19話 優秀なる使い魔たち
自宅、もとい秘密基地に戻った私は、自室で早速ユーチューブにアップするための、動画編集作業に勤しんだ。
編集の過程で余分なところはカットし、擬音や効果音をつけての編集だ。パソコンに映し出されているのはスマートフォンで録画した新動画、そのタイトルは……
「ブラックコーヒー缶を宙に浮かせてみた~~?」
そう、私のパソコンには宙に浮くブラックコーヒー缶の記録映像があった。
「やはり、デビルン氏は映らないのですね」
棚の上から観察しているバステトがそう応えた。
(そう、デビルンは映らない。種も仕掛けもない正真証明のオカルト動画が取れた。あとはこのエンターキーを押すだけで、動画は世界中に拡散する。完璧な無編集とまではいかないものの、このCGを使わずここまで出来た動画はいつも通り高く高評価を受けるはずだわ)
「……今日もこの大悪魔様を使っておきながらこんな地味な動画なのかよ! いい加減飽きて来たぞ! せめて人間どもに魔界の広さってのを見せたいんだけどな」
「貴方が映らないのに、その魔界とやらの領域が映るはずないわ……?」
私はエンターキーを押した。そして無事、動画はアップされた。
「それで、主様、例の件。廃部阻止の為にどうしてスマートフォンを利用するのか……そろそろ教えてください」
「ま~~た、俺様に頼み事か? あの少女の洗脳なんて楽勝だけどな! 俺様は何時からお前の使い魔になったんだよ!」
「はじめからでしょ…………それより今回はデビルンの力は使わないわ。だって私には数十万の使い魔がいるもの……」
私はスマートフォンを片手でいじりながらアイスティーをストローでスース―飲んでいく。
「今日のツイートは募集よ」
「ぼしゅう……?」
「そう。デイネブリスパピヨンの全使い魔86万人に告げる。あなた達の奇々怪々、奇想天外、魑魅魍魎の知識と見聞の広さで、廃部存続の危機であるオカルト研究部を救いなさいというミッションを与える、と……」
「要するに人任せなのですか……?」
「私一人の力で廃部寸前の部を救わなくても、ここには86万のアイディアが詰まっているんだもの、使わない手はなくんじゃなくって……?」
私は早速、スマートフォンのツイッターにアクセスし何か手立てはないかと、ツイートしてみたすると数秒後――
――学園の名称を教えてクレメンス
(そんな事したら私の素性がバレてしまうじゃない。却下)
――オカ研だったんですね! 私もオカ研なんです!
(はぁ~~、既にプロフィールにオカ研もとい、邪神官と書いてあるでしょうが……)
――ユーチューブでの活動で既に学園に対する利益は達成できているのでは? デイネブリスパピヨン様ならカリスマ性もあるし、学園への受験者も増えるはず。ここは学園の名をだしてみるのも一つの手かと……
(さっきの人と同じことを……だから素性がバレると後々が面倒でしょうに、アフターケアがなっていないわ。はい次)
――部として認められないなら、同好会でもよろしいのでは? デイネブリスパピヨン様が今までそのような部に所属していたのなら、稼ぎは十分にあるので活動資金としては問題ないかと……
(出来ることなら正式な部として存続させたいのよ)
――部員たちと一緒に動画投稿をしていたんですね。初めて知りました。
(いや、最初から最後まで私一人なんだけど……まぁいいわ。そういう認識でも……)
――いや、今回の件にデイネブリスパピヨン様のユーチューブ活動には支障がないと思われる。何故ならプロフィールにあるように個人で動画をUPしていると書かれているから……
(見てくれてる人は見てくれるのよねぇ……)
――バステトちゃんが尊い
(この人いつもこんなツイートを返してくるな……)
――デイネブリスパピヨン様がエモい
(気持ち悪いわ。どうせどこかの肥満ニートでしょうね)
――学園の為にボランティア部に改名したらと書かれていたのでツイートします。まず地域の為に貢献し、あるいは実績を残せばいいのです
(……この人に返信してみようかしら)
私はこの特定の使い魔をターゲットに話を進めた。
――まさか……返信を貰えるとは、ありがとうございます! では端的に対処法を教えましょう。つまり――オカルトによる仕事が必要だと考えます。例えば除霊とかコスプレ大会に参加するとか……
(――これよ!)
私はその対処法を見てピンときた。
「フーハッハッハッハッ! 要するにオカルト的仕事があればいいという訳ね。流石は我がフォロワー! 名案だわ」
「主様? 解決の糸口が見つかりましたか?」
「何だ何だ? 俺様はまだ何の力も発動させちゃいないぞ……?」
「ク―ッフッフッフッ! 慌てるでない。解決の糸口はやはりありそうだというだけの事よ」
私は喜々としてフォロワーの、もとい使い魔の優秀さに感服しながら、ツイートを読み込んでいった。




