14話 運命の赤い糸
私がその人に恋をしてはや5か月。
ここで私の恋い焦がれる黒条サイコ、もといダークネス・カイザーと出会った話をしておこうかしら。
私達の出会いはいたってシンプル。オカルト研究部、体験入部の時だった。
私とクリスは中学時代の同級生であり、オカルト系統の話には敏感だった。
入学してすぐ、私達はオカルト研究部に入部した。
丁度、部員も少なくて歓迎されたし、小さなパーティーも開いてもらった。
そして、部員は三年生の副部長の幹久ドクハ、二年生の来翔メイカ、そして新入部員である、私達、一年生の離岸クリスと黒井アゲハ、そして部長にして邪神官と名乗る三年生の黒条サイコである。
私は初日の日に黒条サイコ先輩に恋をした。何せ新入部員歓迎会であんな事を言うのだもの。
「キミ達は我が大邪神殿に相応しい眼を持っている。来翔メイカ、今日からはこう名乗りなさい。私は邪神官クリスチャンであると……」
「あっはい(えっ……クリスちゃん? どいうことアゲハちゃん)」
「(後でクリスチャンの意味を教えるわ)」
間違えたこっちではないわね。私に対してこんな事を言うのだもの。
「そしてようこそデイネブリスパピヨン、待っていたよ。君が来ることは朝のテレビ占いでわかっていたことさ」
私に顔を近づける先輩。
「運命の少女よ。どうか我々の世界征服を完遂する柱となっておくれ……そして、完遂したあかつきには、前前前世の約束により共に生涯を添い遂げようではないか」
この一言に私の心は射止められてしまった。
そして、私は夏休みを挟んで、久しぶりに会う先輩にドキドキしていた。
「……デイネブリスパピヨンよ、どうした顔色が赤いではないか……呪いにでもかかってしまったのか? ならば、解こうではないか……」
「――い、いえ、ダークネス・カイザー様のお手を煩わせるまでもありません。この程度の呪いならば私のスキルで何とかなります」
「ほう、して、そのスキルの詳細を我に教えることは可能か?」
「あっ、はい! スキル名――呪術輪廻――これは呪いを数倍にして、呪いをかけた者へと反撃するスキルです」
「んん! マーベラス! 実に素晴らしいスキルだ!」
黒いコートをたなびかせながら、踊り狂う黒条サイコ先輩。
「――黒条先輩!」
私は暗い部室で彼を呼んでみた。
「……………………」
「何か知らないが無視されているぞ。アゲハ」
デビルンが言ったことで思い出した。先輩はガチの邪気眼、電波、中二病なのだった。
「――ダ、ダークネス・カイザー様! もうお食事はとられましたか!?」
「ん? ああ、いや、まだだが――」
「でしたら、これを――」
私は自分の弁当箱を差し出した。中身は冷凍食品のオンパレードとても愛情のある物ではないかもしれないが、気持ちは繋がるはずだ。共に弁当を食せば前前前世の婚姻の約束も思い出すかもしれない。
「――否、それを受け取るにはまだ早い! 世界征服達成のあかつきには、共に食べても構わないが、今はまだその時ではない」
「――そ、そうですか……」
「そんなこと、言わずに食べてあげたら……」
ビーブリオテーカ先輩がフォローしてくれたが、
「今、デイネブリスパピヨンと共に食事をすると邪神教の戒律違反になる。前前前世の約束がなかったことになってしまうのだ。断じて、それは出来ない」
「おいっ! この胡散臭い奴はなんなんだ? っひ!」
私はデビルンをにらみつけた。例え何か詐欺まがいのことに首を突っ込んでいたとしてもそれはそれでいいの。愛はそんな壁なんて打ち破ってくれるのだから。
先輩は席に着くと、購買部で購入してきただろうパンにかじりついていた。
(ああ、愛なんて言っても、私の冷凍食品では……それを証明できないわ)
「主様、前々から思っていたのですが、この際ハッキリ言わせてもらいます。この方――」
「――何も言わないでくれるかしら。私とダークネス・カイザー様は切っても切れない赤い糸で繋がれているのよ。それも運命的にね(そうですよね、黒条サイコ先輩)」
私の目は曇っていない。済んだ瞳をしているとクリスチャンも言ってくれた。
「(この紅眼のオッドアイの前では、全て赤い糸を見通せるスキルが備わっているのよ。決して詐欺師やしれに類するものではないわ)」
小声でバステトに向っかて先輩のフォローをしておいた。




