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「寂しくはないのか?」

「寂しいとは何だ?」


 ウィリアムズの歌声を聴いた時にもの悲しげな音だと感じてた理由をウィリアムズの話を聞いて納得していたのに本人はきょとんとしてる。


「そいつにもう会えなくて胸がぎゅっとするとか!」


 何でこんなこと聞いてんだろ。


「? よく分からないが、あいつは絶対に会いに来ると言っていた。自分が死んでも何度生まれ変わっても絶対にここに来ると言っていた。だからウィリアムズはここであいつが来るのを待ってるんだ。それ以外の人間には興味ない」


 ちくりと胸が痛んだ。


「ああ、そうだ! お前、確かゲイルと言ったな! ゲイルお前人間のところに戻ったらあいつを探してくれ! ウィリアムズが探してると!」

「……それは」


 俺はウィリアムズの血と鱗が必要だったからここに居るウィリアムズにとっては追い出すような不届き者の1人にしかないはずなのに、こうやって話をしてくれたからか、あの美しい光景と歌声が頭から離れなかったせいかどうしてウィリアムズが言ってるあいつが俺じゃないんだろうか。


 少しぐらい俺と居たいとは思ってくれたっていいんじゃないかとか色々な言葉が頭の中をぐるぐると回る。


「……ウィリアムズはそいつを探しに行かないのか?」

「それは無理だ」


 苦し紛れにそう言えばあっさりとウィリアムズに否定されてホッとした。


「ウィリアムズはここを出れない。この湖を維持するためにウィリアムズの魔力が必要でな。ウィリアムズが居る限りこの湖は枯れることがない。もし、ウィリアムズがこの湖から長く離れたらウィリアムズと一緒にこの湖が枯れてしまう」

「それ、は、ウィリアムズも死ぬってことか?」

「ん? まあ、そうなるな」

「そういうことははやく言え!!」


 うっかりウィリアムズを連れ出そうとするところだったじゃねえか!!!!


「その、ウィリアムズが探しに行った方が早いんじゃないかって思ったんだけどそんな事情があるのなら仕方ないな」

「そうだな。それであいつの特徴なんだが」


 まだびっくりしてやがる。ウィリアムズがそいつの特徴を喋っているが、それにはそっと耳を塞いで聞かなかった。


 だって、そいつに会わなければウィリアムズのことを教えなくていい。


 その間ウィリアムズはちょっとでもいいから俺のことを覚えていてくれるかもしれないから。


「あのさ、俺時々ここに来るよ! そんでさ、どこそこ行ってウィリアムズが探してる奴の話以外にもこんなことがあったとか流行とか教えてやるよ」

「別にいらない」

「何でだよ」


 最後まで失礼な奴だな。


「しかし、どうしてもと言うのなら人間の食べ物を持ってこい」

「人間の食べ物?」


 えっ人魚って人が食うような物って食べるの?! と驚いてるとウィリアムズはこくりと頷いた。


「あいつが持って来てくれた」

「ああ、なるほど」


 ウィリアムズはあいつのことだけは饒舌になるタイプなのね。  


「頼んだぞ」

「分かってる。またな」


 ウィリアムズの返事は聞かずにその場を後にした。


 ウィリアムズの血で妹の病気を治したらとんぼ返りでここに来よう。


 妹にウィリアムズ話をしたらきっと驚くだろう。そして、ここてまウィリアムズと一緒に住みたいと言ってみよう。冒険の話とか好きだったし、いつか冒険したいって言ってたからきっとここを気に入ってくれるはずだ。 


 ウィリアムズだって文句は言うかもしれないけど、最終的には受け入れてくれるだろう。だから、その時までこの山の上で待っててくれよ。


「その時までまたな」




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