日米会談2
08:30 東京 赤坂付近
山階宮大将達は自前の官用車に乗り込み、アメリカ大使館へ向かっていた。
「閣下。 間もなく米大使館へ到着します」
運転手からの報告に、山階宮大将は静かにうなずいた。
「わかった。 髙原大佐、頼んだぞ」
「はい。 どうか任せてください」
髙原大佐の返事を聞いた山階宮大将は満足し再び窓の外を見た。
そして午前8時45分、山階宮大将達使節団はアメリカ大使館へ到着した。
大使館の正面玄関には駐日米大使と副使が出迎えてくれた。
「どうも初めまして、山階宮大将閣下。 私は在日アメリカ大使のジュールズ・J・ケイツビです。 こちらは副使のウィリアム・F・エドワーズです」
ケイツビ大使自己紹介に、山階宮大将は右手を差し出し自己紹介をした。
「こちらこそ宜しくお願い致します。
私が大日本帝國使節団の代表を務める山階宮大将です」
二人は握手を交わしたあと、大使館の中へと入っていっていき、ケイツビ大使は山階宮大将達を応接室へ案内した。
その後、山階宮大将達は応接室に入室し、席についた。
「本日はお忙しい中、突然の会談をした受け入れてくれて誠にありがとうございます」
「いえいえ。 こちらもぜひ一度、閣下達使節団と直接会って話してみたいと思っていましたのですよ」
ケイツビ大使の言葉に、山階宮大将は安心した表情を浮かべた。
「そう言っていただけると助かります。 では、さっそくですが本題に入っても宜しいでしょうか?」
「まぁまぁ、少々お待ち下さい。 実は貴方方にぜひ合わせたい人がいるのです」
「そうなのですか? 一体誰ですか?」
「はい。 アメリカ合衆国大統領のアルバータ・ジョニー大統領です」
ケイツビ大使が中央にあるテレビを着けると合衆国大統領のジョニー大統領が映し出された。
「大日本帝國使節団の皆様、初めまして。 私はアメリカ合衆国大統領のアルバータ・ジョニー大統領です」
ジョニー大統領が映ると山階宮大将達は姿勢を正した。
「初めまして、ジョニー大統領殿。 私は大日本帝國使節団の山階宮陸軍大将です。 お忙しい中、我々の急な会談の申込みに応えて頂きありがとうございます」
「いえいえ、私も今回の会談の申込みは非常に有り難い申込みでした。 太平洋の中心地点に新たな日本列島が出現したのです。 これに関して我が国も無関係では有りません。 こうして双方話し合いの機会が出来てよかったです」
「そうですか。 それはよかったです」
『おっと。 話を遮って申し訳ない。 本題に入りまして、今回の会談の申込みですが、一体どのようなご要件ですか?」
「実はですね、我が国がこの世界に転移した直後、国籍不明の無人機郡が我が国の領空に侵犯しまして。 髙原大佐、アレを」
「はい」
髙原大佐は持ち込んだカバンを開け、中からノートパソコンを取り出し、起動した。
「まずはこの映像を見てください」
髙原大佐はノートパソコンを操作し、動画ファイルを開いた。
そして動画が再生され、戦闘機が映ってた。
『管制官、こちら105飛行隊。 間もなく国籍不明機と接触する』
『了解。 101、103飛行隊も間もなく接触する。 105飛行隊はそのまま国籍不明機と接触し、国籍を判別、追尾せよ』
『105飛行隊了解』
そして画面中央に多数の小さな黒点が映り、段々と大きくなっていった。
そして大日本帝國軍の戦闘機とすれ違った。
『管制官! 国籍不明機は無人機である。 繰り返す、国籍不明機は無人機である。 現在、追跡中』
『了解した。 直ちに国籍識別を行え』
『了解!』
そして画面中央に再び多数の黒点が現れ、段々と大きくなり、機影を目視で視認出来る距離まで近づいていった。
『管制塔、こちら105飛行隊。 国籍不明機を確認。 外観から武装等は視認できない。 国籍マークは円形、左右に長方形がついており、中央に星を視認』
『米軍の円形に星ではないのか?』
『それに横棒がついてる。 なおマークは線のみで色はない』
『低認識型のグレーではないのか?』
『線のみだ。 HMDカメラの映像を送る』
『確認した。 ・・・・・・データーベースで国籍マークを調べたが該当国はない。 無意味だと思うが無線による警告を実施せよ』
『了解』
指示を受けたパイロットは国籍不明機に向けて警告を行った。
