貴方を社会的に潰すことも可能ですのよ♡」
そう言って微笑むのはブルーこと"西園寺 雪音"。大企業である西園寺グループのご令嬢である。
青みがかった黒髪のロングヘアに真っ白な肌と大きなそして吊り目の青い瞳が特徴的な美少女。ハイブランドの白いワンピースとシルバーアクセをつけてご満悦な様子である。
西園寺グループはこの番組のスポンサーもしている。敵に回すと厄介である。
他のメンバーもうんうんと頷きニヤニヤとやらしい笑みを浮かべている。
これが今現在のマジカルミルキーの本当の姿である。
彼女達は元々は普通の女子中学生であった。だが突然謎の妖精と出会して魔法少女となり敵を倒して英雄になるという非現実な経験をし、そして更には周りからはチヤホヤされるは、テレビや動画でも話題に取り上げられて収益も入りウハウハ。
彼女達が調子に乗るのは時間の問題だったのである。そして今現在此処まで至る訳である。
「てか変身解けたのウチらのせいじゃないんですけど?」
「そうだよぉ♡ねぇねぇこれってお仕置きが必要だよねぇ♡」
「それもそうですね。早速役立たずの実験動物達に指示しなければ」
上から
レッドこと"赤松 花音"。
イエローこと"黄島 心愛"。
そしてグリーンこと"四葉 緑"。
其々花音はボーイッシュなパンツスタイルにショートカットの赤毛に健康的な小麦の肌を持つ快活な少女。
心愛は花音と対照的に女の子らしいスカートスタイル。金髪のツーサイドアップのロングヘアが揺れる小柄であどけない少女。
そして緑の方は緑がかった黒髪を三つ編みにして黒縁眼鏡をかけた知的な少女。服装も大人っぽくおとなしめなワンピースを着ている。
彼女達は其々思い当たる節があるのか何かにイラついていた。スタッフや共演者も何かを察して止めに入る者もいた。
「待ってください!彼らは貴方方のパートナーでしょ!?これ以上は流石に!きゃ!」
止めに入った女性スタッフを苺が思いっきり突き飛ばしてスタッフは尻餅をついた。
「だーかーらー?指図してんじゃねーよ!いい?私らとアンタらじゃ格が違うのよ。
皆んな!こんなバカな大人なんか無視していくよ!」
そう言って苺が歩くと他のメンバーもついていく。残されたスタッフや共演者がどんな顔をしているのかなんて考えずに…。
しかしそんな様子をじっと隠れて見ている者がいた。
「…最低ね。ま…これだから復讐のしがいがあるんだけどね?」
「そうですね。…許さんぞ…」
用語
◯魔法少女マジカルミルキー
一年前に現れた怪物達を倒して世界の救世主となった六人組の少女。そのファンシーな服装もあって女児や大きなお友達に大人気であり多大な経済効果を与えている。その人気は衰えないが、それが少女達の心を歪ませてしまった。