33話 ステージ上の戦い! それはまるでヒーローショー!
私はライブカメラ越しにデビルンとキャプテン・バーサーカーを見ていた。
(さて、何がどうなるのかしら。まぁ後で何が起きても編集すればいいし、デビルンの音声だけ聞き取れないのなら、私がアテレコすればいいだけのこと。何にしても面白い動画になりそうだわ。さあ、見せてもらいましょうか! クマの着ぐるみ対ガイコツ剣士の戦いを!)
私は水筒に入れておいたココアを嗜みながらそんなことを考えていた。
『おめでとう……まんまと俺様の罠に引っ掛かってくれたな……金貨集めはここまでだ』
単刀直入にデビルンが切り出した。
(私が提案した罠なのだけど……)
『そうか……この金貨の道は貴様の罠だったのか……こんなところにおびきだして俺に何の用だ!』
『ククク……お前、一人前のお化けならわかるだろ! お化け退治だこの野郎!』
クマの着ぐるみを着たデビルンが鋭い爪を持った先制攻撃を仕掛け――ガキンと言う甲高い音がした。
『ほう、お化け退治か……言っておくが俺の妖力はその辺の亡霊の比ではないぞ。何せ実体化するほどの霊体なのだからな』
ガイコツ船長は腰に携えたパイレーツソードでクマの爪に対抗していた。
『――それを人や悪魔の世間ではお化けと言うのだ!』
『――ッ!?』
クマが口からゴアッと火を噴いた。
(――やるじゃないデビルン)
ガイコツ船長の肩にはおらた服の裾を焼き上げた。
『お前! 新入りの亡霊だな! 俺に何の用があってこんな戦いを仕掛ける!』
『黙れ! 俺様の契約者様の依頼だ! お前は危険と判断したので倒してくれだそうだ!』
『契約者? まさかさっきのガキ共のことを言っているのか』
『正解20パーセント!』
火炎放射器のように火を噴き続けるクマさん。
「ちょっ、このままでは火事になりかねませんよ。主様」
同じくライブカメラを目にしていたバステトがそう告げた。
「(それはまずいわ)」
「どうします主様」
私は早急にインカムを取り出した、デビルンには万が一のことを考えてインカムを渡してある。
「(デビルン聞こえる。火を噴くのをやめなさい。火事になっては元も子もないわ)」
『ええ~~めんどくさいな~~まぁ仕方ないか』
ライブカメラを見ていると火を噴くのをやめたデビルンが確認できた。
『どうした! ご自慢の火は! 燃料切れか!?」
すかさずズババババッとパイレーツソードで攻撃を仕掛けるガイコツ船長。
『火を噴くだけが俺様の専売特許じゃないんだぜ! いくぞ! 翼展開!」
クマの背から悪魔的な大型の翼がバサリバサリと展開され浮かんでいた。
(これ、視聴者が見たら、ただクマが浮いているとてもシュールな光景に見えるんじゃないかしら。まぁ勝てるのなら問題ないけど)
『直上――』
「(ちょっと! 上に行かれたら、カメラに映らないじゃないの! 視聴者のことを考えなさい)」
『うるさい! すぐ画面内に戻るぜ!』
インカム同士でデビルンと会話する。
『目下からの~~突撃いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!』
ドーーーーン! とステージ中を震撼させる衝撃がほとばしっていた。ついでにデビルンもカメラ内に戻ってきていた。
『ぐわああああああああ!! くっそおおお!! 剣が折れた!!』
デビルンの直撃を受け止めたパイレーツソードが――バキンと折られていた。
『降参してあの世に行くんだな! 今ならもう痛い目にあわずに済むぜ!』
その時――私たちは勝利を確信した。だが……
『頑張れーー海賊さーーん』
『クマさんなんかに負けないで~~』
少年少女の声援が次々とガイコツ船長に向けられた。
「(どういうこと……なんでこんなに10代にも満たない子供たちがいるのよ)」
『足を見ろ、こいつら全員幽霊だ』
インカムからデビルンの声が耳に届いた。
(そうか。子供たちには敵っぽく見えても、長年見守って来たお化けの仲間、応援したくなるもの無理ないわ。この声援で何かしらのパワーアップをすると言うことね
『うるせい黙ってろガキ共!!』
(えぇ~~この状況でその反応するの~~? そこは素直に子供たちの声援に感謝しなさいよ)
『が、頑張れ~~悪魔的クマさ~~ん!!』
『ま、負けないで~~』
(ホラ浮気した~~)
『何だか知らないが次で決めてやるぜ!!』
クマさん、もといデビルンは最後の攻撃態勢に入る。
『一つだけ聞かせてくれ、俺はどうして退治される』
『それは……⦅どう答える契約者様⦆』
「それは――刃物を持った危険人物だからよ」
『刃物を持った危険人物だからだそうだ』
『もうないぞ?』
『あっそれもそうだな』
(ええ~~退治する理由がなくなちゃった)
デビルンがよそ見をするうちに……
『――な~~んてな! 我が妖力で作り出した剣の前に死ね! くま公!』
(ちょっ――――)
――ガキンと甲高い音が鳴り響く。デビルンが妖力の剣をクマの爪で受け止めていたのだ
『――不意打ち、お前みたいなタイプは何度も戦ってきた。そう来るのはお見通しだぜ! ベアクローー』
そしてすかさず別の腕で攻撃をする。
『う、うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!』
ガイコツ船長が、まるで特撮物のテレビのように爆散して、跡形もなく消え去った。
『勝利ーーーー!!』
『わーーーーい、勝ったーーーー!!』
『クマさんすごーーい』
パチパチと子供たちからの歓声を受け取っていた。これで危険なガイコツ船長はいなくなった。
「(――ふぅ、ヒヤヒヤしたわ……お疲れ様デビルン)」
ライブカメラにはステージ上でポージングを決めるクマさん、もといデビルンの姿があった。




