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漫然と
40年、周囲から目立たずに幼虫は目の前にある葉を食べていた。自分の足場であることも知らず。次第にそこは窮屈になっていった。漫然と生きることを本能は望んでいた。未来など気づかないフリをしていた。
実際に自分の目で見たもの、見えるものしか信じない。
それは間違っていると思わなかった。思うしかなかった。
ふと見上げた。そこには日光に反射した鱗粉を纏う、美しい蝶がヒラヒラと舞っていた。
飛べたらいいのにな、そう思った。
新宿、冬。朝10時。
自然光の前で雑踏は身を潜めていた。
時期も手伝って、ネオンたちが冬眠しているようにみえた。
安心しろ私も冬眠中だ。
天下の新宿に対して憐憫はいらないなと思うと同時に、憐憫がほしいのは私なのだと気づき白い息とともに苦笑いが浮かぶ。
お前は半日後には妖艶な姿を見せるんだからまだましか。
反論などしてこない天下の新宿を「お前」と擬人化してえらそうにしている自分に再び白い息と口角があがる。
これじゃあ苦笑いの金太郎飴だ。
また、苦笑いがこぼれそうな自分を踏み止める。




