32話 戦いを動画に残す作戦
バイキングも終焉を迎えて、私たちは食事を取ることにした。当然、園内には出店も小奇麗なレストランも開店しているわけじゃない。だって閉園しているんだもの。開店している方がおかしいわ。ちなみに自動販売機も設置されているがもちろん機能はしていない。
私たちはレストランの野外席で食事を取っていた。ダークネス・カイザー様はコンビニで買って来たと思われるおにぎりのたぐいを、ビーブリオテーカ様は独自で作ったと思われるお弁当を、ソリトゥス様は親御さんが作ってくれたと思われるお弁当を、クリスチャンもやはり自分で作ったと思われるお弁当箱を、それぞれがそれぞれの食事を楽しんでいた。私はと言うとコンビニ弁当だ。そしてバステトはキャットフードを。
「これでもちゃんとしたものを選んだのよ。ホラ、食品添加物減量と書いてあるじゃない。健康には気を使っているわ」
「新鮮さが足らないという話だよ。やっぱり瑞々しくて元気なお野菜食べないと……栄養が偏るとすぐ病気になる。だからねアゲハちゃん。このプチトマトを食べなさい」
子供向けのフォークで串刺しにしたプチトマトを差し出してくるクリスチャンであった。
「あ~~ん。けど、前にも言ったけど栄養には気を配ってるわ。ホラこうやってサプリメントも用意して来たんだから」
「甘い! そんな何のお味もない商品を私は料理とは認めないからね。だからこのブロッコリーも食べて……」
今度はブロッコリーを差し出してきた。結局食べる私。
「ところで動画の方はどう? ちゃんと可愛い可愛いアゲハちゃんは映っている?」
「今確認中…………」
カメラを確認しながら言っては見たものの、実際に見ている動画は全く違う。そこには私とバステトしか見えないデビルンが映っていた。
(いい位置取りね。これならステージ全体が見えて何をしているか一目瞭然だわ)
映っているのはヒーローショーなどでおなじみのステージだった。
ここで話は食事前に戻る。それはまだバイキングから降りて間もないこと。
「あのキャプテン・バーサーカーは本当に桁違いの妖力を持ってる。専門家の霊媒師でも退治は難しいぞ」
「(じゃあ、どうするのよ。貴方の本気とやらであれは何とかなるのかしら?)」
「俺様を舐めるなって言ったろ! いい機会だ。ここらで俺様の実力を知って多少は役に立つところを見せてやるぜ! これでもコンバットデビルだからなぁ!」
「(へ~~掃除、洗濯、皿洗いしか出来ないどこぞのしもべ妖精じゃなかったんだ)」
「で、アイツを今すぐ成仏させてくればいいのか?」
「(まってせっかくなら動画としてあげたいわ。その戦いとやらを……)」
「はぁ? どうが、って、撮れたとしても俺様の姿はお前と猫しか見えないじゃないか……? どうやって全国のオカルト少年少女以外の皆に見てもらうんだよ」
「それについては考えがあるわ……今メモするからその通りに動いてちょうだい」
「へ~~作戦か~~俺様もついに動画デビューか~~、こいつは腕が鳴るぜ!」
そう言い合ってメモを渡しておいた。つまり今、デビルンと私は別行動をとり、食事と動画撮影に尽力しているのだ。メモにはこう書いておいたまず初めにどこぞのステージ全体を見渡せるようにカメラをセッティングして、録画ボタンを押しておく。次にデビルンが行動するそれは――
(クマの着ぐるみか~~なかなかにリアルじゃないの……ちょっと怖いくらい。まぁいいわ、これで中に入っているはずのデビルンも視聴者は見ることが出来るのよねぇ……我ながら頭の良い作戦ではないだろうか)
カメラはライブ中継で私にデビルンが入ってるはずのクマを見ていた。何やら動きやすさを確かめているのか、跳ねたり大きく伸びをしたりしているようだった。
「主様、キャプテン・バーサーカーは来ますかね」
下でキャットフードを食べていたバステトに話しかけられた。
「(来るわ)」
私は確信して質問猫に答えた。
(名付けて5円玉作戦。見ていたわよ、ダークネス・カイザー様からもらった5円玉に感動してるところを……今頃、ステージまでの道筋にそって配置した5円玉につられて、キャプテン・バーサーカーは必ずやって来る)
そうこうしている内にステージにもう一つの人影、キャプテン・バーサーカーがお金につられてノコノコとやって来た。これで二人が戦うさまを動画に納めることが出来る。作戦は無事成功を収めたのだ。
クマとガイコツの激闘が今始まる。