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第17話少年は城に侵入する


 念の為にアッシュの屋敷の門に仕掛けていた監視用の使い魔の視界にリオが映り、そのまま飛び出して行く様を見たフィロソフィアは首を傾げた。

 

 一応許可無く屋敷を出てはいけいないリオが何故外に?

 その様に疑問に思いながらリオが跳んで行く方向に使い魔を向け、リオが向かうであろう場所を考える。

 

 「王城……ですかね?」

 

 そう結論を出したフィロソフィアは自分も向かうべきか、このまま放置するか考える。

 もう少し早い時間ならば正面から王城に入れるが、この時間だと正面から入るのは少々微妙だ。

 宰相であるアランは、今日と明日は学園都市に行ってるので、会いに行くことを理由に、王城に入る事が出来ない。


「まあ、いつも通りに行きましょう」

 

 フィロソフィアは指を鳴らして足元に魔法陣を展開する。そして、魔方陣が光り輝くと、フィロソフィアは姿を消した。

 

 こんな時の為にフィロソフィアは王城の一室に転移出来る魔法を準備していた。一応王城内での魔法は禁止されているのだが、そんな事はフィロソフィアには関係ない。

 

 アランの執務室にある隠し部屋に、何時でも転移できる様に細工をして置いたのだった。



 

1



 


 アッシュの屋敷を飛び出したリオは王城の外壁を越えた所で思い出す。

 

(あっ、王子の顔知らないや)

 

 どんな人物かはキャロルから聞いてはいるものの、その顔をリオは知らず。更に言えば初対面になるので話を聞いてもらえるとは限らない。

 多少センチメンタルになってしまったからと勢いで行動してしまった事に、若干後悔をしながら、王子を探そうとリオはその場を後にした。


 なるべく衛兵に見つからない様に歩いていると、踊っている女性が見え。

 リオは王子の事を聞くには丁度ど良いと思い、声を掛けようと近づいた。

 

 その時、リオは殺気を感じて黒い剣を後ろに振り抜いた。

 

 金属がぶつかる音と僅かに火花が散り、棒手裏剣が数本地面に転がる。

 

 リオは棒手裏剣が飛んで来た方に踏み込み、黒装束の男に斬り掛かる。

 

 黒装束の男は突如突っ込んで来たリオに、反応が遅れて一瞬怯んでしまう。

 その一瞬をリオが見逃す筈はなく、男の首筋目掛けて剣を振るう。

 だが王城で刃傷沙汰は不味いと考え、剣を男の首に当たる前に消して、男の腕を取り押さえる。

 

「何者だ?」

「それはこちらのセリフだ!」

 

 リオに取り押さえられた男は、リオにそう聞かれて怒鳴り返す。

 見た目的に怪しいのは黒装束の男の方だが、一応不法侵入しているリオが何者だと聞くのはお門違いである。


 その事を思ったリオは確かにそうだなと頷く。

 ついでとばかりにリオは王子の事について尋ねてみる事にした。

 

「俺はリオと言う。今はアッシュ団長の所に厄介になっているのだが……」

「何? お前がリオだったのか?」


 リオから逃れようと暴れていた男は、その事を聞いて暴れるのを止めると共に、殺気を収める。

 

「お前が王女の生贄にされてる男か」

「その事は初耳なんですが?」

 

 男が暴れない事が分かったリオは男から離れた。


 男は足元に何かを投げつけると、そこから大量の煙が立ち込めて男の姿が隠れる。少しして煙が晴れると、そこには頭に可愛らしい耳を生やした黒髪の男が居た。

 歳はリオよりも高めに見えるが、中性的な見た目と頭の耳が保護欲をそそる。


「私は王子様の護衛兼マネージャーをしている(れん)と申します。以後お見知りおきを」

 

 先程までの黒装束ではなく、黒いタキシードを身に纏い、粗雑だった雰囲気は洗礼されたものに変わっていた。

 

「さて、リオ様はどうして王城に不法侵入を? 記憶が正しければ外出の許可は出ていないはずでは?」

 

