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第20話前途多難だった旅路

「ここが学園都市か。想像以上だな」

 

 リオは学園都市の門を前にしてそう呟いた。ボロボロな姿で。

 そしてその隣にはフィロソフィアもキャロルも居なかった。

 

 時間も早いため、リオ以外に門を通ろうとしている者は誰もおらず、リオの姿に気づいた門番がリオの元に駈け寄って来た。

 

「どうしたんだ君! そんなボロボロな姿で!」

 

 駆け寄って来た門番はリオの姿をまじまじと見てから警戒するように辺りを見渡した。

 

「周りには何も居なさそうだな。身体は大丈夫かい?」

「大丈夫です。見た目はこんなんですが怪我とかは無いので」

 

 リオは大丈夫な事を知らせる様に両手を振った。

 門番はフムっと頷くと、門番はリオを連れて詰所へと向かうことにした。 

 門番は他の門番に声を掛けて詰所の一室を借り、その中で机を挟んでリオと向かい合って座った。


 リオは部屋の中を見て、昔尋問の為に入れられた部屋を思い出した。その時は話し合いではここを出してもらえず、最終的に全員を昏睡させて逃走した。

 

「先ずは通行証か何か身分を証明できるものは持ってるか?」

 

 そう聞かれて我に返ったリオは何とか燃やされずに済んだカバンからアッシュから渡された書類を門番に渡した。

 

「アッシュ騎士団長と宰相様からの推薦でしたか。因みに何故ボロボロな姿だったのですか? それに、推薦を考えますと御付きの者などは?」

 

 確かにリオが王都を出る時は三人揃って出て行った。

 

 だが、フィロソフィアの提案とキャロルの暴走。更に偶然現れたモンスターとそれによって壊滅寸前になっていた村を救う為に頑張った結果、リオは村人から追われモンスターに追われ、フィロソフィア達から笑われ何とか学園都市に来ることが出来た。


 だがそんな事を馬鹿正直に話した所で信じてもらえる分けがない。

 

 なのでカバーストーリーを考えなければならないが、生憎リオはそういうのを考えるのが苦手であった。

 だからと言って何も答えなければ怪しまれてしまうのでどうにかして誤魔化すしかない。

 

「こっ……転びました」

「はぁ~?」


 門番は小馬鹿にする様に鼻で笑い、まじまじとリオを見た。

 

 リオがどれ位ボロボロかと言うと服は殆ど破れており、ズボンもホットパンツレベルまで短くなっていた。勿論靴など履いて無く、体のあちこちに血が付着していた。

 その状態の原因を転んだと言われれば鼻で笑われるのも仕方ない。

 

「まあ何か話せない理由があるのかもしれないが。君をそんな目に遭わせた相手がどうなったか位は話してもらえないか?」

 

 因みに二人は既に学園都市には到着しており、学園指定の宿で休んでいる。

 モンスターの方もフィロソフィアがサクッと倒してしまっている。

 リオもモンスター程度軽く倒せる程の強さはあるのだが、フィロソフィアが居れば大体如何にかしてくれるだろうと言う気持ちと、なるべく戦いをしたくない気持ちもあって逃げ回っていた。


 リオは、モンスターはどうせフィロソフィアかキャロルが倒しただろうと思っているので、リオを追っていた相手であるモンスターについては大丈夫だと門番に話した。

 だがリオをボロボロにしたのはモンスターではなく、村人とフィロソフィアである事を話すことはしなかった。


「そうか。嘘っぽい気もするがそこら辺は村に確認を取れば分かるだろう。そんな恰好で出歩かれても困るので、服をあげよう」

 

 門番は部屋から出て行き、数分すると服を一式リオに渡した。 

 少しくたびれているが変な臭いもなく、サイズも問題なく着れた。

 

「ありがとうございます」

「気にするな。先程の書類からして学園の入学希望者だろう? どれに入るかは知らんが、せいぜい頑張れよ」


 リオは門番に礼を言って門を後にした。

 

