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第3話 力の解放

 ダーカスが一旦攻撃を中止し、俺から間合いを取ってくる。


 俺は腹に受けたダメージに耐え切れず一度、地面に膝をつくが、なんとか持ち直し、再び体を持ち上げた。


「ほう、また立ち上がるか。しかもその目……」


 俺はぐっとダーカスの方に向ける。


「まだ戦意は失われていないようだな?」


 力のことはなんとなく分かってきた。ゴブリンと戦った時に感じた、手や足にこもった熱。あれこそが解放への鍵。


 現に、今尚目の前のダーカスからは途方もない熱量を肌で感じられている。きっとあの熱を全身から引き出せれば……。


「ぐっ」

 ゴブリンと戦った時の感覚を……もう一度……。


「だっ!!」


 一気に踏み込み、俺は拳をダーカスに向けた。ダーカスは直ぐに反応し、俺の攻撃に対して防御を図る。

 だが、熱がしっかりこもった俺の拳の勢いはそのガードだけでは押し切れず、数メートル、やつの体を後退させるに至った。


「おぉ……いいねぇ……それだよ」


 笑みを浮かべ始めるダーカスに対して、今度は熱がこもった蹴りを見せる。


 今度は完全にガードされダーカスを動かすこともできなかった。だが、俺自身、今までとは明らかに違う攻撃を放てていることがわかる。


「それだそれだ! もっとこい! ゴブリンを倒したのがまぐれでない証拠をしっかり叩き込んでこい!」


「だぁああ!!」

 

 何度も何度も攻撃をダーカスに叩き込む。ダーカスはその間、一度たりとも攻撃態勢に移ることなく俺の攻撃を受け続けている。

 決してやつのガードが崩れることはない。やつにダメージが入ることはない。


 だが、俺の体中にどんどん熱が溜まっていくのをしっかり感じ取れていた。


「いいぞ。力が膨らみ始めてきている。もっとだ、もっと! もっと熱くなれ!」


「うぁああああ!!」


 拳を思いっきり叩き込む。それに伴い、ガードの上からではあるがダーカスの体が再び、数メートル先に後退。


 そして……俺の体に眠る……力が……目覚める。


「うぉぉぉ……ハァ!!」


 今度こそ気合を入れて叫ぶ。それと同時に、奥底から何かが爆発するのを感じた。それに伴い、体にこもっていた熱が一気に外の世界に放出。それを皮切りに流れるように力が体中を駆け巡っていく。


「ぎっ、だぁああ!」


 熱さをそのままに、俺は再び拳をダーカスに向けて叩き込んだ。


 当然、ダーカスは防御をする。だが、今回、俺が放った拳はダーカスのガードを押しつぶし、ダーカスの左頬にまで到達した。


 計り知れない衝撃波が闘技場に広がり、地面の土を揺らす。ダーカスは俺の攻撃を受け、二十メートル先まで吹き飛んだあと停止した。


「こ……こいつ……」

 ダーカスが自身の左頬に手を当てつつ驚愕している。ダーカスの体には俺の攻撃から生まれた衝撃が今尚、煙という形で残っている。


「とんでもねえ……」


 ダーカスのその声を聞くより先、俺は飛び出していた。そして二十メートル先にいるダーカスの後ろへ瞬時に回り込む。


「むっ!?」

 ダーカスが放ってくる後ろ蹴りを避けつつ、右ストレート。ダーカスは攻撃をくらい、宙を舞いながらも態勢を立て直し、地面を蹴る。かと思えば、とてつもない高速で距離をとってきた。


 だが、今の俺にはそれもはっきりと見えた。そして、同じように地面を蹴り、ダーカスに迫る。そのまま蹴りの一撃を放つ。


 ダーカスは俺の蹴りを流しつつ肘を落としてくる。それを同じく肘でガード。続いてくるダーカスの攻撃を察知した俺は、今度は逆に俺が高速で距離をとった。


 瞬間的なスピードで数メートル離れる。だが、そこに素早く叩き込まれてくるダーカスの蹴り技。俺は一気にしゃがみこみ、その技の通過を待つ。


 攻撃を空振りに終えたダーカスが一瞬にして方向を転換。俺の上を通過した直後だというのに、再びこっちに向かって拳を振り上げてきている。

 だが、それはこちらも対応できていた。同じように大量の熱を溜め込んだ拳を握り締める。


「うぉぉおお!!」

「はぁああ!!」


 お互いの拳が向き合い、インパクト。ただの拳と拳のぶつかり合いだとは思えないほどの衝撃と音が闘技場にこだまする。


 インパクトで生み出された衝撃は一部音速に近い波となり、一瞬遅れて空気を震わせる。それは闘技場にあるありとあらゆる物、人を震わせた。


 忘れた頃に舞い散る土煙。それに伴い、会場がヒートアップ。大歓声が巻き起こり、耳にこれでもかと響いてくる。


「こいつ……試合を交えて、とんでもないスピードで成長してやがるな……」

「かも……しれないですね。なにしろ、俺、チート能力を授かっているらしいんで」


 お互い、タイミングを見計らい、拳を弾き合う。


 そのまま間合いを取った。

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