『国籍不明機へ告ぐ。 貴機は大日本帝国領空に接近している。 速やかに所属及び飛行目的を伝えるか反転し、退去せよ。 従わない場合は攻撃する。 繰り返す、貴機は大日本帝国領空に接近している』
しかし、国籍不明機の反応はなく、そのまま飛行を続けていた。
『管制官。 国籍不明機は以前反応なし。 本土へ向け飛行している』
『了解した。 続いて警告射撃を実施せよ』
『了解』
そしてパイロットは機銃のトリガーを引き、警告射撃を実施した。
発射された機銃弾は赤い曳光を描きながら国籍不明機の横を通り過ぎた。
『国籍不明機に変化は無し。 依然、本土へ向けて飛行中』
『了解。 防空司令部へ連絡する。 105飛行隊は国籍不明機の監視を続行せよ』
『了解』
そして、映像は一旦途切れ、新しい動画が再生された。
『105飛行隊応答せよ』
『こちら105飛行隊』
『防空司令部から国籍不明機が領空内へ侵入した場合即座に撃墜せよとのことだ。 間もなく領空へ侵入する。 最後の警告を行え』
『了解』
パイロットはすぐさま警告を行った。
『国籍不明機へ告ぐ。 間もなく大日本帝國領空へ突入する。直ちに国籍及び飛行目的を伝えるか反転し、退去せよ。 従わなければ攻撃する。 繰り返す。 間もなく大日本帝國領空へ突入する――』
パイロットの警告も虚しく遂に国籍不明機は領空へ侵犯した。
『105飛行隊へ。 国籍不明機は領空侵犯した。 直ちに撃墜せよ。 繰り返す、直ちに撃墜せよ』
『了解』
そしてパイロットは国籍不明機へ照準を合わせ、引き金を引いた。
そして画面端から白煙を出しながら無人機へ向かって飛翔する数発ミサイルが映った。
そして次々と国籍不明機に命中、爆発した。
『105飛行隊へ。 こちら101、103飛行隊。 只今着いた。状況を教えてくれ』
『現在、防空司令部より国籍不明機撃墜命令が発令された。 無人機だが数が多い、手を貸してくれ』
『了解した。 これより国籍不明機を落とす』
そして通信が切れ、動画は終了した。
「これが我々がアメリカ大使館へ会談を申込んだ理由です」
「「「・・・・・・」」」
動画が終わってから、ケイツビ大使達は沈黙した。
何故なら動画に映っていた無人機は米空軍のRQ-4 グローバルホークだったからだ。
「このとき我々は無人機の所属が分かりませんでした。 そして日本国と接触し、情報を集めました。 そして無人機はアメリカ軍であると判明しました」
山階宮大将は一呼吸置き、ジョニー大統領を見つめた。
「ジョニー大統領に尋ねます。 この動画に写ってる無人機はアメリカ軍の無人機で間違いないですか?」
「・・・その通りです」
「今回の事態につきまして、帝國は非非常に重く見てます。 アメリカ合衆国として今後どう対応していくのかお答え下さい」
山階宮大将はジョニー大統領の目を見て尋ねた。
ジョニー大統領は暫く目を瞑り考えた後、口を開いた。
「まず初めに、今回の領空侵犯で大日本帝國側に要らぬ脅威を与えてしまったことを謝罪します。 なお、合衆国政府としましては、今回の件に関して深く反省し、同様のことが無いように努めたいと思います」
ジョニー大統領は深々と頭を下げた。
「・・・わかりました。我が国としても、事を大きくして米国を陥れたい訳ではありませんら、 今後このようなことがないようにお願い致します」
山階宮大将はジョニー大統領の発言を聞いて内心ホッとした。
「(米国があっさりと非を認めてよかった)」
もし、ここで認めなかった場合、戦争になっていたかもしれなかったのだ。
米国が非を認めたので最悪の事態は回避できた。
「ありがとうございます。 あと一つ、貴国にお尋ねしたいことがあります」
「なんでしょうか?」
「今回の件、 互いが未知の相手であったが故、生起しました。 なので相互理解を深めるためにも貴国との友好的な関係を構築させるために、 貴国に我が国の使節団を派遣したいのですがよろしいでしょうか?」
ジョニー大統領は先ほどまでと違い、柔和な表情でそう言った。
「ええ。 勿論構いませんよ」
山階宮大将は笑顔で返した。
「ありがとうございます。 では使節団を組織し、貴国に向かわせたいと思います」
「わかりました。 もし日程がわかりましたら伝えてください。 歓迎しますよ」
「はい。よろしくお願いいたします」
こうして日米首脳会談は終わり、山階宮大将達は合衆国大使館を後にした。