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第11話サンドイッチが美味しい

「来たわよ」

「何の用ですか?」

 

 キャロルに襲撃された次の日の、ほぼ同じ時間に今度はフィロソフィアがリオの元を訪れた。

 先日会った時の様なドレス姿ではなく、動きやすいワンピースを着ており、髪をポニーテールにして纏めている。

 リオはキャロルの時とは違い、嫌な顔をして出迎える。

 

 趣味の料理をしていた所に、会いたくない人間が来たのだ。

 仕方のない事だろう。

 

「王女に襲撃されたらしいから様子を見に来たのですわ」

 

 リオは肉を包丁の背で叩きながら「それで?」と聞き返す。

 

「随分と可愛がってあげたみたいですから、私もお礼を言いに来たのです」

「もしかしてお前が寄こしたのか?」

 

 フィロソフィアはにこやかに微笑むばかりで、明言を避ける。

 自分に来ない様にリオに王女を送ったのに、まさかその日の内に襲い掛かって来た事を、フィロソフィアは少し根に持っていた。


「まあ、用が無いなら帰ってくれ。見ての通り俺は飯を作ってるんだ」

「ちゃんと用はありますわ。リオの力がどれ位か、確認をしに来たのです」

 

 ああ、成程とリオは肉を焼きながら思う。

 

 (まあ、こいつが居れば大体どうにかなるだろうから俺は要らないと思うけどな)


「それで、どうやって確認をするんだ?」

「それは勿論私が相手をします。ただ、念のため隔離結界の中で行います」


 リオは焼いた肉とメイドが用意した野菜とソースをパンで挟み、サンドイッチを三つ作る。一つをフィロソフィアに渡し、残りはリオとメイドで分ける。

 メイドは飲み物を準備した後に調理場から出ていく。

 

「中々美味しいですわね」

「それはどうも。それで、隔離結界って何だ?」

「一時的に空間を分け隔て、外部から遮断する結界ですわ。私の魔力やリオの力はあまり知られるのは良くないですからね」


 そう言うものかとリオは頷き、サンドイッチの残りを食べる。

 リオとしても別に断る理由もないし、一応助けて貰った身なのでフィロソフィアの要件を飲むことにする。

 サンドイッチを食べ終えた二人はメイドに、午後は庭を使うことを伝え、そのまま庭で向かいあった。

 フィロソフィアは膨大な魔力で地面に魔方陣を描き、それを起動させる。

 半円を描くように半透明な壁が地面から広がり、ドーム状に展開された。


 フィロソフィアは軽くストレッチをすると、結界に向けて火の魔法を放ち強度を確かめる。

 その魔法は、先日キャロルが放ったものとは比べられない程強大であり、リオはその威力に顔をしかめる。

 

「やはり私の結界なだけあって強度は大丈夫ですわね」

「それは良いが、一体何から始めるんだ?」

「リオは私を殺した時と比べて、どれ位まで性能が落ちているか分かりますか?」

「体感二割位だな。身体が脆い」


 リオはアランの執務室で襲った時と、これまでアッシュと毎朝続けている鍛練で身体の調子事態は大体掴めていた。

 

「能力はどうです?」

 

 何故知っているのだと、リオは声を出したくなったが、散々戦ってきたのだから分かるかと自分の中で結論を出す。

 

「確かめてないから分からない。最低限剣は使えるし、"視ることも"出来るのは確かだな」


「そうですが。とりあえず、軽く殺し(愛し)合いましょう」

 

 フィロソフィアは微笑みながら右手をリオに向け、先程と同じ程度の火の魔法を放つ。

 リオは黒い剣を出し、キャロルの時と同じように魔法を斬り裂く。

 フィロソフィアはやはりと思いながら、自分の後ろに複数の魔法陣を展開する。そこから様々な属性の魔法を放ちながらリオの動きを見る。


 リオは迫りくる魔法を見極めながら避けられるものは避け、斬れるものは斬っていく。

 当たり前のようにリオは魔法を斬って四散させるが、フィロソフィアはその様子を見ながら呆れる。

 魔法を魔法で打ち消したり、障壁の魔法で打ち消したりするのが当たり前なのに、リオは魔法の核を斬る事によって魔法を四散させているのだ。


 勿論常人ならそんな事は出来ないが、リオにはそれが可能であった。

 リオも何の対価も無く出来るわけではないが、下手な魔法はリオには意味がないのだ。

 だからこそ、フィロソフィアは対リオ用に準備をしていた。

 

「やはりこれくらいではまともにダメージを与えられませんか」

「これ位でやられていればとっくに死んでいるさ」


 しかし、リオは身体や能力が思いのほか使い難いことに、冷や汗をかいていた。

 リオが契約として手に入れたのは一定の条件下で能力を引き上げる事が出来る黒い剣と、魔力を元に身体を復元する事が出来る能力だ。

 因みに黒い剣には銘があるが、リオはあまり好きではないので、あまり言わないようにしている。

 剣の方は良いのだが、復元に使っている魔力が妙に引っかかるのをリオは感じていた。一応原因に心当たりはあるが、それが原因の場合は魔物等を殺しに行かなければならないので、リオは悩む。


「では次はもう少しレベルを上げるとしますね」


 フィロソフィアはニコリとほほ笑み、自身の魔力を高めていく。


(これが、神を名乗りし者の残滓か……全く末恐ろしいな)


 リオは剣を構え直し、フィロソフィアと向かい合うのであった。

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