畏怖
タナカは驚いた。ここに神機が来たことにではなく、自分が動くことができないのに_
四つの牙がタナカを覗いている。肩には何やら尖った装甲を纏っており、さらにはそこから覗いているのはドクドクと脈を打っているかの如く動く腕だった。そして赤色の目はタナカを燃やすかのような色_そう、
まるで生き物…
(こ、この私が、動けない…だとぅ!?くっ、しかしこれはチャンスだ。2体の神機使いを葬ればゴッドスレイヤーは確実に渡される…。ゴッドスレイヤーの称号を得るのはこの私、タナカなのだよ)
「総員、聞こえるか?これより対神機討伐作戦に出る。君たちは私の援護をしたまえ。」
無線機で静かにそう知らせるタナカだがこれに対しての反応はよくなかった_
「い、いや対神機戦においては複数の人機で囲むのがセオリーでは!?この人数だけではただの犬死にですぞ!?」
ペンタブが意味わからん、というふうに叫ぶ。この声が神機の操縦者に丸聞こえなのだが彼らはそんなことどうでもよかった。
(は…?い、いやたしかに我々の叡智なる結晶である人機ならば奴に勝てる…しかしそれはあくまでも複数体で囲んだ時だぞ!?タ、タナカ中尉はいったい何を学んできたんだ…)
人機ならば神機に勝てる、と思っているベルクではあるものの、自身の軍に属している神機の戦いを見てこれは複数体で囲まないと無理だな、と思っていた。
ペンタブに関しては対アマゾン戦などの戦いに従軍していたためベルクよりも神機のことを知っていた。
しかしタナカは一切動じない。
「黙れ。異論は認めない。安心しろ、私が確実に仕留める。」
(ふっ…この人類叡智の結晶である人機と人類最高戦力であるこのタナカにかかればこんな奴敵ではない!それにあちらさんなぜか固まっているし、さては私の力に気づいたかな?ふふふ…)
ついには自身を“人類最高戦力”などという始末。固まっていたのはタナカであるし、神機の方はただーなんで内輪揉めしてんだ?ーなどと思っていただけであった。
(これ、何言ってもだめだ…)
隊員全員がそう思った。
「それでは行動開始_!」
●●●●●
4人の隊員が一斉に銃を撃つ。その隙にタナカが敵の懐に潜り込んだ_。
「私の力をとくと思い知るがいい!くらえ伝説魔斬っ!」
もっといい名前ないのかよ_と誰もが思ったしその技もただ右手に装着されている剣を振っただけである。
「んな!?右手が破壊されただと!?」
ただ剣を振り回しただけなのでそれはもちろん防御されるが奇妙なことにがその次の瞬間に起きた_
お互いが触れ合った瞬間、タナカの人機の右手が破壊された。
(ふ、触れただけで…そんな…ばかな!?)
敵はそれを当たり前のように焦っているタナカをゆっくり見る。
「ふ、ふざけるな!ならば私の最終奥義、究_」
「怒りの裁き」
神機が両手をクロスを組むように振っただけで前方に在るもの_つまりただタナカたちを吹き飛ばした。いや、粉砕した。
「あ…あ…」
ベルクは驚愕する。一番前にいたタナカは人機もろとも破壊されており原型をとどめていない。他の隊員たちも崩れた破片やらに突き刺さったりしていた。
(こ、これが神機…)
無理だ…と床にドンッと崩れるベルクであったが
「おい!逃げるぞ!もうこれは無理だ!せめて軍に報告しなければ!」
絶望するベルクを起き上がらせて言ったのはペンタブであった。
「少尉!?生きていたのですか!?」
「まぁな!だけどこの通り右手が情けねぇことになってるわ」
そう言って笑いながら右手を見せるが表情と現状がずれていた。
「少尉、右手がほとんど_」
「うるせぇ!もっと早く走れ!」
そのあとはベルクも黙って走った。しかし神機はそんな事情も関係なしに距離を詰めてくる。
(ちくしょう…歩いて来てやがるくせになんでこんなに早いんだよ!?)
