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親友の追求

 休日。

 インターホンが鳴り響いた音を、蒼は自室から聞いていた。ベットに横たわっていた身体を起こして階段を降りると、圭人と恵が言葉を交わしている姿が見えた。


「おーっす。蒼」


「おう。おはよう」


 今日はお互いバイトも部活も休みということで遊ぼうと話をしていた。


「圭人くん。お昼食べてく?今日はナポリタンにしようと思ってるんだけど」


「はい!是非いただきます!」


「じゃあ今日は多めに作らないとね」


 恵の提案に圭人は目を輝かせて二つ返事で首を縦に振る。恵は小さく笑うと長袖シャツを捲って気合いを入れた様子を見せた。


 普段は二人分しか作らないので食費には困らないが、料理を作るのが好きな恵にとっては少し物足りなさを感じていたのだろう。

 そこに大食漢の圭人が加わればそれなりの量が必要になるので、恵からしたら喜ばしいことなのだ。圭人も恵の料理は気に入っているので断る理由がなかった。


「おー。相変わらず整ってんな」


 階段を登って蒼の自室に足を踏み入れた圭人は辺りを見渡して感心するように言葉を漏らした。


「整ってるっていうか、物がないだけだろ」


 蒼の自室の広さは六畳。

 部屋には教科書が立てかけられた学習机。大きい方がいいと駄々を捏ねて買ってもらったセミダブルベッドにテレビに本棚。そして抱き心地のいいクッションと必要なもの以外は一切置かれていないなんとも面白味のない部屋である。

 利点があるとすればものが少ないので掃除をするのが結構楽ということだ。あと蒼が掃除があまり得意ではなく、ものを増やせば自室がとんでもないことになるのが目に見えているからである。


「よーし。んじゃ早くアレやろうぜ」


「へいへい分かりやした」


 ベットに腰を下ろして足をジタバタさせる圭人を蒼は適当な返事をしながらテレビの電源を点ける。色々準備を済ませると画面の表示が切り替わった。


 人気シリーズのRPGゲームでこのソフトはシリーズの第三弾。発売当初は即完売で蒼も購入するのにどれだけの月日を要したことか。

 購入したその日は翌日学校があるにも関わらず時間を忘れて熱中してしまい、ほぼ寝ずに学校に行ったのはいい思い出である。


 圭人にコントローラーを渡して蒼もベットに腰掛けると早速ゲームを始める。


「蒼はそっちの敵倒してー」


「へーい」


 カチカチ、カチカチとコントロールボタンやスティック特有の音が蒼の自室に響いて、次々と出てくる敵を倒していき奥へ進んでいく。


 蒼も圭人もゲームには慣れているので中ボスまでは苦戦することなく倒すことができた。

 最後にラスボスがいる部屋へと向かうため引き続きダンジョンへと向かう。


「蒼。昨日部活のやつから連絡もらって知ったんだけどさー」


「ん?」


「一ノ瀬さんと公園で一緒にいたって聞いたんだよ。同じベンチに座って飲み物飲んでたって」


 蒼のコントローラを操作する手が止まる。一瞬息を飲むが、すぐに指を動かして目の前の敵を倒していく。


「聞いてどうすんの?」


「いや別に。本当なのかなーって気になっただけ」


「……本当だよ。たまたま公園にいてちょっとした出来事が起きてそれの労いのつもりで飲み物奢っただけ」


 圭人にわざわざ兄妹喧嘩の仲直りを手伝っていたことを伝える必要はないと判断した蒼は出来事とまとめた。聞いていた圭人は、はーんと声を漏らしながら続けて言う。


「てか最近の蒼と一ノ瀬さんの遭遇率高くね?」


「言っておくがストーカー紛いなことは一切してないからな」


「分かってるよ。蒼にはそんなことする度胸なんてないことくらい」


「そもそもやったらいけないことなんだけどな」


「でも本当に事あるごとに出会してるっていうかさ。それこそ何かに導かれているような感じがしない?」


「たまたまだろたまたま」


 登校時に出会すのも校内ですれ違うのも昨日の公園でばったり会ったのも全てが偶然だ。ここまで来ると偶然と言えるかどうか怪しいレベルになるのだが。


 少なくとも蒼は陽葵に会おうと思って行動しているわけではない。また陽葵も蒼に会うつもりは毛頭ないだろう。


「もしかして運命の赤い糸で繋がってたりしてな。アハハッ……いでっ」


 あまりにも馬鹿なことを言い出して笑い声を上げる圭人に少しだけイラッとしたので、蒼は軽く圭人の足を蹴った。


「全く、そんなに一ノ瀬さんとの噂立てられるのが嫌かね」


「嫌だろ。お互いに」


「いいじゃんか。美人で成績優秀。まさに高嶺の花って感じ」


「確かに俺からしたら高嶺の花だな。背伸びしたって届かない位置にいる。俺なんかよりももっといい男がいるよ」


 蒼はフンと鼻を鳴らしてゲームに集中する。

 確かに最近は少し話すようになったし、彼女の中でも蒼という人物は認識され始めているだろう。

 だからといって友達と呼べるラインかと聞かれると分からない。少し言葉を交わす程度の同級生くらいに思っているのがちょうど良い。


 先ほどの圭人の会話のせいで集中力が切れたのか、ボスの部屋にたどり着いた蒼は苦戦を強いられながらもなんとかクリアをすることができた。

お読みいただきありがとうございます。

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