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第3話少年は寝床を手に入れ、寝た

 リオが風呂でメイドと戯れてる頃、アッシュとコローナはアッシュの私室で向かい合って、馬車での出来事を話していた。

 

「それで、いったいあの少年はなんなんだ?」

 

 アッシュの問いかけに、コローナはそれは私が知りたいと内心愚痴る。

 確かにそれなりに情報を持っているが、まさか黒い扉から出てきたのが年端もいかぬ子供だとは思わなかった。


「あの子については知りませんが、あの黒い扉は魔法によって現れたものです」

「あんだけ禍々しい魔力を放ってんだ。魔法以外の何ものでもないだろうな。それで?」

「詳しくは話せませんが、あれが残り続けた場合は色々と問題がありましたが、消えてしまったので、これ以上問題が起こることはないかと」


 成る程とアッシュは頷き、話せないなら後は自分で調べる事にしようと、黒い扉についての話しはここまでにした。

 

「あの少年については? どうやら本人も不思議がっていたが? まあ、害意は無さそうだから良いが、あの腕の模様は気になるな」

「あの子については私も何が何やら・・・見た限りですと魔力も殆ど無さそうですし孤児院にでも放り込めばどうですか?」

 

 最もその場合は”ある貴族”が養子にするだろうと内心で呟く。


「本人も孤児だと言ってるし、それでも良いが。俺も良い歳だし、いっその事俺の養子にでもしようかと考えているのだが、どうだ?」

「不要な危険を抱え込むのは、馬鹿がする事かと愚考します」


 そうなった場合ある貴族がアッシュや自分にちょっかいをかけてくるのを知っているので、コローナは表情には出さずアッシュを罵倒した。

 もしアッシュが養子にしようものなら、間違いなく仕事が増えるのは目に見えている。

 

「下手に外に出して問題が起きた場合。結局俺らが責任を問われるのだから、先に抱え込んでしまった方が良くないか?」


 名案だと言わんばかりにアッシュは言うが、コローナとしては、それは貴方が”あの方”の事を知らないからだと声を大にして言いたい。

 だが、どこに耳があるか分からないので、グッと堪える。

 

「そうは言いますが、団長に子育てなんて出来るんですか?」

「メイドも居るし、多少面倒を見た後は学園都市に向かわせれば良い。俺が結婚でもすれば適当に功績をやって独立させれば問題も無くなる」

「私にこれ以上仕事が来ないのでしたら何も言いませんが、絶対に、私に縋らないで下さいね?」


 コローナは諦め気味に答えるが、これから先の事を考えると故郷に帰りたくなっていた。

 何時の間にか一枚の書状をアッシュは書き終え、それをコローナに渡たす。

 

「これを宰相の爺さんに渡してくれ。一応明日の午後辺りに俺も向かうが、何か問題が起きたら早めに教えてくれ」

「分かりましたが、今日の仕事はどうする気ですか?」

 

 アッシュはソファーから立ち上がり、窓を開けてコローナの方に振り向く。

 その顔は清々しい程晴れやかであり、仕事が終わった後の様な笑顔であった。

 

「任せた!」

 

 コローナは力任せにアッシュの頬を殴ると、魔法を唱えて窓から飛び降りて行った。


 殴られた頬を擦りながら、アッシュはリオにどう説明するか考える。

 コローナに語った事はアッシュの本心でもあり、最近増えてきた結婚しろコールに対する手でもあった。

 

 それに、リオから感じられる魔力があまりにも微弱なため、心配だからという面もある。

 もしかしたら魔力を隠している可能性もあるが、それを加味しても少なすぎる。

 腕の魔力紋も気にはなるが、今は様子見するしかないだろうと、考えを纏める。


 机の上に残っている書類を片付けてしまおうと思い、椅子に座ると扉を叩く音が聞こえ、間の悪い事だと思いながら返事をした。

 

