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グリムツリー 後編

マズいっ。時間を掛けるとどんどん守護モンスターが集まってしまうし、ダウンポリスの活性化も進んじゃう!


「この2人は私とディンタンの隊が引き受けますっ。マブカ神様! 予定通り攻略支援お願いします!」


「いいでしょう、ミカゲ。ゲコぉっ! 神力、『黄泉蛙(よみがえる)』っ!!」


マブカ神は数百体の蛙人族(ワーフロッグ)の白骨兵士達を召喚した!


「コアまでの血路を開くのです!!」


「げぇえこぉおおお・・・」


「げぇこぉっ」


「げぇこぉげぇ・・」


蛙の白骨兵士達は相当な勢いで突進を始めた。


「オータムゴールドさん! ユニコーンさん! 任せましたよっ」


「ミカゲちゃん! 気を付けてっ」


ナジムやロンロン達他の選抜冒険者達は蛙の白骨兵士達に続きだした。


「ミカゲ隊! ディンタン隊! 任せたっ。州兵も行けるとこまで援護するっ!」


ゴーレムシップのパイロット達も重火器類を手に、選抜隊に続いた。


「・・見逃してくれるんだ」


私は改めて魔剣士アディと屍のイエーラに向き直った。


「このエリアのグリムツリーは既に十分地上世界に裂け目を開き、魔界からの行き来を助けた。お役御免だ」


邪魔しようとしたらそれに乗じて先制しようと思ったんだけど、警戒されたのかも?

と、屍のイエーラの骨の触手がビクっと攻撃の挙動を見せたっ。


「『レイ・ピリオド』」


ゼンが屍のイエーラにドライブガン・BISで強力を放った! 骨の触手で防がれるっ。


「『マナ・スケイル』っ!」


鱗状の魔力の護りで全員を護るマティ3世! 呼応して魔剣士アディが軽い動作の斬撃の連打を飛ばしてきたけどマリマリーが野分け薙ぎで風の刃を放って相殺する!


「コール、『デク10号』っ!」


パルシーは巨大トカゲ型のマシンゴーレムを足元に召喚して背のコクピットに側にいたマブカ神と乗り込んだっ。


「抜刀っ!」


「『ブリンク・俺っ!・兵』っ!!」


私はナマクラ・薄紅の刀身を解放し、ディンタンはフルゴング・改弐を構えて仮面の分身兵を十数体造りだした!

焼かれた骨の触手を切り離して、新たな骨の触手を発生させて私達全体に範囲攻撃を始める屍のイエーラっ!

全員一旦回避しながら態勢を整えるっ。


「YOっ! 俺の隊がイエーラを押さえる!」


「ディンタン任せた! マティちゃんはバフの維持と溜めに専念っ、マリマリーは援護して!!」


「あいよっ」


「ケムんっ」


ディンタン隊の速攻で屍のイエーラの範囲攻撃が一先ず収まり、私達の隊も攻勢に転じようと思ったら、先に魔剣士アディが動いたっ。


「スキル、『冥穴棘網(めいけつきょくもう)』」


またこの技! 魔剣士アディは自分の影から闇の茨の網を私達3人に放ってきたっ。


「スキル、『麒麟・荒駆(あらが)け』っ!」


マリマリーが風を纏って旋回突進して闇の茨を打ち消すっ!


「『桜辻(さくらつじ)刹那(せつな)』っ!」


「『茨辻(いばらつじ)』」


私は光の花弁に乗ってジグザグの回数を減らして速度を高めた加速移動を始め、魔剣士アディは闇の花弁に乗って加速しだした! 互いに加速状態で斬り付け合うっ。


「魔族よりっ、私達のとこに来た方が楽しい気がするんですけどっ?!」


「楽しい? ふふっ、おっと」


マリマリーが旋風の刃で斬り付けたのを打ち払う魔剣士アディ。


「もう、(じく)が違うんだ。可愛いミカゲよっ! ・・来いっ、『ペイルギガース』っ!!」


魔剣士アディは影から2体の青ざめた骨の巨人を召喚した!! やっぱり来たっ、それも2体! そして可愛いって言われたっ!


「マティちゃん!」


「ケムんっ、『メガ・マナ・エクスプロージョン』っ!!」


マティ3世は守備魔法を維持したまま、魔力の大爆発でペイルギガース1体を倒し、残り1体も片腕を吹き飛ばした!


「マリマリーっ、お願いっ!」


「すぐフォローに戻るから!」


マリマリーは片腕のペイルギガースに挑んでいった。

魔剣士アディは下位魔族の群体の召喚もできるっ、想定してるからマティちゃんは再び魔力の溜めに入るっ。


「茄子ボムっ!」


時間稼ぎ用に温存してた茄子ボムを連打して少し距離を取る。前より正確に、たくさん撃てる!


「腕を上げてるな」


面白がる魔剣士アディもレベル40ぐらいに上がってる! 差は埋まってないっ。


「あの虫、邪魔か・・」


魔剣士アディは影から数百の下位魔族の軍勢を召喚し、それを3手に分けてマティちゃんに殺到させた!


「マティちゃん!」


茄子ボムでフォローしようと思ったら魔剣士アディに距離を詰められて阻止されたっ。マリマリーはまだペイルギガースと交戦してる!


「ケムんっっ、『メガ・ストーンクラウド』っ!!」


マティちゃんは3方向に石化ガス魔法を放った! 瞬間的の石化され、砕かれてゆく下位魔族群っ。

だけど、数十体は仲間を盾にして石化を免れマティちゃんに突進すると、鱗状の魔力障壁ごとこれまで進行してきた通路の奥へと運び去りだした!


