12話 監視対象デビルンとの登校
朝食をとったあとは学園への登校である。私はバステトを肩に乗せ、大悪魔デビルンんを引き連れて歩く。
「(よろしいのですか? あんな得体のしれない者を連れて行って……)」
その辺を漂う大悪魔デビルンを見ながら、ヒソヒソと話しかけるバステトであった。
「いいんだ、それにこれは、実験でもある。本当に私以外の人間がデビルンを見ることが出来ないかの確認」
「だから、何度も言うように見えねっての、ホラッお財布ゲット……」
通りすがりの女性のポケットから財布を抜き取る大悪魔デビルン。それを見た私はすぐに行動した
「(よこせ!)あ、あの~~お財布落としましたよ……?」
「ふえっ! あ、ああ、ありがとねお嬢ちゃん」
「はいどうぞ……」
私は財布を持ち主へと返した。
「うん、じゃあね」
女性は歩いて去って行った。
「……(危なかった~~)おいっ、大悪魔そこへなおれ! 他人に干渉しないでちょうだい!」
「なんだよ。せっかく大悪魔デビルンが世界征服の為の資金源を集めようとしたのに、何が不服だったんだ」
「不服とかそういうことじゃない。今のは犯罪よ。いい? 窃盗罪なの、よく覚えて、それから二度としないで……」
「はいはい、わかりましたよっと……犯罪には加担しなければいいだな?」
フヨフヨとその辺を漂っているデビルンは 今度は自動販売機に向かった。丁度同学年の生徒が何を飲もうか考えているところだった。
「う~~ん、ファンタグレープか、コカ・コーラか、迷うな」
「えいっ!」
私はデビルンがブラックコーヒー缶のボタンを押す瞬間を捉えていたが、手も足も出ない一瞬の事だった。
――ガタガタン!
「ふぁ! まだ何も押してないのに、何でブラックコーヒーが出てくんのさ!? この自販機壊れてんの!?」
「(あ~~~~早速やってくれちゃってる、もういいわ)あの~~そのコーヒーいらないなら私にくださる……? もちろんお金は払うわ」
「え、マジ、よかった~~オレマジ苦手なんだよね。このコーヒー、いいよいいよ持って行って――」
「では、これでいいかしら」
「キミも見たこの自販機壊れてるっぽいよ」
「ええ、見てたわ。私はたまたまだと思うけど、今度は考えてからお金入れるといいわ」
私は男子生徒に助言をお金を渡して、ブラックコーヒーを受け取った。
「さて、今度こそ何にっスかな……」
今度の男子生徒は考えてから小銭を入れようとしていた。
「(デビルンあなたね~~)」
「わかったわかった、もう何もしないよ」
今度は私の日傘の上に、大人しく座り込んだ。15センチ大の塊の重さを実感する。
「(だから言ったでしょう。この悪魔は家に置いておいても、どんなイタズラするかわかったものではないわ。もしかしたらガスの元栓にイタズラして大爆発なんてのも起きかねない。だからこうして監視もしているの……? ディドゥユアーアンダスタンド?)」
「(わかりました。主様の言う通り、家に置いといては何しでかすかわかったものではありませんね。先日の風呂場の扉といい、冷蔵庫のお菓子の件といい、少々迷惑行為が過ぎますもんね)」
「き~こ~え~て~い~る~ぞ~♪」
大悪魔はまるでドレミファソラシドの要領で音程を変えながら言った。
「お~れ~さ~ま~を~み~る~に~は~ま~りょ~く~が~ひ~つ~よ~お~♪」
「……と言うことは私には少なからず魔力が宿っているということになるかしら」
「当たり前だろ、そうでなきゃ猫と会話も、降霊術もマスター出来ないさ」
(…………そうね、今はデビルンとの契約で、悪魔との取引で、魔力の宿った真のオカルト少女だものね)
私は15歳の高校一年生であり、長い艶やかな黒髪に、カラーコンタクトを身に付けたレッドのオッドアイ、ゴスロリファッションで、多少の化粧もしているが、校則には引っ掛からない。と言うか制服で来いという校則はない九割以上は私服で学校へと通っているの。そして私立御剣星座標学園はすぐそこまで迫っていた。
「おはよう!」
「……おはようございます。万代先生」
校門で見るからに生活指導をやっていそうな先生に挨拶をした。多分上級生の先生なのだろうと勝手に解釈した。
こうして私たちは御剣星座標学園に登校するのであった。