 先ずは宿の手続きをしたいが、今回フィロソフィアやキャロルと受ける事になっているアブリスタ学院の入学試験が今日なのでそんな時間は無い。

 更に言えばリオはアブリスタ学院の場所を知らないので、先ずはアブリスタ学院を探さなければならない。


 三人で向かう予定であり、学園都市の地理を知らないリオは二人に付いて行けばいいだろうと考えていた。

 なのでリオはアブリスタ学院の場所を知らないのだ。

 門番に聞けば良かったなと思いながら、リオは都心に向かって足を進める事にした。

 リオが門から学園都市に入るとそこそこ人通りも多く、朝の賑わいを感じさせた。


 リオがそのまま大通りを真っすぐ進んで行くと大きな噴水が有る広場にたどり着き、誰かにアブリスタ学院の場所を聞こうと辺りを見渡して居ると、「どうかなされましたか?」と逆に声を掛けられた。

 

 声に驚きながらリオが声のする方に振り向くと、そこには騎士団の制服ではなく、スーツ姿のコローナが居た。

 

「コローナさんおはようございます」

「はい、おはようございます。こんな所でどうしたのですか? キャロル様とフィロソフィア様の姿も見えませんし」


 コローナは辺りを見渡して二人を探すが、見つける事は出来ずにリオに向き直る。

 当たり前だが二人は既に休んでいた宿を出てアブリスタ学院に向かっている。

 

「二人とははぐれてしまいまして……」

「そうでしたか、確かアブリスタ学院を受けるんでしたよね? 私の職場もそちらになりますので一緒に如何ですか?」

 

 リオは渡りに船だと思い、その提案に乗った。これで遅刻せずに行けるだろうと一息つきコローナの後に続いた。

 その後ろ姿は親と子供みたいに見えたと、広場に居たとある学生は語っていた。


 二人がアブリスタ学院に近づくにつれて徐々に年若い者が増えていき、アブリスタ学院の門に着くころには人で溢れる程になっていた。

 リオは歩きながら周りを見渡して、場違い感を感じながらもコローナの後ろを付いてアブリスタ学院の門を潜った。

 

「さて、入学試験はあちらになりますので私は失礼します。試験まではまだ余裕がありますので、あちらの案内人に試験について聞いておくといいと思います」

 

 コローナは頭を小さく頭を下げてアブリスタ学院に向かって歩いて行った。


 リオは先程コローナが言っていた案内人と呼ばれている内の一人に声を掛けてこれから如何すればいいかを聞いた。

 試験内容については知ってはいるものの、流れや正確な時間などは調べていなかった。

 

「少しよろしいでしょうか」

 

 そうリオが案内人に声を掛けると、案内人はリオを見た後に怪訝そうな顔をした。

 

「なんだい君は? ここはアブリスタ学院だよ。君のような格好の者が来る場所じゃないよ」

 

 そう言われてリオは今の服がよれよれの古ぼけた服だった事をを思い出した。このままでは追い出されてしまうので慌ててリオはカバンから推薦状を出して見せた。

 

 案内人は疑うように推薦状を読んでいくと、一度驚くような顔をしてから徐々に顔を青くしていった。

 

「すっ、すみませんでした! 宰相様の推薦とは露知らず・・・・・・何か御用でしょうか?」

 

 案内人の声は大きく、リオに向けられる視線の数が急に増えた。少しだけ居心地悪くなりながらもリオは案内人に試験について聞くことにした。

 

「え~っと、試験の内容や流れを知りたいのですが」


「はい。時間は今から1時間後あちらに見える講堂にて試験の詳しい説明があります。一応試験内容は筆記と実技と面接になります。試験毎に落としていきますので最終的に残るのは大体一~三割程になります。他の詳しい事は講堂にて説明されると思います。また、席については自由となりますので早めに行った方が良いと思いますね」

 この話を周りで聞いていた者はえっ、そうだったのかと驚くような表情をしてから行動の方に足を進めた。

 恐らくフィロソフィアとキャロルは講堂ではなくどこかで寛いでいるのだろうなと思いながら、リオは案内人に礼を言ってから講堂に向かった。


 なるべく目立たない様にしながらリオは講堂に向かうが、周りの者に比べてみすぼらしい姿をしたリオは嫌でも目立っていたが、先程の騒動もあり、リオに話しかけるものは誰も居なかった。


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