されど生きて
「……あれ?……真っ暗だ……」
……
「……ここ、どこなんだ?」
……
「……おい!誰か答えろよ!」
……
「……あっ!巽!まさか、またお前サプライズとかドッキリとかやってんだろ?」
……
「……おい?」
……
「……巽?」
……
「……巽じゃなかったら、凌か!?」
……
「ふざけてんじゃねーぞ!?」
……
「……おい!凌!?」
……
「……誰か居るんだろ!?笑えねーぞ!?」
……
「……あ、あれ?嘘だろ、おい」
……
「……栞?……梓?」
……
「……だ、誰も、……居ない……のか?」
「……お待たせしました」
「おおっ!?何だよ!やっぱ居るじゃ……!」
「驚かせてすみせん」
「……は?この声……誰だ?」
「私は、人々から北神と呼ばれています」
「……え?……ホクシン?」
「そうです」
「……誰だよそれ!なにふざけてんだよ!女の声だから栞か!?巽のイタズラだろ!とりあえず電気点けろよ!」
「失礼しました。貴方には暗闇しか見えてなかったのですね」
「……ッ!?」
「……明るくなりましたか?」
「……あ!?……え、ええ」
「それは良かった。では……」
「い、いやいや!ちょっと!アンタ、本当に誰なんだ……ですか!?」
「……ですから、先程もお答えした通り、私は北神です。少なくとも、人々にはそう呼ばれています。私達には名前など何の意味もありませんが」
「はあ!?巽や凌は!?栞と梓も、皆は何処に行ったんだよ!?」
「……さあ?私がここへお連れしたのは貴方だけです。他の方は存じておりません」
「……え?だって、俺達さっきまで俺の車で……」
「貴方の親の車ですね」
「細けーな。そうだよ。親の車だ。俺が運転していた」
「そして、貴方の脇見運転で交通事故に遇った」
「……そう……えッ!?じゃあ、俺達は……!?」
「ええ。既にお亡くなりになってます」
「……はあぁぁ!!?」
「ですから、貴方達は皆、貴方の脇見運転によって命を落とされました」
「……な、何言ってんだ?」
「事実です」
「……そ、そんな……」
「残念ながら……でも、お相手のトラックの運転手は無事ですので、安心してください」
「う、嘘だ!そんなの嘘に決まってる!!」
「……いいえ。事実です。だから、貴方はここに居るのですから」
「……じゃ、じゃあ何か!?俺は今、死んで幽霊にでもなってここに来て、地獄の裁判か何かにでもかけられるのかよ!?」
「察しが良い様ですね」
「……は、はは、は……笑えねぇ冗談だな、おい」
「但し、地獄の裁判ではありません」
「……マジか。……俺が、皆を……?」
「転生裁判です」
「……う、嘘だ。……ああ、これは何かの間違いだ。アイツらが死んじまったなんて……」
「……聞いてますか?他の方の死を嘆く前に、貴方も死んでいるのですよ?」
「俺の事はどうでも良い!俺のミスで俺が死のうがどうでも良いんだ!」
「ミスも何も、運命で定められたものなのですから、どうあがこうと結果は変わりませんよ」
「俺が、……アイツらを、……俺が、……俺が……」
「貴方が余所見をしていなくても、その場合は対向車が中央線をはみ出して事故死する事は変わりませんでした」
「うるせぇ!相手から突っ込まれたなら、不幸な事故でまだ諦めもつくが、俺のミスなら俺のせいでアイツらを死なせたって事じゃねーか!アイツらが死んじまった時点で俺には超絶な悲しみがあるってのに、それをやったのが俺自身だぞ!?解るか!この俺は、テメーの命より大事な親友達を自分の手で殺したんだ!!」
「命を落とす事に、何ら変わりはありません」
「……あのなぁ、ホクシンだか何だか知らねーけど、人の心を何だと思って……ッ!!?」
「黙りなさい」
「……な、何だよ、その手の光は……?」
「人の心や命を落とす過程など、今、この場においては全くもって意味を成しません。何故なら貴方も既に亡くなっているのですから」
「……お、おい!でかくなってる!その光は何だって聞いて……!?」
「これは転生魔法です。貴方が無駄な話をして、私の話を聞かないので、説明するのも諦めました」
「……は!?転生って!?……ちゃんと説明しろよ!!」
「しません。貴方にはこれから、別の世界で生きて頂きますので、ご自分の力で生きてください」
「別の世界!?そんなの聞いてねーよ!!」
「ですから、今、言いました」
「ふざけんな!もっとちゃんと……!!」
「貴方が勝手にベラベラ無駄口を叩くので、説明の時間も無くなったのです。全ては貴方の選択の結果。貴方はこれから、その選択によって拓かれる人生を再び歩む事になります。それでは」
「……なっ!?……ちょっ、うわっ!眩し……っ!!」
「幸福をお祈り致します……」
「ちょっ、待てよ!!くそっ!今度は真っ白で何も見えねぇ!!……おい!ホクシン!?」
「……」
「……おい!!」
「……」
「……お……!」
「……」
「くそ、意識が……!」
「……」
「……梓……」
「……」
「……凌……巽……」
「……」
「……しお……り……」
「……」
「……………」
「……」
「……――――――」
「―――……う、う~ん……」
「ソウ!起きたか!?」
「……ッ!?……ヘックシュン!!」
「うわっ!バカ!大きい声出すな!」
「誰だ!!そこに居るのは!?」
「なんだ?」
「侵入者か?」
「どうやらそうらしい」
「やべっ!!逃げるぞ!?」
「は!?……ってか、お前誰だよ!?」
「は!?こんな時に何を言い出すんだ!?」
「だいたい俺はソウじゃない!ハヤテだ!」
「マジでお前、何言ってんの!?くだらない冗談言ってないで、とりあえず捕まる前に逃げな……っ!?」
「見つけたぞ!!おい!!侵入者だ!!」
「賊を捕らえろ!!」
「くっそーっ!だいたいソウがでけぇ声でくしゃみなんかするから……!!」
「いや、だから、俺はソウじゃねぇって!!てか、侵入者って何だよ!?ここはどこなんだ!?」
「ほう!この期に及んでしらばっくれても逃れられんぞ!?」
「クックック!二人だけか?まだ他にも仲間が居るのか!?」
「……くっ!!」
「コイツら何なんだ!お前も誰なんだ!?……くそッ!訳わかんねぇよ!!いきなり捕まるって、何だよこれ!!」
「うるさい!黙れ!」
「大人しくしろ!」
「ふざけんな!何なんだ!?お前ら一体、何なんだよ!!」
「チッ……」
「とりあえず縛るぞ。お前はそっちな」
「ああ。おい!悪足掻きすんじゃねぇ!」
「とりあえず、牢屋にぶち込んでおくか」
「そうだな。もう夜も遅い。コウエン様には明日の朝、報告しよう」
「明らかに関係者じゃないみたいだしな」
「よしっ!こっちは縛れた」
「こっちもだ」
「じゃあ、連れて行け!」
「ほら!お前ら自分の足で歩け!」
「くそ、キツ過ぎて息できねぇ!」
「うるさい!侵入者の分際で!即殺されなかっただけでもありがたいと思え!」
「ったく!こんな夜中に迷惑かけやがって!」
「うるせぇ!放せ!放せよ!!」
「うるさいのはお前だ!連れは大人しくしてるじゃないか!お前も見習え!」
「おい!お前も何黙ってるんだよ!何か言えよ!」
「……」
「おい!聞いてんのか!?」
「……」
「おいって!!」
「……」
「おい!」
「……」
「おい――――――!!」
「――――」