 メイドが扉を開け、リオを入室させた後に、扉を閉める。

 

「随分と見違えたな。先ずはそこに座ってくれ」

 

 レオは言われるがままソファーに座り、アッシュの方を向いた。

 一緒に屋敷に入ったはずのコローナが居なくなっており、首を傾げた。

 

「君にも色々と事情があるだろうが、自分が置かれている状態は理解してるかい?」

「突如として現れた謎の危険人物って所ですかね?」

「まあ、そんなところだな」

 

 アッシュが自己紹介の時に言ったヴァルベルグ王国などリオは知らず、アッシュの私室に向かうまでに見た調度品はリオが知っているどの国の物とも違った。


 世界中を駆け巡ったはずの自分が知らない国がある事もそうだが、街もリオが知っている風景とは全く違っており、疑問に思う。

 知識の一部が幾つが答えを出すが、リオとしてはあまり考えたくないものであった。

 

 それはここが別の世界であるか、リオの時代より過去か未来かであることだ。

 だが、ここで考えを改める。もしもリオの考え通りなら、リオが捕まる可能性がほぼ無くなるからだ。


 とは言ったもののまだ確定出来るほど情報が無いので一旦保留にした。

 

「俺はこれからどうなるんですか?」

「一先ず俺の所で預かろうと思う。その方がリオにとっても良いと思うのだがどうだろうか?」

 

 それは確かにありがたいことだ。何も知らないまま放り出されるより、少しでも知識を蓄えてからの方が何をするにも良い。


 リオはそう考え、軽く頷く。

 

「それは有難いけど、良いんですか?」

「こちらとしては、野放しにした結果、後々問題を起こされるより暫く近場に居てもらった方が、都合が良いからな」

 

 言われてみればそうだなと、リオは再び頷づく。

 リオとしては問題を起こす気はないが、だからと言って問題が起こらないとは限らない。


 問題とは、常に向こうからやってくるものだ。

 

「でしたら暫くの間お願いします」

「それは何よりだ。何か聞きたい事とかあるか?」

 丁度良いと思い、リオは最も知りたかった事を聞くことにした。

「”神を名乗る者の事って何か知ってますか?」

「随分と昔の事を聞くんだな」

「昔?」

「ああ。絵本になる位には有名な話だが、今からだと大体千年程前に世界を滅亡の寸前まで追いやった者だろう? 最後は所説あるが、大体は誰かが倒して平和になりましたって話だ」

 

 リオは自分の考えが当たっていたことに目を見開いて驚いた。

 だが、まさか千年も前の出来事だとは思わなかった。


 千年も経ってれば自分の知らない国があるのは不思議ではない。

 だが、向こうの世界で千年も戦っていたのかと問われれば、流石にそこまでは戦っていないと答えられる……はずだ。

 時間の流れが違っていたのだろうと思う事にする。


「何をそんなに驚いているか分からないが、それが聞きたかった事か?」

「一応はそうですね。後、これから俺はどうすれば良いですか?」

「今日はゆっくりと過ごしてもらうとして、明日は俺と共に行動してもらうことになるだろうな。相手の返事次第だが、明日は王城に行くことになるだろう」

 

 あまり敷居の高い場所は苦手だが、状況が状況のため、頷くしかなかった。


「屋敷から出なければ今日は自由にしてもらって構わない。何かあったらそこらに居るメイドに聞いてくれれば良い。とりあえず、ゆっくりと休んでくれ」


 アッシュとの会話を終え、扉を開けると先程案内してくれたメイドが控えており、リオを客室まで案内する。

 客室に入るとそのままベットに倒れこみ、これからどうするかと考えてる内に、何時の間にかリオは眠ってしまった。

 

 夕飯時にメイドが起こしに来るが、リオは全く起きず。

 メイドはにこやかに微笑んで、リオが眠っている様を眺めてからアッシュに報告するため、そっと扉を閉めて部屋を出て行った。


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