第一話
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近年のストーカー相談件数は約二千四百件にも及ぶそうだ。それでも、ストーカー規制法で注意、警告、禁止命令、検挙という法整備のおかげか、減少傾向にある――とは、言い難いらしい。
増加と減少を繰り返しているのが現状のようで、少ない年もあれば、多い年もある。それでも少ない年でも相談件数は千四百件ほどあるという。
もちろん、これはあくまで統計で、相談されていない事例も含めれば――つまり表面化されていない事案も含めれば、とてもじゃないが根絶できるとは言えないのかもしれない。
相談者の性別はほとんどが女性であり、男性は多くて四百件程度。
男性は力が強いから相談しづらいという部分で少ないのか、そもそも女性がストーキングする例が少ないのかは判然としない。
どちらにせよ男女ともに被害に遭っていることに違いはないのだ。
相談者は年代的には二十代がもっとも多く、行為者は元交際相手がほとんどで四十六パーセント。
ちなみにストーカーの平均年齢は二十代から三十代がもっとも多いようで、二十代が約五百四十、三十代はなんと約六百人にもなるという。
過ぎたるは猶及ばざるが如しなんて言葉は、恋愛ごとにも有用みたいだ。
他の相談者、被害者の内訳としては元配偶者、知人や職場の人間などが挙げられる。
ストーカー行為というのは、つきまとい、交際等の要求、強要。監視に乱暴な言動、汚物送付、名誉の損害、性的羞恥心の侵害、行為形態。
ストーカーだけは、時代に取り残されたかのように似たような行動をする――と、簡単に言ってしまいたいところだが、現状、被害を受けている人間いるのだから笑えない。
女も男も関係なく、そういった精神的な恐怖は心を摩耗させる。
そしてそれらは誰もが他人事ではない。この病んだ世界で、誰だって当事者になることがある。
被害者にも、加害者にも――なり得るのだから。
◇◆
久乃木 瑠璃、十九歳。男。
金髪を短く刈って、左の下唇の端にはシルバーのラブレットスタッド・ピアス、分かりやすく言えば玉状のピアスがひとつ刺さっている。1.6ミリほどの大きさである。右耳には三連のリングピアス。
右手の甲にはドクロに絡みついた蛇がハートを描き、その胴体をドクロが噛みついてるワンポイト・タトゥー。
俺の中で一番高価なものは少ない貯金をはたいて買ったお気に入りのストーン・アイランドの黒いキャップ。最近はこいつをいつも被っている。
セール品で買った半袖のビッグTと黒のスキニー、中古のティンバーのブーツ。とまあ、相変わらずの格好。
服のレパートリーを考えても面倒で金が飛ぶから、似たような服ばかり買ってしまうのは俺の悪い癖だ。
相変わらず池袋のへいわ通りのボロアパートに居を構えて、ろくでもない毎日を送っている。
今回、相談に来たのは――独りよがりな愛を振り回すエゴの塊のようなストーカー、不幸にもそんなやつに狙われたメイドカフェのお姫さまだ。
歪んでねじれて渦巻いた愛情ほど厄介なものはない、そんな話である。