 その洗礼された雰囲気にリオは気圧されるが、蓮が王子の護衛と分かったので用件を伝える。

 

「実は王子にお願いがありまして。来月にフィロソフィア様と王女様と共に学園に入学となるのですが、二人とは別の所に行ける様に取り計らって頂きたいのです」


 蓮は顎に手を当てて「ああ」と呟く。

 

「確か王女様から、リオ様を同じ学園に通わすようにしろと書類が出されてましたね。確かアラン宰相にも、フィロソフィア様が似たような書類を提出してた気がします」

「高嶺の花である御二方と一緒の学園など私には……」

 

 蓮に対して俯きながら、同情を誘うようにリオは話す。

 

「王子はどう思いますか?」


 えっ? 王子? と思い、リオが顔を上げると、そこには先程王子の事を聞こうと思っていた女性が居た。

 

「そこに居たのか!」

「おや? こんな所で奇遇ですね」


 それと同時に上空からコローナと、背後からフィロソフィアが現れた。

 

 突然の襲撃にリオは頭を痛めるが、平穏な学園生活の為にここで逃げる分けにはいかない。

 

 リオは蓮に目配りをして思いの丈をぶつける。蓮は若干顔を歪めて抗議をするも、リオは真顔で返事を返す。蓮は内心、偶には良いですかねと考え頷く。

 そこからの行動は素早いものだった。蓮は先程使用した煙球をもう一度使い、辺り一面に煙を撒く。リオと蓮を除いた三人は驚くが、蓮の意図を察したリオは煙が晴れる前に王子を担いで逃げ出した。


「えっ? ちょっ!?」

「俺の平穏の為に少しだけ付き合って下さい! ついでにどっか隠れられる場所があるなら案内お願いします」

 

 王子は突然の出来事に驚くが、蓮がリオに協力をしているのもあって、素直にリオに背負われる。


 

「まあ、良いけど。一応これ不敬罪とか誘拐とかそこらに該当するからね? とりあえず、あっちに向かって」

 

 リオは王子の案内に従い、極力気配や魔力等を薄くして走り出した。

 

 煙が晴れると、そこにリオと王子は居ず。その事に気づいたコローナとフィロソフィアはリオを追いかけようとするが、それは蓮から投げられた棒手裏剣によって止められる。

 

「何のマネですか?」

 

 苛立ちを隠そうとしない、フィロソフィアの問いに蓮は飄々と答える。

 

「偶には王子であるルーシュ様に、息抜きをして頂こうと思いまして。彼は私を追い詰めるほどの実力者でもありますし、貴女様やキャロル様位が出て来ない限りは、ルーシュ様だけでも事足りますからね。コローナ様については・・・・・・まあ、心辺りがあると思うので」

 

 コローナは地面に下りてフィロソフィアの方を見る。恐らく蓮が言いたいのは、自分がフィロソフィア側の人間と分かっていると、言っているのだ。


「まあ、私も向こうではあまり良い戦いが出来なかったので、偶には戦いたいと言う欲求がありまして。確かこの様な場合はこう言うのでしたかな」


 蓮は服の右袖からショートソードを出し、左袖から短刀を出して二人に向けて構える。

 

「奴を追いたければ、私を倒して見せろ!」

 

 もしもこれが二人を倒さなければいけない戦いなら蓮に勝ち目はない。だが、時間を稼ぐだけなら蓮の得意分野であった。

 

 蓮のちょっとしたお茶目により、巻き込まれた王子からしたらたまったものではないが、王子も偶には良いだろうと蓮は切り捨てるのであった。

 

 フィロソフィアとコローナからしたら邪魔者でしかない蓮だが、その実力は王都も上位に入る。

 

 偶々国王に拾われ、その強さから第一王子であるルーシュの護衛に抜擢された。

 

 そこから色々とあってマネージャーも兼業するようになったが、獣人故の本質なのか、闘争を求めている。

 

 この戦いは王城の外壁の一部を粉々に砕き、当事者である蓮はボロボロに転がされる中、フィロソフィアは無傷であったとコローナの記録に、残る事になる。

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