「ケム~っ??」


「マティちゃーーーんっ!!! オールファウンテンシールドっ!」


私は刀に霊水の渦を纏って、魔剣士アディを弾いた。


「スキル、『茨犬(いばらいぬ)』」


魔剣士アディは宙を駆ける闇の茨の猟犬を多数放ってきたっ。

私は魔剣士アディ本体を牽制しつう、茨の猟犬達も茄子ボムで迎撃したけど手数が足りない! 猟犬達に詰められるっ。


「オロチ・華車(はなぐるま)


私は光の花弁を纏い渦の刀で回転斬りを放って茨の猟犬達を纏めて斬り散らした。でも、来る! わかってるっ。


「『陰火抜(いんかぬ)き』」


動きの大きな技で私に隙ができると、魔剣士アディはそれを逃さず暗い火を灯した大剣で超高速の突きを放ってきた! 想定してるっ。


「オリハルコンスプーン!」


私はウワバミのバックルから出したオリハルコンスプーンを拡大させ、左手だけで扱って受け流し、擦れ違い様に片手持ちの霊水の渦の刀で魔剣士アディの脇腹に一撃入れたっ。

その部位の鎧が砕け、


「くっ!」


怯んだ魔剣士アディに私はありったけの茄子ボムを放り込む!


「茄子ぅーーっ!!!」


余裕無さ過ぎてテンジクカ神みたいになっちゃったよっ。


「アディっ!!!」


ディンタン達と交戦していた屍のイエーラが、右腕を切り離して骨の龍に変化させてディンタン達に放ち、私に突進しながら骨の触手を放ってきた!


「わわっ?」


私はすぐに茄子ボムを骨の触手の迎撃に切り替えた。


「アディ!」


目元を隠していた半面を砕かれ、大剣にもヒビが入った消耗した魔剣士アディに飛び付いて、霊薬(エリクサー)らしい瓶を自分の体内から取り出して自分の左腕には構わず魔剣士アディに使用する屍のイエーラ。


「すまん、イエーラ。侮っていた」


私はけし駆けられた骨の触手を全て爆破し、マリマリーもペイルギガースに止めを刺して、風に乗って私の側まで来て、魔剣士アディ達に野分け薙ぎを構えた。


「・・ミカゲ・オータムゴールド。その力! 知恵! 蛮勇! そして強固な仲間達と神々の過大な祝福っ! お前の勇者の兆しを認める!!」


魔剣士アディは隻腕になった屍のイエーラを抱き寄せると闇の花吹雪を巻き起こした。


「忘れるなっ、我ら魔族はお前を敵として、最大の力で対抗するっ!!」


魔剣士アディと屍のイエーラは闇の花吹雪の中に消えていった・・


「スプーンと爆弾使いこなしたら勇者認定されちゃったよっ」


「言わんこっちゃない、もうっ。ミカゲは」


マリマリーは少し涙ぐんで、ハンカチで茄子ボムで煤だらけになった私の顔を拭ってくれた。


「おいっ! こっちまだ終わってねぇYOっ?!」


ディンタン達はまだイエーラの骨の龍と交戦していたっ。


「あっ、ごめんごめん!」


「しょうがないな・・」


私とマリマリーは加勢に入った。程無く、下位魔族達を撃退したマティちゃんも合流し、無事、骨の龍は撃破できた。



それから約10分後、私達がワラワラ涌いてくる中途の守護モンスター達に手こずっている間に、蛙の白骨兵士を使い切って先行した選抜冒険者ギルド隊と州軍兵は見事ダウンポリスのコア個体を撃破した!!

コア消滅と共に守護モンスターも崩壊し、私達は崩れ出した迷宮化ダウンポリスから『お宝を拾えるだけ拾いつつ』脱出した。

既に迷宮の円盤型障壁は消えているので、各自の飛行系能力で宙に逃れた私達はピックアップに来た魔工飛行艦の開放されたドッグに飛び移っていった・・


「お疲れ様です! もう1つのグリムツリーも撃破されたようです!! ル・ケブ州はグリムツリーの脅威に打ち勝ちました!」


ドッグまで出てきたメメフルさんがそう伝えると、無事帰還して放心気味に崩壊するダウンポリスを見ていた私達突入隊は、一気に我に返って大歓声を上げた。

お祭りわっしょい状態! 私も誰構わずハグして回っていたけど、勢いでディンタンにもハグしてやったら速攻でマリマリーに引き剥がされて抱え上げられてしまった。

いや、大きい人形じゃないんだからっ。と、ずっとくっ付いていたパルシーから離れたマブカ神が人波を掻き分けてこちらに来た。ん?


「ゲコ。やれやれでした。ミカゲ。お前は魔族に目を付けられたので我ら三神とホノカ神によって、改めて魔を避ける力を与えねばなりませんね。・・あっ! こらっ、今の誰ですっ? どさくさに強めにパイタッチした者っ、名乗り出なさいっ! 許しませんよっ、許しませよぉっ?!」


マブカ神は話の途中で犯人探しに夢中になってしまった。


「・・なんか、後に引けなくなってきたね」


「あたし、最後まで付き合うから」


「うん」


祝勝の喧騒の中で、私とマリマリーは砂のようになって崩れ去る最後のグリムツリーを見詰めていた。

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