40話 失踪した先輩
時刻は午後17時を回っていた。
「どうだね見つかったかい」
遊園地のオーナーさんが私たち四人に尋ねてきた。
「いいえ、見つかりませんでした」
「こ、こちらも見つかりませんでした」
「はぁ、はぁ、私も見つけられませんでした……アゲハちゃんんの方は?」
「見つけたら、連れてきているはずでしょ」
私たち四人は互いに顔を見合わせたまま立ち往生していた。
「とにかく、ここから入場した人はキミ達5人だったし、ここから出て行った人物をまだ私は見ていない。とするとまだ園内に居ると思うけど……とにかく時間が遅い。18時を回ったら警察に連絡して、捜索の手伝いをしてもらおうと思う……いいかい、あと一時間だよ」
「わかりました。皆さんもう一度散会しましょう」
「は、はい。では僕、もう一度お化け屋敷の方を見てきます」
「そういえばバイキングのガイコツ船長さんも見かけませんでした。一体どこへ行ったのでしょう……協力を頼もうと思っていたのに……」
「うん? ガイコツ船長さん?」
オーナーさんは首をかしげていた。
「――と、とにかく日が落ちるまで時間がないし早く先輩を探しましょう」
私たちはそれぞれ別方向へ行き捜索を再開した。
そう先輩、もといダークネス・カイザー様は失踪したのだ。
いつからかと言えばあの観覧車の頂上に昇り切ったあたりからいなくなっていた。
その時の状況を軽く説明すると、まず皆で観覧車から降りる次に先輩が失踪したことを皆に告げた。そして皆で辺りを捜索したのだが見つからず、オーナーさんに知らせたところ園内から出た形跡はないとのことだった。
そして今現在、ダークネス・カイザー様を絶賛捜索中という訳だ。
「どこに行かれてしまったのでしょう」
肩に乗るバステトが話しかけて来た。
「はぁ、はぁ、何にしてもオカルト的力が働いてるに決まっているわ。ゴンドラの中からこつぜんと姿を消すんですもの」
歩くのも限界に近づいていたのだが、先輩のために頑張る私。
「神隠しにでも、あわれたのならゆゆしき事態ですね」
「十分考えられるわね。ここは心霊スポットだし、何が起きても不思議じゃない……最初は先輩が観覧車から飛び降りて自殺したかと思ったわよ」
「そうでなくて本当によかった」
「ねぇ、貴方たちから見て私の乗っていた観覧車に何かおかしなことはなかった。
「ずっと見ておりましたが、変わったところは一つもありませんでしたよ」
「そうだな……あの観覧車もお化けって訳じゃなさそうだし少なくとも最初から最後まで出てきちゃいないぜ」
「かと言って隠れるスペースもないのよね」
「一応あるのでは? 座席の中とか絶好の隠れ場所になると思うんですが……」
「何にしてもどこを探すんだ? その辺のお化け達にもあらかた聞いてみたんだろ……?」
「ええ、そうよ。だから困ってるんじゃない。デビルンあなたの力で何とか先輩の居場所を突き止められないかしら」
「突き止められるかわからないが……手掛かりならやっぱりあの観覧車だろう」
「あなたさっきは、あの観覧車はお化けじゃないって言っていたじゃない」
「それはそうだが、まだよく探してなかったろう? もしかしたら本当に座席の中に隠れているかもしれないぞ」
「わかったわ、行ってみましょう」
こうして、私とバステトとデビルンは先輩が失踪した観覧車へと向かうのであった。
「戻って来たわね。さてどのゴンドラだったかしら」
「どうでもいいですが、廃園しているのに機械が動くのは何なのですか?」
「それならオーナーさんが気を利かせてくれたみたいよ。なんでもせっかく来たんだから楽しんでもらいたいらしくって……」
「まさか心霊スポットになっているなんて、夢にも思ってなさそうだったぜ」
「それで、私と先輩が乗っていたゴンドラはどれ? この目の前のかしら」
「違う違うあの黄色いヤツだ」
「はい、あの錆びれ具合……間違いありません。あれが主様がお乗りになっていた観覧車です」
待つこと5分。
(ようやくご到着ね)
「で、先輩ととやらは上手く出来たのか?」
「何の話? 今はやめてよね。さぁゴンドラも来たし、中へ入りましょ」
私たちはゴンドラの中へ入った、するとある物を目にした。
「これって、先輩のスマートフォン?」