洋菓子店 Pumpkin lake 第四話
ここは、町外れにある洋菓子店「Pumpkin lake」
もう随分前からそこにあるお店は、朝から晩までぼんやりとした暖かい灯りが窓から漏れています。
風の噂によると、店主はまだ若い青年で、来店できるのは一日に一組と言うのです。栗毛色した扉にある貼り紙には
「来店時間はお客様の都合の良い時間に。お代は戴きませんが、その代わりに貴方の大切な思いを聞かせてください。」と書いてあります。
その言葉を疑って来店をしない人達もいますが、今夜もまた一人、お店の扉を開きました。
いらっしゃいませ。
こんばんは、フルーツをたくさん使ったケーキはある?
かしこまりました、こちらはいかがでしょうか。
本日のお客様は、褐色の肌に赤色の濃い茶髪の青年です。後ろへと無造作に撫で付けられた前髪のお陰でお顔の造形がよく分かるのですが、とても綺麗な顔立ちでした。この辺りでは珍しい金色の瞳は、物珍しそうにショーケース内のケーキに釘付けになっています。
店主は彼の要望通りに、色鮮やかな果物をたくさん使った大きなタルトケーキをお薦めしました。苺、マスカット、ブルーベリー、桃、林檎、キウイ、それからそれから…本当にたくさんの種類の果物が乗っていて、それを覆うようにキラキラと光るナパージュも魅力的です。
青年はその仕上がりを見ると店主へと視線を向けて言います。
僕、お金は持ってないんだけど…、あの張り紙は本当ですか?
ええ。…貴方は、どうしてこれを買いに?
……、笑わないで聞いてほしいんだけど。
この果物たちは、僕自身が育てた物なんだ。
ほう、それはそれは…ありがとうございます。
違うよ、生産者ではなくて、その…いつも空の上から僕は君達を見ていてね。この店に入る者は皆、切り詰めたようなでも期待に満ちた顔をしている。出ていく時は、とても嬉しそうで自信に満ち溢れていて…それで気になってさ。
僕はまだ、自分の光を一新に浴びて実った果物を食べたことがなくて、寧ろ手に取ることになれば燃えてしまう事も知っているからこうしてやって来たんだけど。
店主はもう一度彼の姿を見てみました。
店内の光では到底再現できない程の濃い影が、彼から長く延びています。
どうやら彼は、大地を照らすあの太陽のお忍びの姿なのでした。
珍しいお客様もあるものだと目を白黒させていましたが、彼の金色の瞳が真っ赤に変わったのに気づいて慌ててケーキを詰めました。
かしこまりました。きっと、貴方のお口に合うと思いますよ。なぜなら、私達やこの果物達も貴方の光なしでは生きていけないのですから。
……照れちゃうから、そう言うのはいいよ。ねえ、美味しかったらまた来ても良いかな。今度はもっとたくさんの果物を使ってね。無花果なんかも食べてみたいな。ああでも、珈琲も飲んでみたいな。皆、頑張って木のお世話をしているのを見ると、どうにも気になって。
それでしたら、今度は珈琲も淹れましょう。沢山の種類がありますから、きっと迷われるかと思いますが。
店主は楽しそうに言葉を弾ませながら暫しの間、彼とお話をしていました。そして一頻りお話を終えると、夜も深まる中彼は満足気な笑顔で帰っていきました。




