36話 勝負の内容
『――しょ、勝負?』
「そうよ。私が勝ったらその下品な口調を何とかして、遊園地のアトラクションとして真面目に働いてもらうわ。端的に言うとジェットコースターの責務を果たしなさい」
『――オマエが負けたらドウスンダ』
「私が負けたら、もうここには二度と足を踏み入れないと誓うわ」
『つまらん、提案ダ――それともっとこう上目遣いでお願い事デキル雌にナロウナ』
「じゃ、どんなお願いなら満足できるのかしら」
『そうだなーーまずは服を脱いで――』
「――そう、上着を脱ぐだけでいいのね。わかったわ。じゃあ勝負のルールだけど……」
『イヤイヤ、話聞けヨ。まずは服脱いで遊園地中をあーーーーーーーって言いながら走る奴。カッコ裸でナ。端的に言うと痴女にナレ。つーか目覚めろ』
「(絶対目覚めないわ)でもでも常識的に考えて街中を下着姿で歩き回ると法律に引っ掛かるって言うか~~」
『だから、園内って言ってるジャン――コノ痴女属性』
「――ああもういいわよ。どうせ私が勝つんだもん」
『デ、勝負のルールは……』
「私があなたに乗って絶叫も上げずに一蹴回りきることよ」
『なんて言うか。セコイナ』
「どこがせこいのよ。どこが――」
『もっと、こう、チャレンジ精神的なモノ見せてほしいわけよ』
「要するにどうすればいいのかしら」
『百周くらいを目指そうゼ――』
「――――マッハ5で走るジェットコースターに百周も乗れるかーーーー!! 死ぬわ」
『6×100=600秒耐えきって見せるくらいの覚悟を持てヨ』
「――――1分も耐えきれるかーー!! 死ぬわ!!」
『わがままだナ。これだから根性なない素人は困る』
「あいだをとって1分にまけてくれないかしら。紳士的なジェットコースターさん」
今度は上目遣いで頼んでみた。
『――だが、断る』
(何なのよこの機体はーー、今すぐスクラップにしてやりたいわ。10分なんて誰が乗れるのよ。誰が……そうだわ)
私は妙案を思いついた。
『じゃあ、この話はなかったことで……』
ジェットコースターがそのまま散歩に出るかのように発進していこうとする。
「――――ちょっと待ちなさい。条件を飲もうじゃないの」
『は? マジで?』
私は乗り継ぎ場の隅っこへ行きデビルンと一緒に作戦を立てることにした。
「――――デビルン今すぐ私に憑りつきなさい」
「えっ! まさか俺様を身代わりに、ことを成すつもりか?」
「そうよ。なにか文句ある」
「文句はないが、10分もあの速度になんて耐えきれないぞ、絶叫しちゃうかも」
「大丈夫。ここに妖怪的存在が声を発せないお札があるから……これを使って――」
『インチキならこの話は無しダナ』
ジェットコースターさんには全部聞かれているようだった。
「……俺様も隣で乗ってやるからよ~~観念しようぜ」
「……わかったわ。じゃあその勝負受けてたとうじゃない」
『いい度胸だ。乗りナ、地獄への片道切符ってのを教えてやるゼイ』
私とデビルンは先頭の車両に乗り込んで安全装置の確認をする。しっかりと念入りに。
「こんな安全バーだけで本当に大丈夫かしら」
『心配しなくても、安全対策は万全ダゼ――それより覚悟はいいナ』
「貴方こそ、約束は守ってくれるんでしょうね」
『モチロンダ。けど目を閉じるなよ。座席にゴーグルがあるはずだ、そいつを装着しないと風に目をやられるゾ』
(くっ、最後の策も見破られたか……まぁいいわ。絶対に悲鳴を上げなければいいんだもの)
『覚悟が決まったようだな。じゃあもう後には引けないぞ。3,2,1』
(――――来る)
私が決心したその時――ジェットコースターは発進した。しかし
「あら、スピードが……」
意外なことにマッハというそれ程の速度が出ていない。
『まぁなんだ、ちょっと脅かしただけだ。さっきのお札の仕返しとでもおい持ってオイテクレ。基本お客様は大事にしないとな』
「ジェットコースターさん……うっ、うっ」
『おいおい泣くな。こんなところで泣かれても困るゼ』
安心したせいか涙がたくさん零れ落ちた。
「――ええ~つまらん。お札一枚つーかお」
『――――!?』
「―――――――――――――ひッ!?」
デビルンが余計なことをした。お札と聞いてジェットコースターさんの速度は一気に上昇し、マッハにまで到達、あとは語らずとも私は案の定、絶叫した。
「ひゃわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」