文句を言ってやりたかったがそれももう無理だった。
行き止まり。
「む、無理だ…ちくしょう…」
「まだ早いぞ?ん?」
そんな状況でもペンタブは笑う。
「いいか?あそこに少し隙間があるだろ?そこに身を隠せ。さっきのと同じのが来て生き残れるか分からんが俺が盾になってやるよ。あとは頼んだぜ?」
「だ、だめです!自分は何もできていませんっ!隠すならペンタブ少尉が_」
「黙れ!いいか?俺らの命は俺のためにあるんじゃない。国民のためあるんだ!それに俺の命で新しい命が守れるなら上等よ!頼むぜ!」
「ペンタブ少尉_!」
敵の攻撃が来る。それを見たペンタブはすぐに隙間の方にベルクを蹴った。そして笑顔で一言だけ_
「生きろ!」
「怒りの裁き」
「ペンタブ少尉ぁぁぁッ!」
意識を失う前に見たのは身体がバラバラになるペンタブ少尉であった。
●●●●●
「こっ…ここは…?」
やべぇこれはえっと?たしか俺軍人達に追われていたんだっけ。それでたしか_
「よぉ起きたか。」
「はえ!?あーはい。ん…?んーはっ!あなた誰ですか!?」
やばいやばい思考回路がバッキバキだった。
あん?と言った感じで俺見るその男。ツーブロックで神は黒色。男というよりは青年か?俺と同じどしな感じがするけど。
「3時間も寝てたぞお前。手間かけさせるな。」
「あ、はい。すいません。ところで誰ですか?」
さっきも言ったはずなんだけどなぁ、なんて思いながらもこんな人さっきいた覚えがないことにとても動揺していた。
「さっきの神機を操ってた奴だよ。悪いがもうお前はこの世界じゃ生きていけないぞ?覚えてるか?自分に何が起こったか。」
「国家…反逆罪…」
あぁそうだった。あれまじなのか…どうすればいいんだよ国家反逆罪とか。
「そうだ。まぁ今も言ったがお前はもう生きれない。だが俺についてくるなら生きることができるぞ。」
「ほ、本当ですか!?お、お願いします!」
「わかった。じゃあ早く支度してくれ。時間がないんだ。」
「はい!あ…あとここどこですか?窓から見る限りホテルか何か?」
「ん?そうだけど?ちなみにここはカルディ街な。」
「へ!?へーズルからもうそこに行ったんですか!?」
俺の住んでる街、へーズルからカルディ街に行くのに7時間はかかるんじゃ……?へ?3時間で?早くね?
「そうだよ…なんだその無駄な質問は…」
呆れ返るような顔。多分俺とあまり接したくないみたいだな。なんか任務でどうこう言ってたし_任務?
「あっあのあれっていったい_」
質問を投げかけようとしたが止まってしまった。だってこの人いきなり窓見て青ざめてるもん。
「あのぉどうかしました?」
「あいつらっ!民間人もお構いなしか!くそっ!こい!ゼル•タチバナ!」
「何言ってんだよ!?」
「ちっ!うるさい!」
うわ!?めっちゃ首掴まれたんだけど!?痛いし何やって_
その時ドゴン!という爆発音が響き部屋にヒビが入った。
「おいおい嘘だろ嘘だろ!?あんな目にあったのにまたくるのかよ!?」
ヒビはやがて俺のところにまで来て崩壊した。
あ、やばい結構高いぞここ。こんなところから落ちたら100%死ぬやん。あぁ…ばあちゃんじいちゃんごめんなぁ俺今日死ぬわ…
「勝手に死んだと思ってんじゃねぇよ。いいか投げ飛ばすが慌てるなよ落ち着け。俺が助ける」
見事おれの心を読んだこの青年が俺に対してそう言った。
「ほんまかよ!?じゃあどのみちこのままだと死ぬし頼むわ!」
いいさ、あの時俺は死んだと思った。一か八かで賭けてやるよ!
青年はふっ、と息をつくと俺を上へ投げ飛ばし覚悟決めたようにこう言う。
「来い!亥亜‼︎」
空間が歪む。そして突如としてそれは顕現した。
「こいつ、さっきの_」
あの時俺を助けたあの神機だった。
でもやはり教科書では兵器と言ってたがやっぱり近くで見てもどう考えても生物だった。いやなんかロボット感はあるけど雰囲気は生き物だしうん…まずどうやってここに来たの!?なんか空間からいきなり出てこなかった!?
それは俺を投げ飛ばした青年を飲み込む_え?死なないよね?
そんな俺の心配はすぐ打ち消される。なんとまあ飲み込んだあと動き出した。
それは俺を掴むと体を丸め一気に飛んだ。
な…なんだぁ!?と、飛んだ!?いや飛ばされてるの!?ん!?とりあえずへるぅぅぅぅぅぷ!!
そして俺はまた気絶した。
モチベのために評価お願いします